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今年はとにかく、ピッチに立つ。MF平澤俊輔【Voice】

いわきFCの選手、スタッフのリアルな声をお届け。知っているようで意外と知らない彼らのパーソナリティを掘り下げていきます。トップバッターは頼れる選手会長・平澤俊輔選手の登場です。

▼プロフィール
ひらさわ・しゅんすけ
1994年生まれ。JFAアカデミ-福島→早稲田大
2017年いわきFC入団

■今は個人の能力を上げる時期。だから、決して気持ちを切らさない。

昨年はキャプテン、今年は選手会長を務める平澤俊輔選手。新型コロナウイルスの影響で活動が制限されている今(4月下旬)のチーム状況から語ってもらいました。

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「チームの活動は継続していますが、全員そろった練習はできていません。感染を避けるために選手を少人数のグループで分け、ウエイトトレーニングやアジリティトレーニング、スピードトレーニングなどを行っています。

 みんな毎日、それぞれの課題と向き合っていますね。こんな状況になるとは思ってもいませんでしたが、逆に個人の能力を上げる時期ととらえています。大事なのは、決して気持ちを切らさないこと。7月のJFL(日本フットボールリーグ)開幕に向け、一人一人がいい準備をしていくことです。

 今年のチームは能力の高い選手が集まりました。昨年、地域チャンピオンズリーグで優勝し、JFLへの昇格を果たしたチームをベースに、各ポジションにいい選手が入ってきました。FW、MF、DF、GK。どのポジションもレベルがワンランク上がり、サッカーの質はかなり高いと思います。

 でも大事な試合ほど、個人の能力だけでは勝てません。重要なのは、個人の力に加えてチームが一つにまとまること。昨年、地域チャンピオンズリーグを経験してわかったことです。残念なことに今年のJFLは15試合制になってしまいましたが、試合数が減ったことで、むしろ1試合の重要性は増しました。より短期決戦になる分、チームのまとまり、雰囲気が大切になる。そこで昨年の経験が生きてくるはずです」

■ともに成長したい。だから、いわきFCに来た。

平澤選手は茨城県生まれ。鹿島アントラーズFCジュニアからJFAアカデミー福島を経て早稲田大学に進み、2017年にいわきFCにやって来ました。いわきFCに入る原点となった経験が、JFAアカデミー福島時代に起こった東日本大震災でした。

「あの時は高校1年生でした。グラウンドで練習していた時にいきなり揺れて…。しばらく厳しい生活でしたが、本当の意味で自分の気持ちが変わっていったのは、その後です。JFAアカデミー福島はいったん静岡に移転し、僕もサッカーを続けることができました。そして高校2年、3年となって東北で試合をする機会があり、その時に、以前お世話になった多くの人達が駆けつけてくれて。

 自分達の活躍を楽しみにして、声援を送ってくれる人達がいる。自分達がサッカーをしていることで、元気になってくれる人達がいる。だから僕も自分のためだけじゃなく、福島の皆さんのためにプレーしよう。そんな思いが、徐々に生まれてきました」

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夢はJリーガー。でも、その思いに待ったをかけざるを得ない経験がありました。それは高校3年の時のこと。湘南ベルマーレの練習に参加し、Jリーグのレベルの高さを思い知らされたのでした。

「正直、すべてが違いました。当時はセンターバックでしたが、Jリーガーはぜんぜん違った。プロでやるには、あらゆるレベルをもっと上げないとダメだと痛感させられました。そのため高卒でのプロ入りは諦め、大学(早稲田)に進学しました。

 大学時代もベルマーレで受けた強い印象がずっと頭に残っていて、目線は常にそこでした。ポジションは主にMF。他にも守備的なポジションはすべて経験しましたが、Jリーグでやっていくには、守備に加えてパスやゲームメイクのセンスが必要。でも4年間で正直、Jリーグでやれる力をつけられた気はしなかった。そのためJ3のクラブからオファーをいただいたのですが、当時の自分ではやれてもせいぜい2~3年だろうと思い、お断りしました。

 その一方で熱心に声がけしてくださったのが、いわきFCでした。当時は福島県社会人リーグ所属でしたが、自分の中ですごく大きかったのが、もう一度福島でプレーできることでした。祖父がいわき出身で親戚も多くいますし、いわきは自分にとって第二の故郷のような街。『このチームと一緒に成長したい』という思いで、入団を決めました。

 いわきFCに来て一番違ったのは、攻撃のスタイルです。早稲田のサッカーは堅守速攻。前の2~3人の速い攻めで点を取るスタイルで、ボランチの選手は基本的に守備。でもいわきFCのスタイルは全員攻撃。MFだろうとDFだろうと、ボールを持った選手は後ろにいる選手がどんどん追い越して、前に上がっていきます。攻撃に対する意識の持ち方が、大学時代とはまったく変わりました」

