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【アートとビジネスの間】香水のサブスクリプションモデルについて考える

皆さん、香水にサブスクリプションモデルのサービスがあるのをご存知ですか?

サブスクリプション方式(サブスクリプションほうしき)はビジネスモデルの1つ。商品ごとに購入金額を支払うのではなく一定期間の利用権として料金を支払う方式。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

僕のブログ【ChillaxJap】を読んでくれている方はご存知かもしれませんが、僕が知っているだけでも、

1.COLORIA
2.SCENTPICK
3.Celes

の3つの香水のサブスクサービスがあります。

今回は、この「香水のサブスクリプションサービス」について批判的に考察していきたいと思います。


香水のサブスクサービスはあり?なし?

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香水のサブスクサービス、今めちゃくちゃ人気ですね。僕のブログでの「COLORIA」のページはどんどんアクセス数が伸びています。
>>>『購入前に知っておきたいCOLORIAのメリットや評判・口コミまとめ【香水の定期便サービス~カラリア】

だけど、このサービスを【香水を楽しむ】っていう点から見たとき、本当に素晴らしいと言えるのだろうかという、小難しいひねくれた題について考えていきます。

僕の結論は、「あり」。

まあ、ブログで紹介してますしね。笑
しかし、完全に例外なく「あり」に意見が偏っているかと言えば、そうではないですね。

このあと詳しく綴っていきますが、ビジネス的な側面から考えたときにはすごくいいアイディアだと思っていて伸びてほしいと思います。
しかし、香水がもつアートの側面から考えたときには、考えておきたいなっていうポイントがあります。


ビジネス的な側面から

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まずはじめに、簡単にこのサービスの仕組について紹介すると
基本的に50ml、100mlといった単位でボトルで売られている香水を、アトマイザーと呼ばれる持ち運び可能な小さなケース単位(5mlとか)で販売している、というものです。

このサービスには次のような嬉しい点があることは想像できます。

1.ボトルだと高価で手が届かないようなラグジュアリーな香水でも、お手頃価格で手に入れることができる
2.地方在住などで、なかなか店舗まで香水を買いに行けないような方に対して、安価な値段で試す機会を提供している
3.1種類あたりの利用が安価に、そして量が少なくなるため、いろいろな種類の香水を気分や季節に合わせて変えることができる
4.香水にあまり興味がなかった人に対して、新しいリーチ方法が生まれたことによって、香水全体の需要の拡大が見込める。


逆に、注意したい点としては次のようなことが考えられます。

1.割高になる。
2.安価で出回ることでブランドイメージが損なわれる。

しかし、これらのメリットデメリット比較したときに、メリットのほうが双方にとって大きいかなと思います。
そのため、僕は香水のサブスクリプションサービスはビジネス的な側面で考えたときありだと思ってます。


アートの側面から

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では、香水が持つアートの側面からはどうか。

そもそも僕が考える、「香水のアートの側面」についていい機会なのでまとめてみます。
※主にメゾンフレグランスについて想定しています。

1.香水の香りから想起されるイメージを楽しむ(ユーザー視点)
2.具現化されていない何かしら(イメージや感情)を「香り」という形を中心に具現化させる(調香師視点)


1に関しては比較的分かりやすいのではないでしょうか。

香水をかいだときに、良い匂いだな、と感じるだけの人がほとんどだと思います。
しかし、たまに「この匂いをかいだときに、子供のとき公園で遊んでいたことを思い出した。」みたいなことってありませんか?
もっと具体的に言えば、「カレーの匂いをかいだときに、子供の頃親が作ってくれていたカレーを思い出した。」とか。

この感覚を香水から感じる、という点が僕らが香水を楽しむときのアート的側面の1つだと思います。


2に関しては、僕が今まで香水を楽しんできた経験(いろいろな香水を買ったり、ショップ店員さんと話したり)や、ストリートダンスをしてきた経験からの憶測です。

ここでなんでストリートダンス?って感じですよね。笑
ご存知の通り、ストリートダンスは、あるジャンルの音楽で踊るものです。振り付けを作って踊ったり、即興でフリーで踊ったりします。
この際に気持ちよく踊るための1つの方法が、音楽からインスピレーションを受けて自分の中に湧き上がったイメージや感情をムーブという形で可視化する、という方法があります。(※個人的意見)

