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南伊豆古道を歩く〜吉田ー妻良ー子浦ー日和山編〜
2022年5月7日。子浦の朝。昨日は1日かけて石廊崎から吉田まで歩いた。
昨晩なんて足はくたくた、身体的にもしっかりと疲労があり「充分歩いたから」と自分に言い聞かせ、今日は歩かずに戻るはずだった。ところが、、、
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吉田ー妻良
9:40 車は引き続き、民宿いすゞ浜荘の駐車場に停めさせてもらい、小林さんに吉田まで送っていただく。国道から吉田の集落までは奥深く、伊豆半島でも指折りの秘境だ。
朝ごはん食べたら意欲も湧いていた。昨晩の疲労は幻だったかのように身体は回復していた。思考はいつのまにか行動に追いついた。まずは二十六夜山へ入る4km、105分の南伊豆歩道を歩く。
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沢沿いに歩きづらい礫の登り道が続く。
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700mほど進むと今度は丸太の遊歩道。だけど、遊歩道の上にも礫の道が続く。
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丸太の遊歩道を上りきると平地に出た。左手の絶壁の合間から、青い海原が見える。風と落葉の音、鳥のさえずりが私に語りかける。
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スズ竹の緩やかな下りから、次第にカヤの茂る草原へと道が続く。このあたりはカヤ場。昔は屋根材、炭俵などに使う材料を作っていた牧歌的な草原へ。
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ここからはシダ植物の地帯となり、緑のジャングル景観が楽しめる。足元は不安定なので十分注意しながら歩く。倒木が道を塞ぐ。
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整備された遊歩道だけど、崖は厳しい絶壁なので落ちないように。再び、沢沿いを緩やかに下る道。
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沢を渡る。橋を越えたら、しばらくアップダウンが続く。
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今にも崩れてきそうな岩壁を越えたら、見晴らしの良いスペースに出た。
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今日はどこまで歩けるのか。子浦ー日和山ここまで歩けたら及第点。その先、伊浜までの道は1974年の伊豆半島沖地震で崩落してしまってるので、平家の隠れ里・落居は通らず、国道を歩く予定。
伊浜から波勝崎は波勝崎モンキーパークへと出るのか。野猿の波勝崎から大展望の高遠山(519m)を越えたら、いよいよ西伊豆が見えてくる。
遠くに見えるのは宇留井島。海岸線にへばりつくような集落は落居、伊浜。先端の高い山は猿の王国・波勝崎だ。
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かなりの急な下り急な木組みの遊歩道。勾配きついので慎重に下りる。
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山合いの遊歩道は、海を見渡す遊歩道。眼下には京の字島、その先には子浦。海の水平線にうっすら見えるのは、静岡市のあたりだろうか。
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海まで下りることができる北谷川浜への分岐を右に、再び沢の流れる場所を通る。心地よい水のサウンドが癒してくれる。水と音が分かれば宇宙がわかるようになる。
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ニホンカナヘビが顔を見せてくれた。近づいても逃げないのは日向ぼっこしてるから。
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いすゞ浜荘の小林さんは、山や海、植物や自然について語る時、まるで人と向き合ってるように話す。その人格はとても大きな存在であり、いつでも優しく見守ってくれる存在。きっと祈り、山を歩く修験者たちも同じように感じでいたのだと思う。
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自然は向き合うほどに私たちに語りかける。いや、常に語りかけてるけど受け取れてないだけかもしれない。目に見える小さな価値感を手放し大自然に向き合うと、私たちの存在は個ではないことに気づく。
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再び、林道を歩く。
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舗装された道が現れてホッとした瞬間、目の前をアナグマが横切った。思わず声を上げてしまった。驚かせてごめんよ。
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妻良の湾が見えてきた。正面に見えるのは子浦の集落だ。
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妻有ー子浦
道なりに下っていくと国道にぶつかる。文明だ。妻良区の公会堂前に出た。
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道路を渡ってまたすぐ細道を入る。車が通れない、歩く人専用の道。再び、国道に出て三島神社に繋がる。
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伊豆峯次第の拝所・善福寺を通過し、妻良港でひと休み。子どもたちが海で遊んでる。奥に見える神奈備は波勝崎だ。
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妻良ー子浦の区間は「妻良の七坂、子浦の八坂」と唄われる。わずか2キロの道なんだけど、海へ降りて山を登ってを繰り返す。それなら舟で渡ってしまった方が早い。今でこそトンネルがあるけど、かつての道はそれくらい険しい山道なのだ。
