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伊丹の自然 伊丹昆虫館企画展ー動物編

1.はじめに

 おはようございます。こんにちは。こんばんは。IWAOです。4月で二日を使って伊丹昆虫館の企画展示である「伊丹の自然」へと行ってきました。ここでは、伊丹の自然や伊丹昆虫館が位置する昆陽池の自然についての展示が行われていました。「昆虫館」ですが、「昆虫以外」の生き物に焦点が当たり、昆虫館の周りが非常に自然豊かな環境であることが伝わる展示になっていました。このブログで、伊丹と昆陽池の自然が、どのようになっているのかについて解説していきます。

2.構成

 伊丹市や昆陽池に生息する生物を標本、パネル、映像で解説されており、今回の企画展示では、鳥、哺乳類、昆虫を中心にして展示が構成されていました。今回は、2部構成にし、前半で「鳥類」と「哺乳類」、当時の昆陽池で私が見てきたものについて解説し、後半で「昆虫」について解説をしていく方針です。よろしくお願いします。

3.昆陽池とは?

 まず、今回の舞台の一つである昆陽池について簡単な解説をします。昆陽池は、池の中心に日本列島を模した島がある池として有名です。しかし、昆陽池は、自然発生した池ではなく、人の手によって作られたため池です。この昆陽池を作った人物は、歴史の教科書で見たことがある「行基」です。行基というと奈良の大仏を造設した人物とのイメージが世間的には強いです。行基の功績は、奈良の大仏だけでなく、慈善事業を多く行っており、その一環に土木工事、貯水池の造営が含まれます。その貯水池として昆陽池が造られました。また、狭山市にある「狭山池」も行基によって造られ、今も貯水池として機能しています。
 昆陽池とその周辺の環境は、池だけでなく、小さな水たまりや川の流れ、茂った木々があり、非常に多様な環境があります。よって、多様に生まれた環境に合わせて様々な生物が住んでいました。

昆陽池の航空図
狭山池博物館の目玉展示である塀の断面
奈良時代から昭和までがここに積み上げられている。
昆陽池の風景

4. 伊丹の鳥

 伊丹、特に昆陽池では、多くの鳥を見ることができます。昆陽池を中心に鳥の観察が行われ、2023年の1年間の調査で131種の鳥が見られました。この種数は、非常に多いです。展示室内では、23種の鳥の標本が展示されており、標本だけでなく、パネルでエサを取り食べていたシーンなどと実際の生活の様子が展示されていました。ただ多くの鳥がいたというものではなく、鳥ごとに生息する環境に違いがあり、水辺のもの、林に生息するもの、縁化された公園(いわゆる、遊び場となる公園)に生息するものなどと生息する所など主に3つに分けられるものやその3つのどれかが被るものがいました。131種の鳥が、いつ昆陽池に来て見られるようになったのか、その記録も公開されていました。その中でも展示の中で、私が注目した鳥は、カワウ猛禽類の2つになります。

鳥の剥製の展示です。


 まず、カワウについてですが、昆陽池にいる鳥の中でいちばん多かったです。バードウォッチャーの方とお話しする機会があったため、昆陽池のカワウについて教えてもらうことができました。昆陽池のカワウは、琵琶湖について西日本で2番目の個体数が多い場所であるとのことです。今年の3月では300匹、多い時では最大1000匹見られることがあるくらいです。昆陽池のカワウの個体数があまりにも多いため、この昆陽池で生活を完結させるには、容量オーバーの個体数ではないかと感じました。カワウは、昆陽池で生活が全て成り立っていることはなく、ねぐらとして池を利用し、エサを川で取りにいくという生活をしているそうです。昆陽池は、カワウのベットタウンです。

写真に見える黒い点は、全てカワウで、ぱっと見100は超えてそうですね…
後ろのガラス張りは、伊丹昆虫館です。
鳥の観察ポイント地点の近くに来ることがあります。
ここでは、巣のためにいい枝をとっていました。
カワウの巣のと卵です。
これは、昆虫館の屋上で展示されています。

 しかし、カワウの個体数の多さは、昆陽池を含み、全国的に問題を起こしています。糞害や魚の取りすぎなどが挙げられ、昆陽池では糞害とそれに伴い、木が枯れています。カワウの密集している場所では、明らかに地面が白く、木の肌が剥き出しの状態に見え、木が枯れているように見えました。昆陽池でも何もしていないわけではなく、植林や個体の調査などを行っているようです。
 西日本で2番目のカワウの多さは圧巻ですし、昆陽池をどのように利用しているのか、その生態を展示を含め、生で見ることができて非常に面白かったです。ただ、多くいていいわけではないので、個体数をどうしていくのか、その模索が行われているとも感じました。

