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「川渕くん」のこと【平澤俊輔営業日記】

昨年限りで現役を引退し、今年からフロントスタッフとして奮闘する平澤俊輔が、今の気持ちを綴ります。

▼プロフィール
ひらさわ・しゅんすけ

1994年生まれ。JFAアカデミ-福島→早稲田大
2017年いわきFC入団
2021年現役を引退し、フロントスタッフに転身

皆さんこんにちは!

最近、オフィスで電話をしていると、周りからクスクスと笑い声が…。

なぜ笑っているのか聞いたところ、どうやら電話対応が、いわきなまり? 双葉郡なまり? になってきているようです。

自分としては標準語で話しているつもりが、かなりなまっているみたいです。

実は私の祖父はいわき出身で、私自身も茨城県北部の出身です。そのため浜通り地域の言葉に耳馴染みがあり、聞き取ることはできていました。でも、まさか自分の言葉がなまっているとは…。

それだけこの地域に染まってきた、ということですね!
うん、ポジティブに捉えましょう!

さて、いわきFCは開幕3連勝という素晴らしいスタートを切りました!

毎節前後のスポーツナビのレポートやnoteの田村監督のコラム(これを毎節後に書いている監督は本当にすごい…)を読みながら、いちファンとして外から見る視点と、チーム関係者として内側から見る視点のそれぞれで、楽しませてもらっています。(↓皆さんもぜひ監督のコラムを読んでみてください)

今年はチームの雰囲気がいいですね! チーム内には激しい競争がありつつ、いざ試合になったら勝利に向け、お互いを認め合う。そんな強固な一体感を感じます。

負けて得ることもありますが、ベストは「勝ちながら成長する」ことだと思います。それが今のチームにはできているし、みんなが現状に満足していないことが、外から見てもひしひしと伝わってきます!

まあチーム内のことについては、監督のコラムを(必ず)読んでいただくとしましょう!

私からは、以前少しだけ触れた前任のことについて、お伝えしようと思います。

突然ですが、質問です!

皆さんは「いわきFCの顔」といえば、誰を思い浮かべますか?

大倉社長? 田村監督? 山口大輝キャプテン? それとも、皆さんそれぞれの推しの選手?

サポーターの皆さんやいわきFCをよく知っている人であれば、思い浮かぶのはそういった面々ではないでしょうか。

では、いわきFCを支援して下さっているパートナー企業様の皆さんはどうでしょう。

パートナー企業様にはお仕事や所在地の都合上、試合を観ることが難しい方々もいらっしゃいます。チームのビジョンやミッションをご理解いただき、賛同して支援して下さっていますが、私達の一番の商品である試合になかなかご来場いただけない。仕方のないことですが、そういった事情でいわきFCの実態が見えづらくなっている面があります。

ここからは、上記のことを頭の片隅に入れてもらった上で読んでいただきたいと思います。

私の前任は、川渕くんという人です。私と同い年で、2018年からいわきスポーツクラブの営業職として働いていました。川渕くんはいわきとは縁もゆかりもない他県出身。サッカーの名門高を卒業した後、大学を経て海外でプレーしていました。つまり、もともと私と同じサッカー選手でした。

そんな彼がどんな経緯で会社に入ってきたのかは…すみません、知りません(笑)。

彼の退職前の1カ月は、引き継ぎのため、四六時中一緒に行動しました。私は引退直後だったので、当初は

「パートナー企業様は自分のことを当然知ってくれているだろう」
「『ファンでした!』『会えてうれしいです!』なんて言われたりして…」

という淡い期待を胸に、挨拶回りに出かけていました。

ところが、パートナー企業様の皆さんがまず声をかけるのは川渕くんでした。

「川渕くんが辞めちゃうのは寂しいなぁ」
「川渕がいなくなって静かになるわー(※もちろん冗談です)」
「たまにはいわきに戻ってきなよ!」

川渕くんが私のことを「元いわきFCの選手です」と紹介しても、皆様が顔を向けるのは川渕くんの方ばかり(※もちろん、私を知っていて歓迎して下さった人もいらっしゃいましたが…)

ここで私は気づきました。

いわきFCを支援して下さっている皆さんで、チームのことを知っていたり、試合を観に来て下さっている方は意外と少ないのだなぁ、と。

ではなぜ、いわきFCを応援して下さっているのでしょう。

それは、川渕くんの人柄が素晴らしいから。一緒に行動してわかりましたが、彼は取引先の皆さんに、とにかくかわいがられていました。

冗談を言い合う様子を見たり、コロナ前の会食の楽しかったお話を聞いたりすると、皆さんが「川渕くんが営業だから」いわきFCを支援してくれているのだと、私は思いました。

彼は家庭の事情でやむを得ず退職しましたが、パートナー企業様の皆さんにとって、いわきFCの顔は川渕くんなのです。

村上アナリストは「会社を支えていたのは明らかに川渕くん」と分析します(試合の分析に集中しろ、と言いたい笑)。彼は何事にも一生懸命。それゆえいじられますが、その一生懸命さが伝わって皆さんに愛される人でした。そして彼自身も「仕事を通じて、いわき市や双葉郡の人達がものすごく好きになった」と語っていました。

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私は引退して、クラブの内情を知る立場になりました。試合の裏での仕事やお金の動きなど、表からは見えない仕事を見て、いろいろなことがわかりました。ピッチで選手が躍動するために、運営スタッフそれぞれがそれぞれの立場で多くの労力を注いでいる。そのことを今、しかと実感しています。

そういえば3月28日のホーム第2戦で、いわきFCアカデミーU-15の選手達が職場体験として、試合運営の仕事を手伝ってくれました。

彼らは試合を観ることはできませんでしたが、たくさんの運営スタッフがそれぞれの仕事をして試合が成り立っているということを、知ってくれたのではないでしょうか。

彼らが今後もサッカーを続けて行く中で、裏方の人達がどのような想いを持って働いてくれているのかを理解して戦ってくれるはず。それだけでも、大きな意味があったと思います。

話が少し脱線しましたが、川渕くんと一緒に挨拶回りができて本当によかったです。彼のいわきFCやこの地域に対する想いを肌で感じることができ、率直に「負けたくない」と思いました。

私には彼のような、懐に飛び込める愛嬌はありません。でも私も自分なりに、いわき市と双葉郡の皆さんとの関係性を築き上げていきたいと思っています。

(おわり)

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