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VIVA歩くスキー

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ミニ情報誌「VIVA歩くスキー」のレポートを中心とした記事の再録集です。
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記事一覧

雨の護摩堂山

雨の護摩堂山

 「取立に良いコースがあるので今度の日曜に行きませんか」と浜出さん(*1)から電話があった。急だったが、特に予定はなかったので、二つ返事で決めた。山なのでどの板にしようか迷ったが、浜出さんもXC用で行くというので、私も原則を貫くことにした。オフピステでは、草木を傷めやすいので、なるべくスチールエッジのない板を使おうと決めているのだ。急斜面は脱げば良い。豪快なダウンヒルを楽しむことはできないが、良い

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然別の冬を楽しむ

然別の冬を楽しむ

 新得駅前から乗ったバスはガラガラだった。中年の女性グループ3人、カップル1組、高校生くらいの女の子とおばあさん、そして私だけ。この季節、スキー場もない然別へ行くのはこんなものか。女の子は新得郊外の住宅団地で降り、おばあさんは途中の雪原としか思えないところで降りて歩き出した。このあたりは牧場が点在しているので、その一つにでも行くのだろう。鹿追の街で男の人が乗り、運転手に軽く冗談を言って、私と通路を

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妙高高原いもり池周辺を歩く

妙高高原いもり池周辺を歩く

 毎年、正月は実家のある東京で迎える。暮れの煤払いから初詣まで年中行事を済ませて、3日には福井へ戻る。4日に、これも恒例の福井県内の建築関係者の年賀式に出席するためだ。その後、7日の職員の新年会までの2日間がやっと本当の“休み”になる。今年は息子が大学(歯学部)を卒業して就職する。だから、文字通りの冬休みはこれが最後かもしれないというので、親子3人でスキーにでも行こうかという話になった。そこで、妙

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ピーカンの新穂高

ピーカンの新穂高

  晴れはしたが風が強い。「風が収まるまでだめですね」と宮本さん(*1)。だからゆっくり行こうという。「運転は私がやりますから、ビールでも飲んでください」といううれしいおコトバに、ついその気になって缶ビールを開けてしまう。私は自分で運転することが多いので、こんなことは滅多にない。まるで慰安旅行だ。宮本さんのタウンエースに伊藤さん(*2)と私と妻の4人。いつものメンバーが皆んな都合が悪く、これだけし

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歩くスキーのメッカ・滝野すずらん公園

歩くスキーのメッカ・滝野すずらん公園

 スキーをやっている人間にとって、いろんな意味で、北海道は憧れの地だ。私もその仲間で、今まで何度か行っているが、何度行っても良いものだ。だから、冬になると何とかして行こうと、そればかり考えている。今年も運よく仕事で出張する機会を得たので、帰宅を1日延ばすことを企んでいたら、それを嗅ぎつけた妻が一緒に行くと言い出した。それで、背広姿で2人分のスキーを持って小松空港を飛び立った。
 無事仕事(研究関係

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カンダハの頃

カンダハの頃

 昨冬は、北陸は平年並みの雪だったのに、北海道はまれにみる大雪だった。仕事の関係で早速調査に赴いたのだが、帰りの飛行機の便が悪く、午前中少し時間が余ってしまった。そこで、中島公園にある「冬のスポーツ博物館*」へ行ってみた。こじんまりした2階建ての建物の中に、スキーを中心としたウインタースポーツの数々の資料が展示されていた。その中で特に私の目を引いたのは、昔のスキーの締具だった。「カンダハ」と呼ばれ

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初歩き・奥越高原牧場

初歩き・奥越高原牧場

 待望の雪が降った。スキージャム勝山や福井和泉スキー場はもう滑走可能ということだが、六呂師はまだオープン前で全く情報がない。しかし、アルペンはだめでもクロスカントリーは大丈夫だろう。そう思うと、忘年会の最中も気が気でなかった。アウトドア仲間で越前海岸の民宿に1泊してカニを食べるという毎年恒例の行事だが、今年は落ち着かない。朝の食事も早々に、これも恒例になっているバードウォッチングの誘いも断って帰宅

