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「報われない努力もあるんだ」

内村航平選手が受けたインタビューで仰った言葉のひとつ。最初は率直に、悲しかった。その練習や試合、家族を含めて日本中にその努力を見せてきた。世界で戦ってきた彼は私と同年代で、私が遊んでいたときも、おそらく頑張って練習していただろうし、私が頑張って練習をしていたときは、彼は遊んでいたかも知れない。でも、私が社会に出て働いたり遊んだりしていたとき、彼は絶対に頑張って練習を続けていたと思う。体操という競技ただひとつを。

好きなことでも好きでなくても、始めたことを続けること。さらにそれを仕事にすること、特に運動競技を選択できることは、誰にでもできることじゃない。私は何かを諦めたりしながら、選択肢を絞った結果が現在の姿なのは分かっていて、彼もそんなことがあったかも知れないけれど、ただひとつを極めてきたその姿がとても誇らしい。だからこそ、日本中で彼が頑張っている姿を、全く見たことがない人はおそらくいないと思っています。

ドラえもんのCMでは大人になった出木杉君の役。頑張って努力してきたからこそ「キング」とまで言われて、申し分のない活躍をされてきた、そんな彼の言葉はいつも正直だった印象があります。今回の言葉には、自分への言葉と、未来の後輩への言葉、これまで応援してきたり、彼を知っているだけの私たちにも向けられていて、計り知れない重さが乗っていました。

体操競技を突き詰めてこられて、やりきってこられて、だからこその言葉なのかは本当の意味では分からないし、消極的とはまったく思えない。「僕は多分もう主役じゃない」とまで言っていた彼なので、体操競技とどう関わっていかれるのかはまだ分かりません。けれど「心配いらないのかな」「彼らが主役ですね」とこれからの後輩の未来の姿を見据えて、あんな風に笑顔でインタビューを終えた姿にこそ、心を掴まれた気がしました。

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