これは、島の一部ですが、この個体数です…

 猛禽類についても写真をはじめ多くの展示がありました。ハイタカ、アオバズクの剥製の標本が展示され、写真では、オオタカ、フクロウ、ノスリ、チュウヒ 、ミサゴがエサを取る場面などが展示されていました。

ハイタカの標本です。
アオバズクの標本です。

 猛禽類と言っても、オオタカやチュウヒのように越冬するもの、アオバズクのように夏にくるもの、ハイタカのように留鳥などと一言でまとめられますが、それぞれの種ごとに昆陽池では生活の仕方に違いがあることがわかります。猛禽類の展示の中でも、私が注目した展示は、フクロクとアオバズクの「食痕(ペリット)」で、胃で消化できないものを吐き出したものです。フクロウからは鳥(イカル、カラス、ヒヨドリ)のペリットが、アオバズクからはセミ、カミキリムシなどのペリットが見つかっています。両者の栄養段階が同じではないなどの大前提はありますが、この2種の食痕の展示から、両種はうまく棲み分けをしているなと感じました。フクロウなどの猛禽類に限った話ではないですが、食痕からその鳥が何を食べていたのか、つまり、鳥類の食性がわかります。ペリットから、何を食べているのかが分かり、鳥類の生態を解明する手がかりの一つになります。

フクロウとアオバズクの食痕

 昆陽池を中心にこのような猛禽類の存在が、非常に大切です。なぜなら、昆陽池の「トッププレデター」に当たる存在で、昆陽池という「自然環境の状態を示す存在」だからです。生態ピラミッドの頂点の存在を保護するとなると、まずその周辺のエサとなる生物や彼らの生息する環境の保全が大切となります。フクロウの場合はカラスやイカルが、アオバズクの場合は昆虫類が、安定的に棲息していなければいけません。そして、フクロウやアオバズクのエサとなるエサ生物達も、安定的に生息しなければならないため、さらにその下の生物の環境が安定していることが求められるます。つまり、トッププレデターとなる生物を保護するには、栄養段階が下の生物へと保全が速連鎖することになります。トッププレデターがいるということは、この昆陽池の自然は、土台がしっかりしていて、上の生き物を支えることができている証明。猛禽類の存在は、昆陽池の自然は豊かであることを示す大切な指標であるということです。

生態系ピラミッドの頂点だからこそ、保全は下へと連鎖する

 過去に企画展示が行われていたモズとはやにえも一部が展示されていました。詳細は過去のモズ展を読んで欲しいのですが、虫以外の色んな生物をとってははやにえにしており、小さな巨人です。「まさか、こんなものも食っているのか⁉︎」と想像できないものばかりで驚かされます。

モズのはやにえの展示の一部が復活していました。

5、伊丹の哺乳類

 昆陽池には、鳥だけでなく多くの哺乳類も生息しています。まず、伊丹の昆虫館に入る前に昆陽池の生き物を観察しており、その時に本物のヌートリアを見ました。見えたのはたまたまでしたが、このヌートリアを起点に昆陽池の生き物がどう関係しているのかが見えるとは思いませんでした。

昆陽池で悠々と泳いでいたヌートリアです。
シッポがなければカピバラです。
ヌートリアの標本

 昆陽池では、紫外線自動撮影カメラが、2022年3月から設置され、そこに映る哺乳類について、どういう生き物がいるのか、どういう生態をしているのかを調べています。そこで記録された動画が流れ、私が特に印象残ったのは、キツネとタヌキの両者が、ヌートリアを食べており、キツネは実際に「狩り」でヌートリア食べていた場面が映像に収められていました。特にタヌキの場合、肉食の側面があることは知っていましたが、見たのは初めてでした。タヌキは、カワウやヌートリアの死骸を運ぶ所が映像で収められていたものの、ある映像では、ヌートリアの死骸を運んでいたものの橋の板の間にヌートリアが挟まってとれなくなったから、そのまま食ったというドジな所が、見れたりして可愛かったです。また、キツネが、トンボを追っかけて遊んでいるような様子も確認されました。タヌキやキツネのリアルな生活環が見れるいい動画が流れていました。
 カメラには、タヌキやキツネだけでなく様々な生き物の映像が収められていました。実際に流れたものとしては、アライグマやアナグマです。他にも、イヌやノネコが映像に収められており、人前に現れないだけで色々な生き物が住んでいるのだと実感させられました。(*詳細は、いたこんニュース第42号より)

手前がアライグマ、奥がタヌキの標本

6.昆陽池ウォッチ

 今回のブログを執筆するにあたって、昆陽池の周りを歩き、どのような生き物がいるのかを観察しました。その1番最初に池を見た時にヌートリアを見つけました。

赤く塗られた箇所が私が歩いた箇所になります。

 昆陽池を歩いて第一に感じたことは、圧倒的にカワウが多いということで、その大半は、日本列島を模した島に密度が集中していました。しかし、昆陽池に行った時にカワウしかいなかったわけではなく、鳥は多く見られました。カワウ以外で目についたのが、アオサギでした。私の住んでいる家の近くにも川があり、見られる鳥の中心はアオサギで、昆陽池に限らず、アオサギは親の顔より見た鳥です。

