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伊豆川飼料、悩む!!

すいません、1か月間は毎週更新すると他所(Twitter)で宣言し、4週目で途絶えて二か月。沈黙を破り帰ってきました。またコツコツ更新していきます。(パンダの画像に意味はありません)

前回までのあらすじ

70年以上前から地元静岡のマグロやカツオの加工残渣(魚の頭や骨やしっぽなどの人間が食べない部分)を回収し、加工して飼料や肥料を製造する伊豆川飼料株式会社。原料の仕入れ先である静岡の水産加工業は、製造コストの削減に苦しんでおり、水産加工業が国内製造する量は少しづつ減っていた。それにより、伊豆川飼料の入ってくる原料も少しづつ減り、会社だけではなく、静岡や日本の将来の不安を感じるようになったイズカワはこのピンチを救うべく、食品分野に首を突っ込み、静岡産のツナ缶を盛り上げるため、ツナ缶新商品の「とろつな」「しろつな」を開発することになったのだ!!

伊豆川飼料の提唱する静岡の美味しい循環である「ツナサイクル」

初めての商品開発

新商品を開発することになったのはいいのですが、今まで会社で製造してきた製品はほぼずっと変わらない「魚粉」「魚粕」と言われるもの。約20年前に始めた「配合肥料」に関しても、配合する原料の種類や内容をオーダーメイドで組み合わせる製品のため、まったく新しいものを開発する経験がなかったんです。更には全く未開拓分野の「食品」ということで、どこから手を付けていいか早速迷うことに。。。

困ったイズカワ、まずは製造をしてもらいたい地元・清水の缶詰メーカーへ話をしにいきました。メーカーさんの第一声は、「えー!?」でした・・・静岡に缶詰のメーカーさんは数社あるのですが、大手と中小があり、中小は大体大手の下請けの仕事をすることが多く、あまり目立ったことをしたくないというのが本音でした。ここの会社、自社ブランドはあるものの、積極的な営業はあまりしていない印象です。地方の歴史ある中小企業は保守的なことが多いんですね。

最初は嫌がっていましたが、相談に相談を重ね重い腰を上げてもらいました。「とにかくそちらの製品はいいものなので、製造に都合の良いタイミングで、都合の良い製品を都合のいい量つくって、都合の良い値段をつけてウチに売ってください!あとはこっちで責任もって売ります!」と半ば強引に社長を説得をして新商品の「中身」を作ってもらうことになりました。メーカーさんの作りやすいもの最優先という方針で、メーカーさんが普段からよく作っているもののリメイクのような形になりました。もちろん私の推しの商品を優先的に選びました。

ネーミング

新商品開発にあたって重要なもの、それは商品の「名前」です。ツナ缶の世界では、「シーチキン」という名称が最も有名ですが実は「シーチキン」は「はごろもフーズ」さんの登録商標で一般名称ではないのです。シーチキンがあまりにもメジャーすぎてほぼ一般名称化していて、実際にうちのツナ缶も注文時に青いほうのシーチキン1ケースお願いしますとお客さんから言われることもあります。

そんなシーチキンに対抗はできないものの、覚えやすく親しみのある名前はないかと考えていました。意外とこれはすんなり決まり、どこで思いついたかは忘れましたが、新商品の中身の候補が決まった時点でほぼ頭の中にはありました。「とろ」の部分をつかったツナだから「とろつな」。ホワイトミートと呼ばれるびんちょうまぐろをつかったから「しろつな」。シンプルです。しかも「と」と「し」一文字違いという最高の組み合わせ。いつも自画自賛してますが、他人から褒められたことが一度もありません・・・

ちなみに「とろつな」「しろつな」は2018年8月に商標出願し、2019年6月に無事登録されることになります。

パッケージ

「中身」が決まった後は「外身」です。パッケージとかデザインに関しても私は全くの素人。絵心もない私は途方にくれました。身内にデザイン(美術)をかじったことのある人がいたので、また相談。何したいかわからない、売れない、など罵声を浴びながらも協力してもらいました。

