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「少女」湊かなえ

〇ミステリー小説

 湊かなえ作の小説は「ユートピア」、「少女」で2冊目で、他に最近読んだミステリー小説は白河三兎の「私を知らないで」がある。ミステリー通算3冊目の「少女」が私にとって傑作すぎて、「湊かなえ」或いは「ミステリー小説」が好きになった。

 登場人物同士のすれ違いやちょっとした事件が起こり、読む人の頭に少しの混乱を生みながら静かに物語が進んでいく。静かに不穏に進む物語には、巧妙に伏線が張られている。そして結末には、それら伏線同士が急につながりあい、物語が頭の中で一気に出来上がってしまう。まさに溜息もので、これが大変な快感であった。

〇読み進めた感想

 この物語は、由紀と敦子それぞれの1日が交互に描かれており、詳細に淀みなく進んでいく。この小説が何か月何年もの長い期間を対象としているわけではなく、高校生の夏休みをのみの期間の物語である。特に、2章は1日の出来事で終わっている。そのため、一気に読んだほうがおもしろいと思い、2日で概ね読んだ。

 前半は、由紀と敦子のすれ違いが起こりながら、しかし静かに物語が進んでいくので、進んだページ数の割には読み進めた気がしない。

 しかし、退屈ということは全くなく、すれ違いやちょっとした事件、過去の回想などにより、不穏な雰囲気が高まっていく感じは、来る結末に向けて気分を高めているようで、内容も頭に入ってくるし、先にどんどん読み進めていきたくなる。「これは伏線か?!」などど勝ち誇ったように回収したつもりでいたりする。

 由紀と敦子はすれ違いばかりだったのが、時を経るごとに二人の関係が良い方向に向かっていく。と同時に、周りの人々や出来事も徐々にかみ合っていく。第3章の後半から第4章は不穏で、遂に事件が起こるが、終章はハッピーエンドのようで、なんだか拍子抜けする。私はイカれた性格なのでハッピーエンドが好きではないため、多少残念にも思ったが、むしろここから、どん底に突き落とすような何か暗澹たる展開が起こるのではないかと一方ではワクワクしていた。

 私の頭の一方で燻っていた期待通り、物語はそれで終わらず、しっかりと全てを黒く塗りつぶすような結末を迎える。全てがつながり(ちょっと二度読みした部分もある)、一気に美しく物語が出来上がった。「死」にそれぞれ魅力を感じ、「死」をそれぞれ追っていた由紀と敦子が、これを機にどのように生きていくのか、読者に否応なく想像せしめる読後感もよかった。

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