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文章分析AIアプリ「ホメロス」の生い立ち
今回は2022年の2月にリリースしたAIアプリ「ホメロス」の開発のきっかけや経緯を紹介します。ホメロスは文章の文体や表現を分析し、執筆をサポートするAIアプリです。リンクからApp Storeにてダウンロードすることができます。
言語モデルの発達
2021年はOpenAIなど様々な企業から高度な言語モデルがたくさん発表された年でした。もちろんその対応言語の中には日本語も含まれています。製品やサービスとして成立させたものも増えてきています。
文章の要約サービスはかなり有名になりました。また最近では「AIのべりすと」のように文章そのものを生成することのできるものも存在します。
このような発展は決して簡単なことではありません。画像や動画に対応した人工知能の方が一見すると作るのが難しいと考えてしまいますが、実は言語に処理を行うのはかなりの苦労があるのです。
それは元になるデータの収集とその処理です。特に前者は、画像と違って世界中からデータを集めることができません。例えば犬の写真はどの国で撮ったものでも問題ありませんが、犬についての文章でも言語がそれぞれ違うようでは正しく学習できません。英語と日本語、その他も含め区別は必須です。
以上のような問題を解決するとなると、どうしても資金のある大企業が予算をかけたものが一番ということになります。ただしこれはあくまでも常識的な話。一工夫で案外どうにかなるものです。ちょっとこれに刃向かってみよう、というのが動機の一つです。
フェイクニュース、誹謗中傷
きっかけとしてはもうひとつあります。実は、もともとはホメロスをフェイクニュースや誹謗中傷にあたる文章を検知できるような機械学習モデルにする予定でした。
フェイクニュース検知器というのは英語圏における機械学習モデルとしては一般ん的なものです。コミュニティサイトでも多くの人が技術を磨くために試作したり、性能を比べたりしています。
日本ではフェイクニュースの問題は海外ほど話題になっていません。その代わり誹謗中傷は大きな問題となっています。これに対しては過去にも一度対策のためのアプリを開発しています。
目に入るだけでも不快になったり、傷ついたりするものですからこれこそ機械に解決してほしい問題です。誹謗中傷の多くはことばによるものですから、言語モデルで対応できるはずだと考えました。
感情分析について
言語モデルのはたらきの代表的なものとして「感情分析」というものがあります。これは文章に対し喜怒哀楽といった感情を割り当てるものです。これを利用して、いわゆるネガティブな文章を排除するというプログラムも開発されていました。
誹謗中傷などもこれで十分ではないかという考えもあると思いますが、実際は不十分です。しっかりと検討された批判なら、多少の憤りが感じられても読む価値はあるはずです。楽しげに嘲笑するようなことも可能です。
ことばとは数字のように単純なものではありませんし、喜怒哀楽で良し悪しを判断できるものではありません。ただし既存の枠組みに対して不満をいうなら解決策も見出す必要があります。
文体への注目
私が注目したのは文体です。文体とは何か、という定義については少し難しいところがあり今回の主題でもないので深くは掘り下げません。しかし同じ内容を取り扱っていても、書いた人、またニュース記事かエッセイといった形式によっても文章の成り立ちが大きく異なることは納得していただけるかと思います。
公的な文書やそれに近い文体で作成された文章というのは、ある程度の推敲や冷静さを伴っていなければ書くことができません。百歩譲ってそれがかなり批判的な内容であっても一応の考慮のもとに発表されたと考えることができます。
議論そのものは決して悪ではなく、感情的になってしまうことが問題を引き起こすものです。ホメロスはこの点に注目して開発したものです。
創作や仕事でも使えるように
誹謗中傷への対策ということから出発したホメロスですが、文体や表現の分析という機能をそれ以外にも活かせるようにしました。それはこのnoteのような創作の場や、広報などの仕事での活用です。
エッセイやブログを書くときはある程度くだけた表現の方が読みやすいものです。一緒に暮らすかわいい猫の様子をWikipediaのような文章で書かれても困ってしまいます。
公式アカウントをはじめとした広報においても同じことがいえます。ただしこちらは企業としてのイメージもありますから注意が必要です。大企業の公式アカウントでも少し配慮の足りない表現をしたことで問題になった例は多くあります。
ホメロスは客観的に文章を分析できるので、作家に対する編集者のような役割を担うことができます。いわゆる「炎上」の危険のある文章に対して注意喚起をする機能もあるのでSNSの投稿にも役立ちます。
さいごに
言語は疑いなくもっとも重大な、同時にもっとも神秘的な、人間の心の所産である。
言語モデルへの挑戦と誹謗中傷に対する対策。かなり気負ったきっかけから誕生したホメロスですが、文体という点に注目することで情報発信をする誰もが使える人工知能になりました。
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