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私小説「私のあのこの落差」

かわいいかわいいと思っていた子どもがいっぱしのスポーツマンを気取っている。気取ってやしない。ただ、私が嫉妬からそんなように書いてみたりするのである。今年のインフルエンザのはやり方はすさまじく、新人戦のレギュラーに成るべき子どもたちが次々に感染してしまった。10人居なくてはエントリー出来ない。監督さんの苦肉の策で、見習いバスケ部員の長男にユニフォームが回って来たのでした。私は応援要員として試合に参加した。他所の小学校の狭い体育館の限られたスペースで、だんごになって服を着替え、ゲームになれば滝のように汗をかき、だんごになっておにぎりにかじりついている彼らの姿を見て、私は長男に嫉妬した。ああ、私も、男の姿を得てこの世に在ったら。こんなようなあきらけき生き方が出来たのだ。女は無様だ、造りが悪すぎる、体も、世界も。そんなことを言っても仕方がない。が、ほとんど10歳の私と同じ姿をした長男が、私の望んだような生き方をしているのを見ると、ああ、こんのっちくしょう!と、どうしても思ってしまうのです。

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