うろ覚えで書く読書記録/うろレコ 細谷巧「問題発見力を鍛える」編

手元に本を置かずに、頭の中に残ったことだけを記録するうろレコ。
本の要約でもなければ、明日から活かせるTIPSを書くわけでもなし。
ただただ、印象に残った要素だけを記録します。

今回は細谷巧さんの「問題発見力を鍛える」。
細谷さんの本を読むのはこれが2回目。
前に読んだ「抽象の目」の本で細谷さんの考え方のOS感というか、他へ応用を効かせられるベースというか、とにかく転用場所が無限にあると感じた。これを機に細谷さんの本を読んでみることに。
心に残ったポイントはこちら。


結局問題発見力はどうやったら鍛えられるのか

まず、問題発見とは何か。本文ではしばしば問題解決と比較する形で説明されていた。
本文の中で一番記憶に残ったのは

原始時代の場面で、狩場を探すのが問題発見。どうやったらたくさん狩れるのか、方法を探すのが問題解決。

というたとえ。
要は何を議題にするのか、どこを対象にするのか、いつを狙い目にするのか、誰を攻略するのかみたいな部分が問題発見。逆にそれらが全て固定された中で、どうやって大量に狩るのか、どうやって短時間で狩るのか、どうやって工数を減らすのか、どうやって最少人数で狩るのかといった部分が問題解決。問題発見はWHYの要素が強く、問題解決はHOWの要素がそれに乗ってくる。

餌がないサバイブを強いられる場面ではWHYの問題発見能力が高い個体が生き残る。一方で、口を開けていれば餌が入ってくるような状況では圧倒的にHOWの問題解決能力が高い個体が生き残る。今の時代はどちらかというとWHYの場面に近いように感じる。

ではそんな問題をどうやって見つけるのか。印象に残ったのは次の3つ。

期待と現実の差を見つける

いわゆるバックキャスティング。ゴールとなる期待値と現状の差を問題とする。この時、現状が期待を下回った状況を問題と捉えるのは当たり前のことだが、本を読む中で逆のパターンも存在すると気づいた。現状が期待値を上回ったとき、それはその魅力が十分に伝わっていなかったと考えられる。発信力不足だ。これもある種の問題だ。他にも、期待値の方をあらかじめ調整してしまうことで、問題深刻さをライトに変えることもできる。素敵なレストランだと思っていたのにサービスが粗悪だった時と、はなから期待していなかった時では問題の深刻さが違う。問題を問題としないことも問題発見力の活かし方だ。ちなみに、この差をどうやって埋めるのかを考えるのかは問題解決の領域。

偏在を見つける

この本の中で一番新しいと思えた考え方。商売も格差も基本的に〇〇のグループにはあるけれど、××のグループにはない。が原因で生まれる。熱帯地域でした育たないからコーヒー豆は貿易商品(=狩場=問題)になるし、スポーツは基本的に健常者が楽しめるように作っているから、障がい者をスポーツへ促す取り組みはしばしば海外アワードを受賞しやすいハッとするアイデア(=問題)につながる。物理的なあるなしだけでなく、情報のような無形のものもその対象だ。スマホの使い方という無形を知っている人と知らない人がいるからスマホ教室(=狩場=問題)は成り立つ。REINSにアクセスできる人とできない人がいるから、不動産仲介業が成り立つ(=狩場=問題)。白人だけが優遇されるから問題。高齢者と現役世代の税負担が全然違うから問題。格差・偏在・偏りこそ問題の正体。

線引きを見つける

これは二つ目の偏在と絡む要素だが、「何と何を別のグループとして分けるのか」という考え方だ。細谷さんの「抽象の目」にもあったが、メタ認知と具体の行き来が頻繁にできるようになるほどに、見つけられるグループ分け(=線引き)の数が増える。国・人種・住むエリア・時代・ベテランと若手など。どの線引きで分けるかによって問題の発生場所はいくらでも生み出せる。ともすれば次に取り組むべきはこの具体と抽象を行き来する能力だ。

問題発見は表頭作り。問題解決はセルを埋める作業。

問題発見は狩場を見つけること。問題解決は具体的にいかに効率よく狩るかを考えること。本の中ではこれを車選びにたとえていた。この例がとてもわかりやすかったので印象に残った。
車選びの時に、多くの人が頭の中で無意識のうちにスプレッドシートを作成している。A車・B車・C車と複数の個体がある中で、デザイン・トランクルームの大きさ・乗れる人数・燃費・カラーリング・費用・インテリア・走行性能などを比較している。この時、比較項目となっているものこそが問題である。各社はこの問題に対して、カタログなどで回答を用意している。
つまり、現在の車づくりは多くの人の頭の中に出てきやすい比較項目(表頭)に応える形で設計されている。新しい問題=新しい比較項目を見つけることができれば、それは他が比べる回答(=問題解決=セルの中身)を用意できていないことになるので、圧倒的に他の個体と差をつけることができる。

2つのWHY

5W1Hとひとくくりにされてしまっているが、この中でWHYだけが特殊だ。特殊さは二つある。一つはWHYのみが名詞で答えられないこと。要は実体を伴っていない、抽象の世界にあるのがWHYだ。特殊性のもう一つはWHYにはベクトルがあることだ。具体的には過去・原因を探るWHYと未来・目的を探るWHYがある。原因を繰り返し探っていけばゆくゆくはほんとうの行動理由に辿り着き、目的のWHYを繰り返し探っていけばゆくゆくは本当の目的に到達できる。WHYを考える時、つまり問題を探す時にはこの二つの方向のうち、どちらで考えているのかを都度認識する必要がある。

おわりに

細谷さんの本の好きなところは本同士が体系的に繋がっていることだと、書いている中で分かった。本から学習したことがいろんな分野に繋がるだけでなく、それが本同士でも繋がるから最初に書いた「活かしやすさ」みたいなところに繋がるんだろう。
次は「具体⇄抽象トレーニング」を読みたい。


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