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小説/【タイムレコード0:07】黄昏時の金平糖。

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タイムレコード0:07というアカペラグループの、宵宮氷、黄昏わらべ、師走わさび、涼路わた、暁愛華葉、木暮葉凰。少年少女らが出会ったとある夏の物語。
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#天体観測

小説/黄昏時の金平糖。【Ves*lis】#11 もう一人

暁愛華葉 6月3日 金曜日 午前6時

「─みんなー、おはよー」
「、、、ん?朝、、、?」
 アラームを止めて、弟妹たちを起こした。そしたら、魁斗が起きてくれた。
「朝。他はやっぱ起きないね」
「な。でもぐっすり寝てるのは良いことだよ」
 そう言って、弟妹を起こす。
 魁斗は起きるのが早いが、他の妹弟は遅い。
「おーい、若葉ー、翔瑠ー」
「鞠音も。遅刻するぞー」
「んん、、、?うるさいよ、魁斗、、

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小説/黄昏時の金平糖。【V*erno】#16 君のためのスタートライン

黄昏わらべ 6月3日 金曜日 午後4時10分
     愛知県 夏露町 黄昏家 わらべの部屋

「─おお!」
 何度も聴いていたが、俺はまた感動した。本当に、素敵な曲だ。
「まずは、準備運動からか。何するか分かる?」
「ん?あ、えーと、腹筋?」
 感動してるだけじゃいられない。今から、あいつよ心に響くような歌を完成させるのだ。
「そうだな。あと、背筋」
「それだけでいいの?」
 数年前まで習ってい

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小説/黄昏時の金平糖。【V*erno】#17 特訓

黄昏わらべ 6月3日 金曜日 午後4時30分
     愛知県 夏露町 黄昏家 わらべの部屋

「あぁぁぁぁ、、、」
 息切れしながら、小さく悲鳴を上げて倒れた。
 バスケを辞めて2年でこんなに体力が落ちるとは。でも、体力テストには響かなかったけどなぁ。
「わらべお疲れ」
 笑いながら俺の隣に座る葉凰。

「ここで疲れてたら次は続くのかー?」
 なっ、と思った。
 多分俺、煽られてる。
「まだまだ

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小説/黄昏時の金平糖。【V*erno】#18 思い出

黄昏わらべ 6月3日 金曜日 午後5時30分
     愛知県 夏露町 黄昏家 わらべの部屋

 、、、どれだけやっても、やはり上手く歌えない。
 入るタイミングを教えてもらっても、いつの間にか遅れていってるし、音程はバラバラだし、上手くできたと思ったら歌詞が飛ぶし、もうかれこれ30分ほど歌い続けた。
 葉凰がお手洗いに行っている間、この部屋には俺一人だ。

 ふざけているわけじゃないし、むしろ早

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小説/黄昏時の金平糖。【V*erno】#19 アカペラ

木暮葉凰 6月3日 金曜日 午後5時40分
     愛知県 夏露町 黄昏家 わらべの部屋
 
「ただい、、、ん?」
 さっきまで元気だったわらべが、綺麗な体育座りで、しかも顔を伏せている。
「おーい、わらべー?」
「あぁぁぁぁ、、、」
「大丈夫そ?」
 わらべは力なく唸って、全身の力が抜けたように、膝に頬を付けた。

「、、、音楽ってさぁ」
「?」
 小さな声で低く唸るものだから、なかなか聞き取

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小説/黄昏時の金平糖。【タイムレコード0:07】#23 六人の声、二人の感動

師走わさび 6月3日 金曜日 午後10時00分
        愛知県 夏露町 からふるとまと

「もう一度君に会おうとして─、、、♪」
 音源は学校に持っていけないから、アカペラで歌うしかなかった。
 私は歌をぴたりと止める。
 ─なんか違う。
 というかさっきから何してるんだろう。テスト勉強を中断して。期末テスト、大事なのに。
 それでも手より口が動く。

 と、コンコンとノックの音が聞こえて

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