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「先日の大風の止むころより、極楽鳥の羽がこのような命を宿したのです」 親王の言葉に、麗和…
奥の間に導かれた円儀が目にしたのは、人間の頭ほど大きさの、七色の光彩を放つ繭だ。かたちは…
剛毅な性格の円儀でも、麗和の死はさすがにこたえた。魂を抜かれたように床に臥する日々を送る…
麗和の声が、ここではない何処か別の場所より発せられたかのように聞こえる。天を飛ぶ神鳥のさ…
小屋の外では風が吹き荒れ、木々を揺さぶっていた。円儀に抱きかかえられた麗和は、ただ暗闇の…
不意のひと言に虚を突かれ、言葉を失った円儀を尻目に、麗和はなおも続ける。 「山海経に五彩…
「苦労して日本まで戻ってきたんだから、こんなみじめな生活とはおさらばだ。お前に美しい衣を着せて、うまいものを食わせてやろう。大陸の鳥の羽を継ぎ合わせて作った、あの偽物を、みこ法師は極楽鳥のものと信じたのだ。出家の身とはいえ、元は帝になるはずだった人間だ。たんまり金や財宝を持っているはずだ。望外の褒美がいただけるだろうよ」 「みこ法師さまにとって、極楽鳥の羽とはそんなに大切なものなのですか」 「ああ、みこ法師の天竺かぶれは只事じゃない。どういうわけかは知らんが。もっとも、
風の強い晩だった。やかましい虫の声が、この夜は少しも聞こえなかった。円儀の暮らす粗末な小…
そうこうしているうちにも、またいちだんと月日は進み、親王が三十歳を迎えた年の、秋の日のこ…
後年にいたっては、政争に敗れた王家の人間が、厄介払いとして仏門に入る、といったことが多々…
鏡子のいる天竺へ行ってみたい、という願いは、つねに親王の心のうちにあり、青い炎となって静…
年を取ることのなくなった鏡子のみずみずしい乳房に顔をしずめながら、親王は問いかける。 「…
年月を経た大樹たちが光をさえぎっていた。森は暗く、深海の静けさが領していた。人々は森をお…