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海の科学者になるには古典的な学問を学びその分野から海の研究にアプローチしていくと本で読みました。高知コア研究所の方はどのようにして研究者になられたのですか

りょうさん(高校2年生)からの質問

質問ありがとうございます。
今回の回答者は、高知コア研究所 若木研究員です。

私の専門は、地球科学のなかにある地球化学という分野で、これは化学分析を道具として使って、地球に関するもろもろを研究しようという小さな学問分野です。私がなぜ地球化学を専攻し、海の研究所に奉職することになったかと振り返ると、「曲がり角」がいくつもあり、まっすぐな道ではなかったことに気付かされます。

私は高校では天文部に所属しており、大学でも宇宙に関連する学問を学びたいと考えていました。今思うと、工学や農学など人の役に立つ系の学問には初めから興味がなかったんですね。調べてみると宇宙の研究といえば天文学がその総本山で、これは理学部の物理学科の縄張りになります。ところが、私は大の物理嫌いで、とてもとても物理学科の入試を通るような力はありませんでしたし、そもそも高校の物理も満足にできない奴が大学で物理を学ぼうなんてどうかしています。しかたがないので、他にないかなと調べていたところ宇宙化学という分野があるらしい、と知りました。私は化学は好きでしたので、これなら自分でも取り組めそうだと思ったわけです。それで、大学受験では宇宙化学に関連した研究室のありそうな、A大学の化学科とB大学の地球惑星科学科を受験しました。後者にのみ合格しました。当時はわかりませんでしたがこれが実は運命の分かれ道で、前者の研究室は化学の中の分析化学、後者の研究室は地球科学の中の地球化学、という学問分野の違いがあり、受験の結果でのちの専門分野が確定したということになります。
大学院では地球化学の研究室に所属し待望の宇宙化学の研究を始めたものの、すぐに「誰でもできることは誰かがすでにやっている」ということに気付かされます。地球化学では、さまざまな試料の化学分析が主な研究手段ですから、誰もやっていないことをやるためには、簡単にはできない/レベルの高い/新しい化学分析をするしかありません。それで大学院の途中から、研究の主題を分析化学に変更して博士号を取得しました。

学位取得後は、博士研究員として宇宙化学研究に従事しつつ分析化学の腕を磨き、縁あって高知コア研究所に就職することになりました。このような経歴ですので、海の研究は高知コア研究所に来てから始めました。
私は小さい頃から乗り物酔いが激しく船が大嫌いでしたので、まさか自分が職業で海に関わることになるとは思いもしませんでしたが、今では実験室を主戦場にして分析化学を武器として、海の研究に取り組んでいます。

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