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思考のしおり

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#哲学

あのトンボは早すぎた

6月のはじめ、そろそろ梅雨入りするかどうかという時に、道でトンボが死んでいるのを見つけた。まだトンボを見かけるような季節ではないし、セミもまだ鳴いていない。成虫になる時期を間違えているような気もする。 ひと目でトンボだとわかるくらい綺麗に形を保ったまま息たえているところを見ると、体の調子もどこか不完全だったのかも知れない。年中働き者のアリ達は既にこの不幸な亡骸を片付け始めていた。 生物学に従うならば突然変異が何らかの変化を促し、このような季節外れの事故を生み出したのだろう

人類最古の流行語大賞

その時代が実際にどんなものだったか、ということを正確に読み取ることは困難です。自分の過去ですら案外思い違いが起きるのですから、ましてや時代全体の把握など難しくて当然だと言えるでしょう。 一方で流行りというものはその時の雰囲気や状況を反映しているという点で一つの指針になります。問題があるとすれば、それが「流行」である以上は定着しにくく、記録しなければ消え去ってしまう危険性があることかもしれません。 時代を表す流行語日本でよく話題になる「流行語大賞」はこの点において貴重な資料

月曜日は土曜日に始まる

題名のこの言葉はキリル語圏の慣用句です。同名のSF小説から取られたもので「日曜日がないほど忙しい」というような意味です。忙しいことの表現はどの言語にもありますが、楽しい週末を取り除いてしまうという発想が面白い一節です。 外国語を学ぶ一番の楽しみは、より多くの人と会話を楽しめるということでしょう。しかし違う考え方に触れるということも大きな魅力の一つです。外国語にはその土地や文化が育んだ独特の概念がしっかりと存在しています。 たくさんの翻訳も手がけていた森鴎外は次のように述べ

エンタメとアート

美は常に人間の目標の一つでした。数多くの芸術家や哲学者が生涯を捧げ、今も多くの人々が立ち向かっていることでしょう。しかこれと近いものに心地よさ、快楽といったものがあります。美をもたらすのが芸術だとすならば、単なる快楽を与えるものは娯楽と言ってよいでしょう。 娯楽、英語で言うところの「エンターテイメント」は日本では略されて「エンタメ」と呼ばれることもあります。芸術と娯楽は同じ場面で使われることがあります。例えば、この映画が芸術なのか、単なる娯楽なのかという批評家のコメントを目

古典は必要なのか、それとも不要か

W・H・オーデンという人を知っていますか。1907年のイングランドに生まれた詩人である彼は、こんな言葉をのこしています。 不当に忘れ去られている本というのはいくつかあるが、 不当に記憶されている本はない。 このことばとは、時代も言葉も国さえも、遠く離れた現在の日本では「古典を学ぶ意義」というものが疑問視されています。 試しに検索してみれば、「古典 勉強する意味」という候補が出てきて、その結果は約33,100,000件(Google)もの数にのぼります。「古典は本当に必要

大学生の考える「働き方」

「自分らしく働く」ということが理想的な姿とされることが多くなってきました。しかし、「自分らしく働く」ということはそもそもどのような意味を持つのでしょうか。 現代の標語就職活動の場、特に学生側の立場においても「自分らしく働く」ということばはよく聞かれるようになっています。そういった理念を持った会社こそが理想であるという理念はここまで浸透しています。 また、高度経済成長期における「仕事人間」のようなものが支持されなくなったことも確かです。一方でそのような考えが少し前の世代に根

20代の読書論 - 「自己投資」か「幸福」か

この文章は一種の「読書論」と言えるかもしれません。すでに読書についての記事や本は多くあります。ショウペンハウアーの『読書について』や、最近だと読書猿さんの『独学大全』が有名ですね。(余談ですが、このふたつは対照的な態度が見られると思います。) 上に述べたように偉大な先人の著作があるのは重々承知ですし、それらの恩恵もかなり受けているのですが、今回自分なりに考えをまとめておきたいと思います。読者の方々の考える素材にしていただければ幸いです。 読書の定義ここで一度「読書」の定義