いわい

今日は。歴史研究者(自称)の岩井と申します。新刊『一九四四年の東條英機』『渡辺錠太郎伝…

いわい

今日は。歴史研究者(自称)の岩井と申します。新刊『一九四四年の東條英機』『渡辺錠太郎伝』。平成29『多田駿伝』(小学館)でデビューし、「第26回山本七平賞奨励賞」を頂きました。専門(?)は日本近現代史。読書、猫が好き、強迫性障害です。他著『永田鉄山と昭和陸軍』(祥伝社)。

マガジン

  • 自民党結成ーーー「自主独立」を目指して

    戦後日本のかたちを作った与党・自民党の結成までを、人物中心に描いていきたいと思います。

  • 青年将校――安藤輝三の二・二六事件

    「第四回宮帯出版大賞」にて入選した拙稿をまとめました。まだ知処女作出版前で色々拙いところはありますが、暇つぶしにでもどうぞ。

最近の記事

自民党結成–––第四章 政局の混乱

※画像は国立国会図書館「近代日本人の肖像」より 二つの短命政権①−−−片山内閣吉田茂率いる日本自由党は昭和二十二年四月の選挙で社会党に敗北し、与党の座から降りることになった。総辞職した吉田内閣の後をうけて組閣したのは片山哲、我が国初の社会党政権の誕生である。安定多数とはいえないが、社会党が政権を取るという点では、画期的なことではあった。片山自身、この時の選挙について、 <ここで初めて、名実ともに戦後にふさわしい、生まれ変わった日本の政治体制が誕生することになったのである>

    • 自民党結成–––第三章 吉田茂と鳩山一郎 その2

      ※画像は国立国会図書館「近代日本人の肖像」より 三つの約束前回記述したように、組閣目前で公職追放の悲劇にあった鳩山は、党を譲るに当たって「三つの約束」を吉田茂と結んだ。 <金はないし、金作りもしないこと、閣僚の選定には君(※筆者注、鳩山のこと)は口出しはしないこと、それから嫌になったら何時でも投げ出すこと>(吉田茂『回想十年 1』) 吉田本人の言によれば、この時は早くやめるつもりで引き受け、結局「四囲の情勢に押されて」(同書)引き受けたということだが、やはり権力の座にい

      • 自民党結成––−第二章 吉田茂と鳩山一郎 その1

        ※画像は国立国会図書館「近代日本人の肖像」より 「ワンマン宰相」のあせり昭和二十八年二月二十八日、その事件は起こった。この日は第十五会国会衆議院予算委員会が行われており、総理大臣の吉田茂と、社会党右派の西村榮一の論戦が行われていた。 ここで、吉田は西村に対して感情的になり、うっかり「バカヤロー」と発言してしまう。字面だけ見ると吉田が怒鳴りつけたように見える(またその方が「吉田らしい」とも言える)が、実際は小声でつぶやいたのがマイクに拾われた、ということらしい。西村はこれに

        • 私の読書の話

          はじめに「読書論」などというほどきちんとした方法論ではありませんが、自分がやっている読書の方法、本についての考え方などを少し述べてみたいと思います。 「傍線」は引かない「読書論」の本を読むと、「傍線を引く」ことの効用を説くものが結構あります。つい最近も、ネット記事で「読書のコツ」として線を引くことを勧めたものを読みました。私も、かつてそういう本を読み、チャレンジしてみたことが一度あります。 しかし、二冊ほどの本に赤線を引いてみて、すぐにやめました。うまく表現する事はできな

        自民党結成–––第四章 政局の混乱

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        • 自民党結成ーーー「自主独立」を目指して
          5本
        • 青年将校――安藤輝三の二・二六事件
          4本

