記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

続・推し漫画「ガンニバル」について語りたい。

投稿:2022年11月12日
更新:2023年12月14日

※この記事は元々別名義のアカウントで作成したものですが、この雑多アカウントを作成するに当たり記事を移しました。(加筆・修正もあります。)
無駄に長いですので、お暇な時にお付き合いいただけたら幸いです。

※今回の記事にはネタバレ要素も含みます。
漫画「ガンニバル(二宮正明・作 / 日本文芸社、全13巻)」を最後まで読了していない方、単純にグロテスクな話が苦手な方は読まないことを推奨します。
また以下の考察については原作の漫画に関する内容であり、ドラマ版では内容が改変される可能性もあるかもしれません。


1.もっと語りたい!推し漫画「ガンニバル」について。

こんにちは。弥栄寧志です。
表題の通り、今回は私の推し漫画「ガンニバル」について改めて綴ります。(以前に記した簡単な作品の紹介については、下記を御覧下さい。)

狭く小さな村にありがちな村八分問題や因習について描かれたサスペンス漫画が、まさかのディズニープラスにて実写ドラマ化が決まり、とても話題になりましたよね。
2022年10月下旬より開催された東京国際映画祭で全7話のうち第2話までが先行上映され、それを機会にようやくメインキャストの詳細も発表されました。
2022年9月はディズニープラスでも「入会したら初月の料金は安いよ!」というキャンペーンもあったので、これを機に入会しました。
もう視聴する準備はバッチリ整えました。
完結後もなお注目を浴びているこの作品、実写版の配信前に改めて原作を読み直していたらクソデカ感情がどんどん膨らんできたので、ここに綴り昇華しようと思います。
最初にも警告しましたが、ここから先は思いっきりネタバレを綴るので、嫌な人はこの記事を閉じてくださいね。

2.物語のキーマン、後藤銀とは。

さて本題です。物語のキーマン、後藤銀についてです。
後藤銀は供花村を牛耳る後藤家一族のゴッドマザーですが、いきなり死亡してしまうところから物語は始まります。
鬼婆という言葉に相応しい険しい顔と言動で絶対的な支配力のあった銀ですが、その若い頃はというと、現在では想像できないくらいの美少女でした。
このギャップがまた衝撃的で、私も虜になってしまいました。
そもそも後藤銀とは何者だったのか。
これは物語の後半に次第に明らかになります。

時は第二次世界大戦のあたり、後藤銀は供花村で「呪われた子」として村民達から人間扱いされていませんでした。
というのも「奉納祭の生け贄の役目から逃げた女性の娘」、「野蛮な後藤家の妾の子」という理由からでした。
供花村において奉納祭は神聖な儀式として昔から信仰されていたので、それを放棄したということは絶対あってはならない侮辱行為と見なされていました。
しかし実のところは、その女性が自力で逃亡したのかというとそうではなく、奉納祭の主催者である来乃神神社の宮司・神山吉宗と、当時の後藤家当主・後藤定による助け船が密かにありました。
また、この時点で女性は妊娠しており、後藤家に身を寄せることになりましたが、銀を出産後に亡くなってしまいます。
銀は、表向きは「後藤家の妾の子」ということになりましたが、正確には後藤家の血縁でない養子だったのです。
この真実は定、定の嫁、銀しか知らないとされています。

3.どうして吉宗は銀の母を逃がしたのか?

ここで何点かの疑問が生まれます。
奉納祭の主催である吉宗は、どうして銀の母を逃がしたのでしょうか。
本来ならば村祭を慣例通り執り行わねばならない立場のはずです。
その動機とは一体何だったのでしょうか。

思うに吉宗は、銀の母に「特別な感情」があったのではないでしょうか。
銀の母は村一番の美女であったことが災いし、「誰かの一番のモノ」にさせないよう結託した村の男達から「なぐさみ者」として虐げられていました。
そして戦争による飢饉が供花村でも深刻化、「神様に生け贄を差し出し五穀豊穣を祈願しよう!」と口減らしを口実とした奉納祭で、まさにその生け贄という理不尽な役目に選ばれてしまいます。
それに吉宗が心を痛めて銀の母を逃がしたとも考えられますが、私はそんな「中途半端な優しさ」というより「強い愛情」があった可能性を推察しています。
銀が後藤金次や正宗を誑かしていたように、もしかすると銀の母も吉宗を「助けて欲しい。」と誑かしていて、それに吉宗は抗えず「そうだ、奉納祭を機会に逃がしてあげよう。」という運びになったのかもしれません…。
または、銀の母が吉宗を純粋に頼っていたら、結果的に吉宗と「そういう関係性」に発展してしまったのかも…。
供花村において後藤家一族と肩を並べる権力者である吉宗は、村の男達に「こんな常軌を逸したことは止めろ!」と言える、正攻法で銀の母を救おうと思えば救えた立場であったろうに、根本的に事なかれ主義だったんでしょう。
吉宗にできることは「奉納祭の生け贄を選定→秘密裏に逃がすこと」が精一杯だったのです。
この点については、根拠になりそうな場面が何点かあるのです。

