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唐のころ、都、長安にて商いを営む子墨という男がいた。ある日、子墨は木の陰に佇む面妖な動物…
むかしむかし、太郎という大悪人がいました。猫のためにおいておいたご飯に、唐辛子をいれたり…
むかしむかし、あるところに、古くから人々の喉を潤してきた井戸がありました。底からしみ出し…
石畳のうえにはねこのうんちがあったが、やがて乾燥した。 その間、私は旅をしていた。佐世保…
詳しい事情は置いといて、いま自宅で落ち着いてnoteを書ける状況じゃないのである。仕事から帰…
雲行きが怪しくなってきたと思ったら、つぎの瞬間には雨が落ちはじめ、どんどんと勢いをまして…
兄の浩二は西に行った。弟の重道は東に行った。西には明日はなく、昨日しかなかった。生物は暗い闇の底から、楽しげに過去を振り返っていた。浩二は聞いた。 「生き物たち、生き物たち、明日を見ることなく昨日ばかり振り返っていて、腹が減らないか」 生き物たちは答えた。 「明日がなくともなんとも思わぬ。私達は郷愁を食べて腹を満たしているのだ」 東には昨日はなく、明日しかなかった。生物は光に満ち満ちた雲の上で、陰鬱に未来を見つめていた。重道は聞いた。 「生き物たち、生き物たち、昨日
【2015年に実施した、長野県上伊那郡野自利左部神卦村の民話の調査より】 これもなが、いい日…
おじいさん犬のトニーが知っていることといえば、10年昔のことだ。あのころ、トニーの家の隣に…
今日はたらふく煮え湯を飲まされたな。しかし、。鱈だというではないか。横っ腹にたらふく、だ…
「先日の大風の止むころより、極楽鳥の羽がこのような命を宿したのです」 親王の言葉に、麗和…
奥の間に導かれた円儀が目にしたのは、人間の頭ほど大きさの、七色の光彩を放つ繭だ。かたちは…
剛毅な性格の円儀でも、麗和の死はさすがにこたえた。魂を抜かれたように床に臥する日々を送る…
麗和の声が、ここではない何処か別の場所より発せられたかのように聞こえる。天を飛ぶ神鳥のさえずりが、風にのって遥か下界の円儀のもとへ届く。床に入って夢の世界へと向かっていくときのような、自分が自分でなくなる瞬間に感じられる、あの不思議な心地よさ。 本当に自分は女を抱いているのか、いや自分自身が果たして本当にこの夜空の下に存在しているのかすらわからない。自分を構成していた原子が風と混ざり、大地と混ざり、渾然一体とした何かへと変わってゆく。 しきりに首を振って正気を保とうとして