小説「雪の上に、、、の、足跡」
積もった。
厚く積もった。仮に、死神が宙に浮いているものだとしても、ここまで雪があれば、そこに、君が居た証は残るだろ。それくらい、積もった。で、私は死神の到来を待っている。何故か? 逆に何故か?
「あなたは死神の詣でを待つ身ではないのか」
私の曾祖母は、たいへん汚なく死んだ。60を越えてから糖尿病になって、医者に日参して、薬や食事に気をつけて、運動をして。最後は結局老衰だったのだけど、いぢきたないと、11歳の私でも思ったから、多分、みんなが思っていた。みんなと言うのは小父とかいとことか。
厚く雪が積もっている。私は死神がいつ詣でても構わない。分際を知っている。
分際の解らないのは、劣悪だ。
劣悪なのは、始末に終えない。始末に終えないのは嫌だ。私は私らしく、身の丈で死にたい。この国は豊かだ。老生は、無知のひとのすること。