叶わなかった想いは時に、満たされた希望よりも美しく重く心の底に残り続け、人を心地よい悲しみに沈ませる。涙は何故落ちるのか。喜びでも苦しみでもなく、乾いていく思い出に潤いと色を取り戻す為か。記憶に残るのはいつも胸を締め付ける失敗ばかりで、成功や勝利の記憶は得たその瞬間から風に解れていく。春の期待は微風に散り夏に錆び、秋の諦めは寂寞の中で冬は白雪に埋もれていく。ゆっくりと、しかし確実に時は短くなっていく。繰り返される日々に揺られる内、あれ程熱く打ち込んだ愛の形さえ忘れていく。眠る度に細胞が一つまた一つと溶けていき、かつて帰納された人が、埴輪のようなデフォルメ姿を満遍なく演繹する。せめて綺麗に崩れよう。