■「チームに貢献できた」と胸を張って言える1年ではなかった。

平澤選手は昨年、キャプテンに就任。チームは東北社会人サッカーリーグ1部で優勝。「全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2019」を無敗で制し、J1から数えて4番目のカテゴリーに当たるJFLへの昇格を果たしました。でも、個人としては納得のいくシーズンではありませんでした。ケガに悩まされ、2019年最大の山場・地域チャンピオンズリーグへの出場は、福井ユナイテッドFC戦1試合にとどまりました。

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「一番の目標だった地域チャンピオンズリーグで優勝できたので、チームとしては素晴らしいシーズンだったと思います。でも個人としては、チームに貢献できたと胸を張って言える1年ではなかったです。肉離れなど筋肉系の怪我が多くて、治ってはまたケガを繰り返し、コンディションが上がらないままでした。

 地域チャンピオンズリーグではウェズレイが累積警告で出場停止になり、最終戦にセンターバックで出る機会が回ってきました。2019年最後の公式戦でしたし、なかなか試合に出られなかった悔しさを晴らしたかった。しかも試合の開催地は、地元・福島のJヴィレッジスタジアム。JFAアカデミー福島時代から縁のあった場所で、応援してくれる人達に1年の感謝を伝えよう。そんな思いで試合に臨みました。でも失点してしまい、結果も引き分けで不完全燃焼でしたね。勝ちたかったです」

■この時期を有効に使って、いい準備を重ねたい。

昨年はMFとDFを兼任した平澤選手。今年も2つ以上のポジションでプレーすることを想定しています。

「いわきFCは攻撃的なスタイルで、DFだろうとどんどん前に出る。だから、どちらのポジションでもそれほど差は感じていません。

 自分には高さや足の速さがない分、大事なのはピンチになる前の準備と、周りの選手とコミュニケーション。それはどちらのポジションでも同じ。人を動かしながら全体のバランスを取り、穴を開けないようにスペースを埋め、適切なポジショニングで相手の攻撃を抑える。そこが、他の選手にない自分の強みだと思っています」

 周囲の選手が入れ替わる中、入団4年目のベテランに近い存在となった平澤選手。選手会長として、そして個人として、今シーズンをどんな年にしたいと考えているのでしょう。

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「実は約2週間前に怪我から復帰したところです。だから、今はケガを繰り返さないための補強トレーニングを行っています。ラッキーとは決して言えませんが、7月に開幕が延期されたことで、ケガをしっかり治す時間を取れました。

 今はこんな状況ですけれども、試合は必ず行われると信じています。ピッチに立って初めてサッカー選手。昨年より選手の人数が減った分、ポジションにとらわれず全員で戦っていかねばなりませんから、MFとDFのどちらでも出られるよう、今のこの時期を有効に使って、いい準備を重ねていきます。

 予定通り7月に開幕すれば、1戦目の開催地は慣れ親しんだJヴィレッジ。すごく楽しみですし、多くの人達に見に来てほしいです。そのためにも、どこのポジションであろうと出場できるよう、いい準備をします」

▼平澤選手をもっと知るための、4つのQ&A。
Q1:好きなサッカー選手は?
A1:FCバルセロナ時代のハビエル・マスチェラーノ選手(元アルゼンチン代表)です。サイズは決して大きくはないけれど、ボランチもセンターバックもできるし、ポジショニングなどお手本になる部分が多いです。

Q2:ランチを一緒に食べる選手は誰?
A2:特定の誰かと一緒に食べることはなく、空いている席に適当に入って、という感じです。意外と一人が好きで、他の選手に声をかけるのはピッチの中だけ。ロッカールームや食事の時は超おとなしいです(笑)。

Q3:練習後やオフはどんな風に過ごしている?
A3:今は毎日、家で本を読んだり、映画を見て過ごしています。自粛前のオフは、車できれいな花の咲いている公園に行ったりしますね。あとはスーパー銭湯ですね。よく行くのは「いわき健康センター」。サウナと水風呂の交代浴で体をケアします。

Q4:夕食は外食派? 自炊派?
A4:今年から、練習がある日は必ず自炊です。栄養士の田中さんにアドバイスをいただいて、なるべくその通りに調理しようと思っています。何を作るか迷った時は、とりあえず材料全部入れて炒めますね(笑)。あとはカレー。3日分ぐらい作って食べ続けます。大ざっぱなものばかりなので、料理の腕はたぶん上がっていません。でも食材を自分で選ぶと、意識が変わります。午前と午後の2回練習した日は疲れているので、帰ったら座らずに台所に直行。一度ソファーに座ると、もう動けなくなっちゃうので。オフの日は外食もしますよ。喜多方ラーメンが大好きで、普段は食事に気を使っている分、羽を伸ばすこともあります。

次回は選手会副会長の新婚さん・MF日高大選手の登場です。お楽しみに!

(終わり)

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