北九州側のカワウ
これは、ごく一部のカワウ
太平洋側となる箇所から見たカワウ
別の池で撮影したカワウ
アオサギ
魚を狙っていたかのか、かまえているような。

 陸寄りの鳥も見られ、私が見たものの中心は、ハシブトガラス、ハト、スズメ、シジュウカラなどと特に珍しいものというより、どこでも見られる鳥ばかりではありました。しかし、ちょっと面白いなと思ったのが、鳩が2種類見られたことでした。
 日本には、ハトの仲間は複数見られますが、どこでも見られるハトは、「ドバト」と「キジバト」の2種類です。両者の違いは、見た目からも簡単に判別できます。ドバトは全体的に灰色でキジバトは、茶褐色になっています。また、彼らの生態も違いを感じる場面がありました。キジバトは、主に森林の中で、2匹のペアで餌を取っていました。また、茶色味があるので、森の中で隠れるにいい色をしているなと思いました。里山に生息するのに適した体になっているなと感じました。一方のドバトは、芝生などの公園ような「開けた所」で群れていました。ドバトは人が家畜化し、伝書鳩などで利用するために連れてこられた外来種です。それ故、人が近くにいてもあまり警戒していなかったです。キジバトは、人の通るような道には近づかなかったですし、公園の奥の方でひっそりしていました。両者は今では市街地で簡単に見れる存在ですが、どういう生活をしているか、色々見ていくと、全くもの同士と思わされます。

ハトの棲み分け
キジバト
日本在来のハト
ドバト
外来のハトで、変異も多い。
スズメ
シジュウカラ

 一方、水場の方にも目を向けたら、いろいろな生き物がいました。全長30センチ近くになるであろうスッポンも見え、昆陽池の主と言わんばかりに堂々と泳いでいました。ここまでの大きさになれば、天敵は、限られた猛禽類ぐらいではないかと思われます。鳥も多く見られ、一般的なものであればカルガモがペアで餌をとっている所が見られ、カワウの所で1匹で過ごしていたダイサギが見られました。
 水場の生き物で見られて嬉しかったのが、ハシビロガモです。バードウォッチングをしている方とどのような鳥がいるのかなどについて話しているときに見られました。ものすごい激レアというわけではないですが、あまり見られない鳥ということもあり、ラッキーだったとのことでした。マガモと比べるとヘラ状になっている口が広く大きいです。群れているところは見られなかったのですが、単独で水を濾しとって、食べているところは見れました。口がヘラ状になっているだけでなく、ヒゲクジラのようにクシのようなものがはえています。それで植物プランクトンを濾しとっています。

スッポン
こちらが、全長30センチと思われるもの。
ダイサギ
カルガモ
餌をとっているところ
ハシビロガモ

 行った時が、4月の始まりで、動物たちがこれから活動をするということもあり、動物、特に鳥を見るのが中心になってしまいました。しかし、他の生き物が見られなかったわけではなく、カワニナやアメンボなどは見られました。悪いわけではないですが、しょぼかったかなとは思っています…しかし、時期や時間などを変えて昆陽池に行ったら、また見えるものは違うのではないかと希望は感じています。

カワニナ
アメンボ
交尾の真最中

7.まとめ

 以上が、昆陽池の動物編になります。昆虫館と言いつつも昆陽池の自然を展示し昆虫以外でも多くの生き物がいたことが分かります。「昆虫」という存在が抜けても昆陽池が多くの生き物を抱え、自然が豊かであるということが感じられる展示になっていたと思います。
 私が特に印象に残った展示は、やはり猛禽類です。猛禽類の多くは、数を減らしており、保全が求められてるものが多いです。その猛禽類をどのようにして保護するのか?を考えた場合、エサ生物が安定的に生息していること、そのエサ生物の生息環境が安定していることが必要です。猛禽類がこの昆陽池に生息しているということは、この昆陽池の環境が安定していることと環境が豊かであること、つまり、自然豊かな場所であることを示しているのではないでしょうか。書けたことは極一部でしかないですが、昆陽池を生息地にしているのか、一時的な泊まりに使っているのか…と猛禽類と一言で言っても昆陽池でのあり方が違い複雑なものであることが分かります。
 動物は、昆陽池でどのように生活を送っているのかを観察するというもので、どう昆陽池で生活を送っているのか、その様子を切り取って見れただけでも、臨場感がありました。実際の生きている展示個体、標本展示、パネルでの解説とはまた違う魅力がありました。映像を撮影してないこと、ここに持ってこれないことは惜しいですが、これは、実際に展示を見れる人の特権ではないかと思います。
 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。次回、昆虫編をお楽しみに。

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