「ところで吉宗殿、銀とはもう交おうたか?」

ガンニバル10巻 第86話より

まず吉宗が金次にこのように問われる場面で、吉宗の脳裏に一人の女性が浮かび上がりますよね。
金次の抱く疑惑通り銀かもしれませんが、銀の母である可能性もあるのではないでしょうか。
ロングヘアの銀にしては髪が短いようにも見えますよね。
または銀に母親の面影を重ねたイメージかもしれません。
次の根拠としては、こちら。

「俺も銀に誘われた。」
「あの女が最初に利用しようとしたんはこの俺や。」
「目を覚ませ、正宗っ、あの女はっ」

ガンニバル10巻 第87話より

銀を溺愛し盲目化してしまった正宗を説得しようとする吉宗の台詞ですが、この「あの女は」の続きは正宗に遮られてしまい、それ以上は言及されないまま物語が進んでしまいます。
その台詞の続きは、「腹違いの俺の娘かもしれん」と言いたかったのではないでしょうか。
吉宗もまた銀に誘われたこと自体は事実かもしれませんが、おそらく一線は越えていないと考えられます。
もし陥落していたら、先の金次との会話や対応もまた異なり村中のヘイトが銀ひとりに集中しなかったかもしれませんし、銀の妊娠問題で「相手は誰なのか」という候補に吉宗も挙がっていたでしょう。
何より吉宗が銀に誑かされなかったのは「さすがに『自分の娘である可能性がある相手』とはできない」という理性が勝ったのかもしれませんね。
勿論その確証もないものの、村での立場もあるので、結局のところ吉宗は「事なかれ」な形を、銀を救わない選択をしてしまったのではないでしょうか。
何せ頼みの綱であった定も病で寝たきり状態になり、気性の荒い金次が相手ですから。
そう考えてみると、銀と正宗は眼の描写が何となく似てますよね…。
異母姉弟か兄妹かは分からないですけど…。

4.どうして定は吉宗に協力したのか?

吉宗と親しい間柄であった後藤定。
少し話が逸れますが、後藤家一族には遺伝病があります。
その原因は「何百年も前、後藤家の始祖となる一族が定住できる場所を求め転々としていた矢先、現在の供花村である地域での奉納祭で口減らしとして差し出されていた生け贄を食べたことによる?」と描かれています。
しかし後に後藤家一族は鉱業で財を成し食べることに困らなくなり、村での形勢が逆転します。
定の時代に関しては後藤家が一番平穏であったとも言われていて、銀も「(人間なんぞ)少なくとも定や金次は食うとらんわ」と恵介に話しています。
(過去編で金次が「人を喰ろうて何が悪い。己は今でも喰ろうとる。」と言っていますが、それは「実際に人間を食している」のではなく「搾取している」という意味だったのです。
食べ物に困った場合の最終手段として「食べ物が無ければ、人間を食べたらいいだろう。」という考えはあったようですが、実際にカニバリズムに及ぶことはありませんでした。)
話を戻すと、この後藤家一族の歴史的背景から鑑みて、戦時中の飢饉に困り生け贄だった銀の母を奪いに来たわけではないでしょう。
定が吉宗に協力したのは、一体どうしてでしょうか。
「さすがに危険ではないか!?」などと吉宗と揉めなかったのでしょうか。
それとも、ただのイエスマンだったのでしょうか。私は、定のある言葉に注目しました。

「儂とおまえに血の繋がりなんぞない」(略)
「…伝えるべきか迷うたが、あの子の想いと覚悟――…、最後に知って欲しかった。」
「お前は呪われた子なんかやない。望まれてこの世に生を受けたんや。」