先程の1つめであげたことと絡めると、
音楽という、アーティストとそれを聞いている他人との間にある共通媒体を介して、また、それを聞いた自分のムーブという共通媒体を通して、コミュニケーションを取る、ということです。

そして、この後紹介する側面と絡めると、
アーティストが何か表現したいもの(経験や感情、イメージ)を音楽という形で可視化(CDジャケットなど)と可聴化(音楽)させたものである、という点。


この2つ目の点を香水に当てはめて考えると、
調香師が何か表現したいもの(経験や感情、イメージ)を香水という形で可視化(ボトル)と可嗅化(香水)させたものである、といえます。

具体的なブランドを挙げて紹介します。⬇⬇⬇

.Kilian

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MAKE PERFUME VISIBLE
While art leaves its mark, perfume has an inherently immaterial dimension. The top notes, the heart notes, citrus or explosive. But there must something for the eye to take in: the bottle, the material, the vaporiser; and the box, the bed in which it lies, like an echo, an apparition, a transition to the real. Kilian and his artisans opted to risk coming down to earth, to work with silver, gold, Calais lace and lacquer; to seek ways to recharge (and not throw away); to dare to interpret what they dream, draw out the essence, immortalise. To translate with the risk of betraying, but also to reconnect. Find oneself.
引用元:Kilian

2.fuegia 1833

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The source of inspiration is Argentina, the land where Bedel was born and where he spent his childhood. The land being an inexhaustible source of stimuli for creating new fragrances, and the brand being a personal tribute to the history, art, music, and nature that distinguish the vibrant culture of South America.
引用元:fuegia 1833

3.PENHALIGON'S

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イギリスの上流階級の秘密・・・礼儀正しく丁寧に振舞う彼らは、そのとおりの人物だと思いますか?
PORTRAITS(ポートレート)は、英国のウィットを、上流階級の人間関係、ユーモア、刺激的なエッセンスを持って表現する、かつてないフレグランスコレクションです。
引用元:PENHALIGON'S

こんな感じ。少しは僕が何を言いたいか伝わったのではないでしょうか。


ここで問題にしたいのは、香水がボトルも含めて調香師の作品であるという点です。(KilianやPENHALIGON'Sのポートレートシリーズは分かりやすいので引用元のリンクで見てみてください。)

現在の香水サブスクリプションサービスは、小分けするようのアトマイザーを独自のデザインで作っています。それも、香水ごとに分けたデザインではなく、全て同じものです。ここでの問題点は、

香水のボトルも作品の一部であるという点を見過ごしている
・ボトルに対する感動体験を奪っている
・アトマイザーもデザイン性があることから、調香師とサブスクを提供している企業の感性が混ざっている

という点です。

しかし、これらすべての問題点は、調香師にアトマイザーもデザインしてもらわない限り解決しない問題なので、これらの解決は非現実的です。


つまり、僕が今回考えたかったのは、これらビジネス的な側面から見た数多くのメリットと、アート的な側面から見た問題点、これらを天秤にかけて「香水のサブスクリプションサービス」について考え直してみよう、ということでした。


まとめ

【アートとビジネスの間】香水のサブスクリプションモデルについて考える

さて、長々と「香水のサブスクリプションサービスはありなのか、なしなのか」について、ビジネス的な側面とアート的な側面から考えてみました。

多くの人は、この香水の持つアート的な側面については意識もしないかもしれません。日常的に香水をつけて香りを楽しみたいという方にとっては、それで十分だと思いますし、このアート的な側面については僕の独断と偏見で書いています。

しかし、調香師の立場から香水というものを考えたとき、そこにはビジネス的な思惑以上のものはあると思います。

そーゆーものと、ぼくらが香水のサブスクサービスのような便利なサービスから享受するメリット、両方を考え直してみた、ただ、それだけのnoteでした。

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