デザインをお願いするにしても原案がないと何も始まらない。まずは自分自身でパッケージデザインの研究をしました。既存のツナ缶は、大体商品の写真がどこかに出ていたりしていてあまりデザイン性は重視されていませんでした。また、製造ロットの関係で缶に直接印刷をするととんでもない量を頼むことになるため、既製品である無地の缶を使い、それを別途デザインされた箱に入れることにしました。実は結果的にこの「箱入り」が良かったと実感することになります。

うちには裸の缶と組み立てていない箱の状態で別々に納品される。

お土産やプレゼントに使いたくなることをコンセプトにしているので、化粧品やお菓子のパッケージのデザインを「Pinterest」というサイトを使って、暇があればひたすら眺めていました。あとは旅行に行ったときにキオスクやサービスエリアでデザインが気になるものがあればとりあえず購入とインプットをし続けました。

当時ピンしまくっていたデザイン達。

そしてインプットを終えたイズカワのつたない手書きの落書きイラストをベースに最初に完成したのが下のデザイン。どうですか?手作り感満載です。ここからどんどんブラッシュアップされ、現在のパッケージに到達しました。(当時の落書きはみつかりませんでした。。。)

初公開の初期パッケージ案。手作り感あります。
最終的に出来上がったパッケージ。初期のものと同じ人がつくってます。

リスクの小さいスタート

静岡のピンチを救うという崇高な思いの元、2016年の夏ごろついに完成した「とろつな」「しろつな」。初めての商品開発だったので、極力いろいろなリスクを最小限にしてトライ&エラーだ!アジャイルだ!と失敗したら次!
といけるようにしました。

まずツナ缶の賞味期限。なんと製造から3年です。売れ残って賞味期限がきて廃棄するリスクが非常に低いのです。そして次に製造ロット。本当はツナ缶の中身も全く新しいものにしたかったのですが、メーカーさんの体制などもあり既存ラインナップのリメイクという形になったため、ついでに作ってもらえば製造のロット数量が少なくて済む。ロットと廃棄の問題。このあたりが一般的に新商品開発で壁になるポイントだと思うのですが、図らずしてリスクの小さいスタートを切っていたわけです。(イズカワ、実はおっきなチャレンジしてなかったなってことがバレてしまいましたね。)

つくったけど売れない・・・

さあ売るぞ!!となったとき、またもや困ったことが発生します。なんとイズカワ、売り先を考えていませんでした!!ターゲットはしっかり設定し作ったはずが、そのターゲットに届ける方法(販路・商流)を考えてなかったのです!

積みあがる初回製造ロット。従業員さん達からは白い眼差し。ひとまずは、日ごろ肥料を使ってくれている農家さんに粗品として配ることにしました。この業界では、農家さん向けに肥料の説明会をする機会が多く、粗品としてボールペンや軍手を配る風習がありますが、ウチは違う!ツナ缶を配りつつ、「このツナ缶とっても美味しいんです!そしてコレを作るときに出てきた残渣を廃棄せず有効利用してできた素晴らしい肥料を皆さんは使っているんです!」と説明を加えることで、肥料のストーリー、トレーサビリティの両方を充足させ、ツナ缶の宣伝もしてしまうという戦略をとりました。ある程度の在庫は捌けました・・・でもこれは、本意ではないのです。より多くの方に伊豆川飼料のメッセージを伝えるには足りない。またまた悩んだイズカワは、とあることを思い出し、今までやったことのないアウェイ営業をするのです。そしてこの出会いが後にこの事業、伊豆川飼料、伊豆川自身の転機となるのです・・・

あとがき

今色々振り返ってみると、とりあえず勢いでガーっとやっていて、後付けで成功した(?)理由をつけている部分が多かったなあと感じています。続きが気になるでしょう?また読んでくださいね。ありがとうございました。

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