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発信力を問う。(2019/2/28)

競技に関わり続けるにおいては、新しい発見を求め続けることを大切にしようと思っている。
指導者の思考停止はすなわち、チームの成長の妨げになることを心に留めて、選手達と向き合っていきたいと感じる今日この頃。


私の大学の後輩達は、自慢ではないが、本当に「いい人」達が集まっている。
あまり“勝負師”っぽくない、協調性の強いメンバーだ。


以前、中等部のコーチと大学のソフト部に行った時、一緒に行った彼は
「自分が練習中、ノックで捕りたい打球を発信した方がいい」
という言葉を、チームに残してくれた。

現在、大学の所属部員は12名いる。そして、この人数の少なさに加えて、経験値に大きく開きがある。中高時代を通じてソフトボールに打ち込んだ選手がいれば、大学から新たにソフトボールに打ち込み始めた選手も在籍している。

その中で、全員が一律のメニューに取り組んでいる。
そうなった時、各選手が同じメニューをどのような水準であるいは、どのような目的を持って臨むかが、上達度を左右することになるだろう。

練習をするに当たって「自分の『意志』」が求められるのだ。

与えられたメニューをこなすのは、とても単調な作業になる。
そこに「自分の『意志』」がなくとも、自然と練習時間は過ぎていくし、
ソフトボールという競技の特性上、反復練習が多いため、ある程度の上達も感じることはできるし、満足感も得ることができる。


私、個人としては、「コーチ」というより、彼女達の「先輩」としてチームを見ているからなのか、
もちろん、彼女達に勝ってほしいという想いはありつつも、大学生活をソフトボールに捧げてよかった、ソフトボール楽しかった、そんな想いが第一にあってほしいなと考えており、各人の“部活動”への取り組み方にフォーカスを当てていなかった。

そんな折に、後輩が自身の考えをぶつけ、私に考えるきっかけを、新しく与えてくれた。

「各選手の、感情が揺さぶられる“ツボ”が分からない。自分が気付いたことをどんどん発信していくことは、今もやっているし、それは簡単なことだけれど、その自分の発信を受けた、他の選手のリアクションが見られないから、このままでいいのか分からない。『チーム力』として、それでは弱いような気がする。」

という話だった。


この話を聞きながら、既に私の感情が揺さぶられていたことを、考えをぶつけてくれた彼女が気付いていたかは分からないが、率直に『すごい』と思った。

おそらく、上記に要約した 200倍くらいの熱量を、彼女は持っていたと思う。

そのくらいチームについて、チームメンバー1人1人について真剣に向き合い考える、その姿勢は、私も、指導者として大切にしていきたい。


コーチング論について勉強していると、「人」について思いを巡らす機会が多くなる。

選手ファーストを実践するにあたり、選手が最大限の能力を発揮できるよう、選手がどのように競技をしていきたいかを中心に据えることが必要になる。

個人の能力が高まるような課題を与え、
モチベーションが下がらないよう気を配り、
課題を達成したら、さらなる高みに上りたいと思ってもらえるような環境を作る。

いかに、このコーチングの難易度が高いのか、それが彼女の話に凝縮されていた。


コーチというのは、2つの役割を果たすとされている。

「指導行動」と「育成行動」である。
「指導行動」は、一般にイメージされるように、選手個人のパフォーマンスを上げるためのもの。
「育成行動」は、選手のモチベーションや練習の取り組み方、設定課題の質向上を目指し、技術ではなく、心理的あるいは社会的な面においての、個人の成長を促すこと。

今回キーになるのは、後者「育成行動」である。


私が導き出した、現状の問題に対する「育成行動」は次の通り。

①チームメンバーの感情の“ツボ”になりそうな要素を沢山『探そうとする』こと。
→「分からない」で思考を止めず、そこから、もう一歩。その“ツボ”であろう部分が、実際にはそうでなかったとしても、相手の感情の起伏を見てみようと試みたことは、きっと今後の関係性に活かせるはず。

②選手のリアクションを『引き出す』こと。
→彼女は、自分が気付いたことを発信するのは簡単だ、と言っていた。しかし、発信することは、とても労力のかかることだと、私は思っている。その労力のかかる行動を継続できることは、素晴らしい。そこからほんの少し、自分をラクにするために、そして、より相手の心に届くような発信にするために。
テーマは、「相手の世界に入り込む」こと。まずは、相手に、自身の考えを尋ねてみる。今の自分のプレーの意図であったり、意識していたことであったり。それを踏まえての、自分の意見発信にしてみてはどうだろうか。
これまでと何か変わりそうな未来が見えたら、ぜひ実践してみてほしい。

③小さな改善を積み重ねること。
→自分のアプローチ方法は、沢山あるに越したことはない。そのアプローチがまちがいだったとしても、いくらでも修正は効く。
「Trial and error」これに尽きる。


吉井理人さん(現千葉ロッテマリーンズ一軍投手コーチ)は、少年野球の指導に行った際に

「失敗が怖くてトライしないのが、野球選手として1番カッコ悪い」

という話を、よくするのだそう。

自分にとって最善の方法を見つける努力をして、見つかったらそれをやってみる勇気を持った選手になる。

これは、指導者として選手に投げかけ続けたい言葉でありながら、同時に自戒の意を込めて、私自身も心に留めておこうと思う。

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