        記事

          昭和史の余話として。

          はじめにここでは、私が執筆していく過程で見つけた話で、本に入れられなかったり本筋とあまり関係ない話でちょっと面白いな、と思ったものを紹介させていただきます。 ある東條側近の話大東亜戦争中、最も長い期間首相をつとめたのは陸軍大将の東條英機です。彼は開戦を決定した時の首相でもあり、戦後はいわゆる「A級戦犯」として処刑されてしまいます。 その東條には、いわゆる「側近」と呼ばれる特定の人物がいました。特に東條家にも信頼されたのが秘書官の赤松貞雄、「黙れ」事件で有名な武闘派の佐藤賢

          昭和史の余話として。

          近現代史作家と無呼吸

          はじめに※以下は、個人的体験に基づく見解であり、病気の正確性について保証するものではありません。睡眠時無呼吸症候群や強迫性障害の治療については、専門医に相談してください。特にオチはありません。 「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)という病気をご存知でしょうか。睡眠中、10秒以上の無呼吸が発生し、それが一時間のうち5回以上発生する症状の事をこう呼びます。多くの場合、いびきを伴うらしいです。 いびきだけでも家族などの同居人にとっては迷惑ですが、それ以上に本人にとって悪影響を及ぼす

          近現代史作家と無呼吸

          自民党結成––−第一章 岸信介の復活

          「容疑者」巣鴨を出る昭和二十三年、クリスマスイブ。まだ日本の庶民に「クリスマス」というものが根付く前のことだ。一人の男が東京都巣鴨拘置所を後にし、「シャバ」へと戻ってきた。彼の名は、岸信介。戦前は有能な官僚として腕をふるい、大東亜(太平洋)戦争開戦に際しては、東條英機内閣の閣僚に名を連ねていた。 しかし後に東條とは対立し、その内閣総辞職のきっかけをつくった人物でもある。だが、彼もまた、東京国際軍事裁判(東京裁判)のいわゆる「A級戦犯容疑者」として逮捕され、スガモ・プリズンに

          自民党結成––−第一章 岸信介の復活

          自民党結成–––「自主独立」をめざして

          ※本記事は、一応連載するつもりです(週に一度ぐらい)。反応が良ければ、書籍になるかもしれません。以下、「だ、である調」で書き進めます。編集者の手を通したものではないので、多少の間違いはお許しください。 令和二(二〇二〇)年九月十六日、通算、連続ともに我が国憲政史上最長の在職日数を誇った安倍晋三内閣は総辞職した。後を継いだのは、第二次安倍政権下で長く官房長官をつとめた菅義偉である。菅は第九十九代総理大臣であると同時に、第二十六代自由民主党総裁でもある。自民党が安定的な多数を誇

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          宮城事件とある歴史学者–––「諫死」の論理

          前回、宮城事件と歴史学者・平泉澄との関係について簡単に述べてきました。今回は、事件首謀者を支えた平泉のイデオロギーと、その影響について述べていきたいと思います。表記などは前回記事と同じ基準です。前回記事は、こちらから。 忠誠の対象は「天皇」「平泉史学」にとって絶対的な忠誠の対象は「天皇」でした。平泉にとってそれは戦後も変わらず、少年向けに書かれた日本通史『物語日本史(中)』(単行本原題は『少年日本史』)にその思想がよく現れた一節があります。時は鎌倉時代、後鳥羽上皇が鎌倉幕府

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          宮城事件とある歴史学者–––「諫死」の論理

          吾輩の猫たちである。

          厳密に調べた訳ではありませんが、昔から物書きには猫好きが多いような気がします。というより、家で仕事をしている身にとって、動物を買うなら散歩の必要がない猫の方が相性がいいようにみえる、ということかもしれません(もちろん、犬好きがいないというわけではありません)。 私も一応、本を書いて収入を得ている身であり、家には猫が二匹います。飼っているというより、猫好きにとっては「一緒に暮らしている」といった方がピンとくるでしょう。そして大多数の猫好きの例にもれず、私も「猫自慢」が好きです

