論文 - 中動態からみた「ブランド」と当事者ブランディング
概要
ブランドは歴史のなかでBRAND(焼き付ける、企業、能動態)/BRANDED(焼かれる、消費者、受動態)という関係を前提としてきた。しかし、言語学でもその存在が確認されているもうひとつの「態」である「中動態」からブランドを照射すると、今までとは異なった様相が見えてくる。能動態/受動態の関係は「する、される」に限定されるが、能動態/中動態の対立は、主語(主体)が過程の外にあるか内にあるかが問題になる。ただし、歴史的に中動態表現が消滅していく過程で、ブランド(BRAND)という概念は能動/受動関係に限定され、人々の思考や行動もそれに影響を受け、現在に至っている可能性がある。
特に20世紀は、大量生産/大量消費が進行し、ナショナルブランドの登場もあり、企業対消費者が能動対受動の関係として固定され、広告代理店やブランドコンサルティングファームなどがブランドビジネスを専門化したことで、さらに能動/受動関係が強化されたものと考えられる。
一方で、消費者、企業の社員もブランディングに積極的に関与する時代となり、単なる受動者ではなくなりつつある。加えて、医療における「コンコーダンス」(調和、一致)、福祉領域における「当事者研究」などにみられるように、<医師、専門家>対<患者、当事者>の関係にも大きな変化が起きており、患者や当事者に主権が移行しつつある。これらの動向にみられるように、ブランドの領域でも、企業が常にブランドの能動者であるという前提の見直しや、消費者や社員が当事者としてさらに積極的にブランドに関与していくなど、新たな姿勢の転換が双方に求められる。
キーワード
中動態 当事者研究 原体験 パーパス アドヒアランス コンコーダンス
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この論文は、日本ブランド経営学会(2022年9月)向けに書かれたものです。フルペーパーは以下からダウンロードできます。
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