たかがメルマガが、B2Bマーケに与える影響のデカさを君は知っているか?
おはようございます、iCAREという会社でマーケターをしているたけC(→twitter)といいます。
「たけCさん、メルマガって時代遅れじゃないですか?」
良い質問ですね。はい、私デジタルマーケの世界を14年ほど歩いていますが、もっとも売上に貢献してきたマーケティング手法がメールマガジン(通称メルマガ)なんです。
デジタルマーケに実務で携わっていない人からすると「今さらメルマガ?」と思うかもしれませんが、実は今もっとも熱いマーケティングトレンドがメルマガといっても過言ではないんですよ。
今日は特にB2Bビジネスに絞って、メルマガがビジネスに与える影響の大きさをお伝えしましょう。
※このエントリはiCARE Advent Calendar 2021 の14日目です。
というか、メルマガに取り組まないこと自体がリスク
メルマガをちゃんとやれば売上にインパクトあるよー
とか、
メルマガってTheModel型のセールスにぴったりなんだよー
みたいな、メルマガのメリットに関する話はもう巷に溢れかえっているので特に取り上げる必要はないかなと思います。
もしメリットが知りたいなら後半のCarelyでの事例から読み始めてみてください。
一方で、
もしB2Bビジネスなのにメルマガに取り組み始めていないなら、事業の存続リスクであることをマーケターや経営者は知っておくべきなんです。
なぜ、メルマガをしないことが事業リスクなのか?情報発信するメディアという観点から、メルマガがないと情報発信が難しいことを解説しましょう。
Cookie規制、さらにプライバシー強化は続く
広告プラットフォームのアンコントローラブル化
SNS・オウンドメディアでは100%伝えられない時代
① Cookie規制、さらにプライバシー強化は続く
デジタルマーケティング界隈でのホットトレンドである「Cookie規制」。これによって何がまずいのかと言うと、実はCookie規制自体はそんなに危なくないです。
よく言われるのが、「ターゲティング広告できない」とか「CVの成果計測ができない」とかありますが、実際のところGoogleをはじめ広告プラットフォームは技術的抜け道を模索していますから。
なんだかんだでターゲティングはできるままだし、日本のB2Bビジネスのほとんどは2ndParty / 3rdParty Data をちゃんと扱えているわけじゃないので、正直ビジネスインパクトは薄いです。
なのであと2-3年は、何も問題ありません。
しかし、この先のプライバシー規制ではどう転ぶか先行き不透明です。現状のプライバシー(個人情報保護)の解釈では、「自社サイトに訪れたユーザーの行動データは、事前承認があれば取得も利用も自由」という状況です。
が、いつまでも現状は続かないでしょう。
例えば、現在ではMAツールによってメールアドレスベースによるユーザー一人ひとりのサイト内行動がすべて記録できるようになっています。
僕たちマーケターは感覚が麻痺しているんですが、こうした行動記録ってかなり”気持ち悪い”ですよね。今はまだ一般ユーザーがどのくらい詳細に記録されているのかを知らない状況だから社会的に許されていますが、情報はいつでもパブリックです。
ヨーロッパを発端にして、(今は巨大広告プラットフォーマーに規制をかけていますが)アクセス解析・行動ログツールにメスがはいるタイミングは遅かれ早かれ訪れることでしょう。
パーソナライズしたマーケティング活動は幻想に消える
インターネットが登場して、伝統的なマスマーケティングから脱却したデジタルマーケターたちは、パーソナライズしたマーケティング活動こそが至高であり、ビジネスを成功に導く最短経路だと信じてきました。
しかし、行き過ぎたパーソナライズは売上を先細りしてしまうという事実にも多くのマーケターが気付いています。
確かにデジタルマーケが登場した当初(2000年代初頭)は、TVCMや交通広告といったザックリした販促手法よりも精緻な成果計測ができるおかげで費用対効果は高くなりました。
その後も、PCでしか接続できなかったインターネットが、スマホの登場で24時間いつでもアクセスできるようになり、居間に置かれたテレビでさえもAbemaやTVerを流す装置になってしまい、もうインターネットを介さない情報発信なんてありえないレベルになっています。
