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【感想】だが、情熱はある 1-4話

 普段はテレビなんてつけないのに、その日は家に友だちが来ていて、何かしら音が欲しかった。たまたまつけたテレビを垂れ流していると、画面にはボロいアパートの中でふざけ合う人が映されていた。

 しゃべり方、若林さんだ。一瞬でわかって、その隣が春日さんであることもわかった。え、でも違う。これ、演技? 疑問に思って検索する。今年の春のドラマ。オードリーの若林さんと、南海キャンディーズの山里さんをモデルとしたドラマがやっていることを知る。「だが、情熱はある」。

 完全にしゃべり方が同じだと思った若林さんの役はKing & Princeの髙橋海人くんであることを知り、山里さんの役はSixTONESの森本慎太郎くんだとわかり、ジャニーズが芸人さんの役を! と驚きを隠せなかった。
 SixTONESにハマるきっかけが、ZIPでやっていたドラマ「泳げ! ニシキゴイ」での森本慎太郎くんの演技だったので、ちょっと見たいと予告をYouTubeで見て、もっと見たいと思い、1-4話を一気見した。

 アイドルのオーラを消すのがうまいなぁ、と二人の演技を見ていて思う。相当研究したんだろうか、本人にしか見えない。そして、ただの再現ドラマではなく、ドラマとして構成がしっかりしている点も好きだ。

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何者かになりたいんです
何者かになって、モテる自分を、少し好きになれそうなんです

「だが、情熱はある」第1話より

 お笑いが好きとまでは言えないが、年末年始とか、テレビでやっていると見てしまう。きっと私はどこかで「心の底から笑いたい」って思っている。何にも縛られず、日常のストレスから解放され、フラットな状態で笑っていたい。それが、お笑いを見たいと思う理由。

 誰かを笑わせるって、とてつもなく難しいことだ。「面白い」は一種の言語のようなものだと思う。「面白い」という曖昧なモノサシの上で、芸人さんは誰かを笑わせる。違う場所で生き、異なる年代を生き、さまざまな背景を持つ人々に、どこかで共通する「面白い!」を呼び起こす。

 お笑いを見て安心するのは、その他一般になれるからだと思う。私は私の人生を、何者かになりたくて生きているけど、それをずっとするのは難しい。お笑いを見ているときは、芸人さんが提供する「面白い」の空間に、何者でもない人として居られる。

 芸人さんは、先にあげた山里の言葉のように「何者かになりたい」と思って芸人をやっているのだろうか。モテたいでも、有名人になりたいでも、お金が欲しいでも、あくまで自分のためにお笑いを続けているのかもしれない。

 そんな「自分のためのお笑い」に、私は何より救われている。「あなたのためにやってあげる」お笑いは、きっと笑えない。「あなたのため」というのは、相手を何者かにさせる行為だと思う。"仕事をしている"あなたのため、"家族がいる"あなたのため、"友だちと来てくれた"あなたのため……。
 そんなお笑いは、心の底から笑えない。それに当てはまらない自分がいれば、笑ってはいけない気がしてしまうから。それより、「面白い自分を見てくれ!」、そんな姿を見ていたい。

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 そして演技が光る二人にも注目したい。二人のバックグラウンドにもきっと、「何者かになる」要素があるのだろう。King & Princeに残る髙橋海人くんと、デビューまでの道のりを背負う森本慎太郎くんが演じることによって光る部分もまたあるはずだ。

 髙橋海人くん演じる"若林"が、森本慎太郎くん演じる"山里"が、何者かになろうとする姿が愛おしくて、きっと今期はこのドラマを見てしまうだろうな。

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