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羊蹄山を望んで、強風の中、旭が丘を歩く

羊蹄山を望んで、強風の中、旭が丘を歩く

 スキーのメッカ“ニセコ”は、そのスケールの大きさ、コースのバリエーション、雪質と、どれをとっても申しぶんないが、正面に羊蹄山を見て滑る爽快さが特に素晴らしい。ニセコアンヌプリ山の南東斜面に広がるひらふ・東山・アンヌプリの各ゲレンデは上部でつながっており、天候が良いときには互いに行き来できる。何日いても飽きることがない。
 今シーズン限りでアルペンスキーはやめようかと思っている。愛用している“OL

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犬を連れてXCスキー

犬を連れてXCスキー

 カップ麺のCMにカヌーに犬を乗せているのがあったが、それを真似てみた。私の愛犬はタマという名の雌の柴犬(*1)で、何しろおとなしい。飼い主でさえ吠え声を聞いたことがほとんどない。そのうえ弱虫で、少し大きな声を出そうものなら、怯えて震えだす始末だ。だからきっと怖くて嫌がるだろうと思いながらも乗せてみたのだが、喜んでとはいえないまでも、おとなしく乗っている。だたし、岸に着くと大急ぎで飛び降りてしまっ

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裏磐梯・五色沼を巡る

裏磐梯・五色沼を巡る

 凍ったサロマ湖をXCスキーで横断し、流氷を見るというツアーに一緒に参加した息子が「歩くスキーなんて面白くない」と言う。確かに、素晴らしい体験ではあったが、景色にあまり変化がないのでクロスカントリーの面白さには欠けていた。「本当はもっと面白いんだ」と言いうと、「それじゃあ、本当の面白さを見せてよ」と挑発する。そこで、私自身も一度行ってみたいと思っていた裏磐梯へ連れていくことにした。
 東京の実家で

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シーズン最後の白馬峰方

シーズン最後の白馬峰方

 JR大糸線をはさんで八方尾根と反対側、鬼無里へ行く道の途中に「白馬峰方」というスキー場がある。ゲレンデの上部に歩くスキーのコースがあるというので、春休みの最後の日に行こうと電話で問い合わせると、3月末日までオープンしていると言う。ぎりぎりセーフだ。ダウンヒルも少しはできるというハーフエッジの板を買ったので、ゲレンデでも楽しめそうだ。翌日も滑ることを考えて、五竜遠見のペンションに予約を入れ、車で出

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円山公園から奥越高原牧場へ

円山公園から奥越高原牧場へ

 六呂師高原スキー場(*)のすぐ近くに円山公園がある。夏場は遊歩道やサイクリングロードがあって、ブランコなどの遊具や小動物園が配置されている子供向けの公園だが、冬になれば歩くスキーの良いコースになるのではないかと目をつけていた。雪が降ったので、ちょっと様子を見に行くと、予想に違わずなかなか良さそうだ。次の土曜日の午後、妻を誘って行ってみた。
 車で越前大野から南六呂師への道を行き、奥越青少年の森、

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はじめての北海道歩くスキー

はじめての北海道歩くスキー

 北海道には人一倍思い入れがある。それは、片岡義男の中編小説「朝になったらタッチミー」を読んだときから始まった。自動車関係のアンソロジーの中にあったのを偶然見つけて読み、衝撃的な感動を覚えた。苫小牧港でフェリーから降りたハーレーに乗った女性ライダーの後を追って、襟裳岬を経て知床まで行く話だが、そのルートをたどってみたいと思ったのがきっかけだった。私は、二輪ではなく四輪だし、数回に分けて寄り道をしな

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歩くスキーの楽しみ

歩くスキーの楽しみ

 スキーを再開してから20年ほど経って、何だか年々スキーが下手になってきたような気がしてきた。以前は若い人たちと一緒になって急斜面を滑ったのが、最近は気後れするだけでなく体がついていかなくなってきた。数年続いていた少雪で滑る機会が減っていることもあるが、やはり年齢のせいかなとも思う。それでもスキーはしたいので、もともと怖がっている妻を「緩斜面で滑るから」と誘ってみるが、なかなかウンと言わない。やれ

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