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円儀

そうこうしているうちにも、またいちだんと月日は進み、親王が三十歳を迎えた年の、秋の日のことである。ひとりの僧が、親王のもとを訪れた。筋骨隆々、額にうなぎのような太い眉がはしっていて、外見からはとても僧侶とは思えない無骨な大男だ。床にどしんと腰を落とし、野太い声で言い放った。

「わたくしは円儀と申す」

聞けば唐土にて十余年の月日を過ごしたのだという。

「唐土だけではございません。拙僧はさらなる研鑽のため唐を発し、はるか西方のチャンパ王国を訪れたこともあるのです」

これは期待できそうだ、と親王は目を輝かせ、いつものように天竺について尋ねた。円儀はからからと笑いながら答える。

「さすがにわたしも、天竺に行ったことはありません。しかし、旅の途上で出会った人より、このようなものを譲り受けたのです」

円儀は、懐より小さな箱を取り出だした。そして神妙な手つきで蓋を持ち上げる。箱の中からあらわれたのは、七色の輝きをもつ鳥の羽だった。

「これこそ、極楽鳥の羽です」

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