          吾輩の猫たちである。

          宮城事件とある歴史学者–––平泉澄の敗戦

          毎年、この八月になると大東亜(太平洋)戦争に関する書籍が出版されたりテレビ番組が放送されたりします。それらの多く、特にテレビのドキュメンタリーなどは悲惨な色を帯びた暗いものになりがちです。膨大な犠牲者を出し、その結果敗戦という結末に至った以上、やむをえないことでしょう。 ではその七十五年前の八月十五日、宮城(皇居)で起きたクーデター未遂事件についてはご存知でしょうか。こちらも、ノンフィクション作家の半藤一利氏が書いた『日本のいちばん長い日』(文春文庫)や同作の映画化などでご

          宮城事件とある歴史学者–––平泉澄の敗戦

          安倍首相批判で最低限弁えるべき事実–岸信介について−

          ご存知の通り、現・安倍晋三首相は元首相岸信介の孫にあたります。そして、その事実をもって「安倍晋三はA級戦犯の孫」と、批判的な文脈で語る一部の人々がいますが、これはまちがっています。 単純な事実として岸信介はA級戦犯ではありません。岸はあくまでも「容疑者」であり、「犯人」ではないのです。起訴されていません。岸・安倍についてどれだけ嫌おうとも自由ですし、極東国際軍事裁判についてどんな考えを持っていてもいいのですが、事実ではないことをいうのは「嘘」です。 「いや、岸のしたことは

          安倍首相批判で最低限弁えるべき事実–岸信介について−

          「史料」についてーその③ ネットで史料を読む。

          ※写真は「アジア歴史資料センター」ウェブサイトのトップページ 近年、ネット上でも多くの「史料」が公開されるようになってきました。以前であれば、刊行された史料以外は原本を見るしかなく、地理的・時間的制約でそういった事が不可能な人はおおくいたと思われます。 しかし、現在では多くの公立機関(施設)で貴重な史料の原本がネット上にアップロードされており、ネット環境さえあれば気軽にアクセスする事が可能となっています。 もちろん、近代史の膨大な史料の中でアップされてるものはごくわずか

          「史料」についてーその③ ネットで史料を読む。

          「史料」についてーその② 二次史料

          前回、一次史料について簡単にお話しました。次はそれ以外、つまり「二次史料」と呼ばれるものについてお話します。 回顧録と自伝「二次史料」で代表的なものといえば、「回顧録(回想録)」や「自伝」といったものがあげられます。この二つは似たようなものではありますが、強いて違う点をあげれば「回顧録」がその人の公的な仕事を振り返るのが強いのに対して、「自伝」はもう少し私的な生活や生い立ちについての分量が多いということでしょうか。ただ、いずれもはっきりとした区別は難しく、曖昧なものがおおい

          「史料」についてーその② 二次史料

          「史料」についてーその① 一次史料

          「歴史学」「史学」の基本となるのは、歴史について書かれた「史料」です。「資料」と書く人もいますが、歴史については「史料」です。この「史料」ついてわかりやすく解説してあるのが、国立国会図書館のデジタルライブラリーの「歴史史料とは何か」です。以下同HPより。 <さて、過去に存在した事象を把握し筋道を立てるのに役立つ材料を「史料」と呼ぶ。紙に書かれた文献史料がすぐに頭に浮かぶが、口頭伝承、金石文、絵画、録音、映像(写真、動画)など様々な種類がある。遺物・遺跡なども広い意味の史料で

          「史料」についてーその① 一次史料

          皇位継承を考えるー立憲民主党・山尾志桜里氏の奇妙な論理

          参院選終了後、立憲民主党所属の山尾志桜里氏が「論座」ウェブ上において 「安倍総理!皇位継承の議論をすぐ始めましょう・上」と題する論考を掲載しました。山尾氏はなにかと話題に事欠かない人物ですが、この論考もまた奇妙な論理に満ち溢れており、国政で政治を語る人間が、こんな間違った認識で皇位継承などと重大なことを語っていいのかと、不安になります。以下、順を追って山尾氏の論を批評していきましょう。 1.「男系男子」を軽視する態度山尾氏は言います。 <新たな天皇陛下の即位した現在、皇

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          皇位継承を考えるー立憲民主党・山尾志桜里氏の奇妙な論理