現在では利用されなくなった「妻良の七坂、子浦の八坂」ルートを知る地元の人には出会えていない。現在は、山を抜いた3つの大きなトンネルが、人の営みを支えている。
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三つ目の白崎トンネルを超えると、広い平場では定置網を干していた。
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12:30 子浦の集落へ。
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いすゞ浜荘の裏に流れている五十鈴川までやってきた。改めて庚申塔や石碑を見ていたら、通りすがりの人が教えてくれた。夏になると「涼みに水神さん行こう」とこの辺りに集まるのだそう。
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形象Y字の分かれ道。本来は八幡神社を目指して右の道なのだけど行き止まり。なので迂回路して旧三浜小学校方面へ。
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八幡神社境内を抜けると集落の上に出る古道があった。
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上りきったところにタイプの違う石碑がまとめてあった。
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ここから西子浦の集落に下りて日和山遊歩道へと繋ぐ。
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刺し網のメンテナンスをしていた漁師さんと少し立ち話。今年は歩いてる人と自転車で訪れる人が多いそうだ。
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これもまた風情。集落の細道は、刺し網がまるでカーテンのように。
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子浦ー日和山
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13:30 子浦漁港の奥まで行くと日和山遊歩道がある。案内板が目印だ。
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ここから静岡県天然記念物・ウバメガシの群落の中を登って行くと、覆い被さるような半洞窟に「子浦三十三観音」と呼ばれる石仏群がある。
伊豆石の中でも柔らかい凝灰岩で作られた石仏は、波に洗われ原型をかろうじてとどめているものもある。
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分岐があり展望台方面へ。ここは鏡鼻と呼ばれ、ぐっと深く入り込んだ湾内が眼下に一望できる。あまりにも心地が良いのでここでひと休み。
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再び分岐に戻り、ヤブツバキ林の中を進むとまた分岐地点。丸太で組んだ急な道を下りていく。
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素敵な浜に出た。深い碧色の海がゆっくりとせせらぐ。
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断崖を見上げると美しい地層が広がっている。海底火山が隆起して地上に姿を表し、長い年月をかけて侵食された大自然の芸術だ。千畳敷でも見た光景、非日常の世界。
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圧倒的な光景に突き動かされ歩いてたら、間違えて長言岬に来てしまったが、ころばし地蔵はもう一つの岬にあるようだ。
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14:00 ころばし地蔵。
お地蔵さんを海に蹴り飛ばす。罰当たりなことをすると海が荒れる。なぜそんな事を願うかというと、江戸時代、帆船で港が栄えていた頃。子浦には遊女がいた。
海が荒れると船が出せないため、大風や嵐になると、船乗り達は子浦に避難した。子浦は陸の孤島のような場所なので、生活を営むために必要な物が全てあり、長期滞在者が多いことから遊郭もあったのだ。
遊女は船乗りにいつまでも滞在してほしいから風が凪そうになると、朝早く起きてお地蔵さんを蹴飛ばす。それで風が吹いてきて、出港が遅れるという…笑
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丁度、シーカヤックが通った。気持ち良さそうだ。船出したい!
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松やウバメガシなど海岸特有の植物に覆われた細い道を上っていくと、空が抜けて視界が広がった。
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日和山に到着。その名前の通り、天候や潮の流れ、風の向きなど、天気模様(日和)を見るため見るための山だ。波静かな湾内を一望できる。見晴らしが良いので、航行に役立つ天気を予想できそうな景観だ。
こうしてみると湾の入り口にある防波堤は存在感あるけど、集落の安全に大きな役割を果たしているのがわかる。
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峠の茶屋まで、あと300m。椿のトンネルを下り、慈母観音を右折する。
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14:45 峠の茶屋に到着。5時間、9.1km。吉田から日和山まで歩けたら及第点。その先、伊浜までの道は1974年の伊豆半島沖地震で崩落してしまってるので国道を歩く予定。この先を行くかどうしようかと考えてたら、パグを連れた人が歩いてきた。
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隣のベンチに座ると、まるで会うことが決まっていたかのように話し始めた。伊豆半島中を歩いた移住者の方で、興味深い情報をたくさん教えてくれた。もちろん、この先の道についてや落居についてなど。
意気投合し、私はお家まで遊びに行くことになった。今日はここまで。
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