ガンニバル10巻 第90話より

これは死期を悟った定が銀に真実を伝える場面でのやりとりですが、特に「あの子の想いと覚悟」という部分について。
銀の母は、瀕死の状況や、妊娠による体内のホルモンの影響(母性の芽生え)で「子に罪はない!どうしても産みたい!」と吉宗や定に懇願したのかもしれません。
しかし本当にそれだけの理由で定は納得したのでしょうか。
その子の父親は誰なのかも分からないし、定にとって銀の母はアカの他人であり、定も誑かされていたとは思えません。(先述の通り「儂とおまえに血の繋がりなんぞない」と言い切ってますので。)
では、ここで要点を整理しましょう。

  • 「逃がしてあげたい」という吉宗の思い。

  • 「子は死守したい」という銀の母の願い。

定は、察したのではないでしょうか。
勿論「銀の父は誰なのか」という確証は無いけれど、少なくとも吉宗と銀の母との関係性に「特別な何か」があったのでは、と…。
吉宗の立場も踏まえて、定は最終的に納得して銀の母を匿ったのかもしれませんね。
銀に真実を打ち明けた際に吉宗のことに関して一切触れなかったのは、話をややこしくしないために伏せていたのでしょう。
しかし供花村で銀を育てられず村の外に出してしまったことは、銀の言う通り無責任にも甚だしい選択でしたよね。
定も銀が外でどう生きてきたか想像に難くないだろうに「あの子の想いと覚悟を~」なんて、とんでもないエゴの押し付けで許されるわけありませんよね。
そら銀も復讐の鬼になるのも致し方無いでしょう。

5.銀は正宗をどう思っていたのか?

異母兄妹あるいは姉弟かもしれない銀と正宗。
そんな可能性を知る由もない二人ですが、見た目だけは綺麗な美男美女カップルです。
最期まで銀を愛していた正宗ですが、銀は正宗を愛していたのでしょうか。
私のイメージでは「銀は97%正宗を愛してなどいなかった」と考えています。
あくまで正宗のことは、「自分がマトモに生きるための便利な駒」としか認識していなかったのではないでしょうか。
実の親からも、育ての親からも、誰からも銀は愛を注がれないまま育ったので、正宗の純粋な想いは残念ながら響かなかったでしょう。
残り3%は「そんなことなかったよね…?」という私の願望です(笑)
以下はその残り3%の根拠まとめです。

  • 銀の子供に白銀という素敵な名前を提案したのは正宗で、それを銀は採用したこと。

  • 文献を調べたり、実は白銀を通院させていたり、あの後も正宗は銀や白銀のために尽くしてくれて、最期まで秘密を共有する唯一の存在であったこと。

  • ふと正気に戻った正宗に苛立ち「あれ」を見せつけたのは「己以外の女のことなんか考えるな」という歪んだ女性としての嫉妬心もあったのでは…?

正宗は、あの時ふと正気に戻らなかったら、銀と本当に夫婦になれたのではないでしょうか。
正宗にとって「あれを見せつけられたこと」は実質的な失恋であり、後に別の女性と結婚したのは銀への当てつけだったのかもしれませんね。(銀にはノーダメージだったでしょう…。)
しかし銀との関係性はもう絶ち切れない呪いとなってしまい、最期まで銀に尽くす他になかったという…。
正宗は現代的に例えると「初恋の相手がホステスで、金品も童貞も何でも貢ぎまくっていたら、実はケツモチがヤバい連中で抜け出せなくなってしまったアホボン」という感じですよね。
いや、正宗君、結果的に銀と夫婦にならなかったのは正解だったと思うよ。
だって銀と正宗は…、あ、聞く耳を持ってなさそうだね…。
ごめん、もう黙るわ。

以上、銀も把握していないであろう「一つの可能性について」考察してみました。
あくまで個人の妄想ですので「そういう考え方もあるかもね?」くらいに優しく受け取っていただけたら幸いです。
ただでさえグロテスクな描写ばかりなので、実写版はそこまで言及されず上手いことコンパクトに改変されるであろうと考えられますが、むしろ「どんな風に改変されるのか」を心待ちしたいです。
実写版では神山宗近が大悟に「僕の祖父に会って欲しい」旨を話していましたが、この点が既に原作と異なる(原作では宗近は正宗の息子です)ので、
今から本当に楽しみです。

最後まで御覧いただきまして誠にありがとうございました!

※その他あれこれ要点をまとめた記事もあります。 ネタバレも含みますが、ガンニバル実写版第2期が公開されるまでの間の予習復習になれば幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?