もちろんインターネットを介したコンテンツのあらゆるところに広告が入り込んでいて、そのほぼすべてにパーソナライズされた広告が配信されています。
では、B2Bビジネスにおいてパーソナライズされた広告メニューが売上(利益)に貢献しているかと言うと・・・正直芳しくないというのが本音です。
どんどん新たな広告プラットフォームが生まれてくるものの、結局B2Bの売上を形成している広告は、Google・Yahoo!・Facebookに偏っています。
② 広告プラットフォームのアンコントローラブル化
そこで、一足先にプライバシーに配慮した形で進化を遂げている広告プラットフォームですが、広告主視点からすると加速度的にアンコントローラブルな領域が広がっています。
先日、Google広告がベータテストから一般公開にしたP-MAXキャンペーンはアンコントローラブルな広告メニューの最強格でしょう。
運用型広告の実務に携わったことがない方のために、カンタンな解説をすると・・・
従来から運用型広告にはそれを運用するためには2つのスキルが求められていました。ひとつは広告を作るためのスキル(広告文やLPを作る)、もうひとつは広告を運用するためのスキル(入札価格を決めたり、キャンペーン設定を変えたり)。
しかし、近年では機械学習の発達とともに広告を運用するスキルの方はプラットフォーマーの推奨設定にお任せをすることが増えてきました。というか、ほとんどお任せしちゃったほうがいい結果 = 安くて多くのCVが獲得できるようになりました。
「面倒な作業が減って、コスパの良いCVが獲得できるなら最高じゃん」
と思いますか?実はココがB2Bにとっては罠にかかりやすい点です。
B2Bと機械学習の広告プラットフォームが相性悪い理由
なんだかんだ言って、GoogleやFacebook、Yahoo!、その他DSPが保有しているデータって一般消費者に偏っているんですよ。なのでB2Cビジネスなら、多少ニッチな範囲であってもその膨大な行動データをもとにして的確なターゲティングと適正な予算配分によって、コスパの良いCVを量産してくれます。
が、B2Bビジネスでは実は機械学習をベースにした広告配信とは相性が悪いことが多くあります。
機械学習ベースの広告配信がB2Bと相性が悪い問題について、原因は市場におけるユーザー数の少なさだとよく言われますがこれは的外れです。ビジネスが成り立つほどの市場が存在するのであれば、機械学習にとっては十分な学習ボリュームになります。
一方で相性が悪い原因は、広告主側のデータ不足なんですよ。特にスタートアップやベンチャーといった、市場の中に明確な直接競合が存在しない事業の場合にはより深刻なデータ不足になります。
機械学習というのは、膨大なデータの正解と不正解の組み合わせを元データとして、少し先の未来を見通せる技術なんですね。
ここでいう正解と不正解のデータというのは、どのユーザーがどんな広告を踏んでCVしたのかしなかったのか、というデータのこと。なんですが、直接競合の少ないビジネスでは正解と不正解のデータがなかなか貯まってこないので、機械に任せるよりも人間の判断で操作したほうが正解に近いんですよね。
③ SNS・オウンドメディアでは100%伝えられない時代
じゃぁ広告プラットフォームが使いづらいならば、SNSを使おう!オウンドメディアを通じて情報発信すればいいじゃないか!と思いますよね。
残念ながら、それさえもプラットフォーマーの意向によって100%の情報が伝えられない時代になっています。
Facebookは言わずもがな、twitterにおいても、タイムラインに掲載する情報の選別はどんどん進んでいるため、すべての発信がリアルタイムでフォロワーに届くことは期待できない状況です。(個人的には情報共有として正しい流れに進んでいると捉えているので、)ビジネス利用としてSNS発信に頼りすぎることはリスクが高いと考えています。
またブログやオウンドメディアによる情報発信ならば、100%自分の意思で伝えることができるだろう・・・とはなりません。
一般的なブログサイトやこのnoteのようなプラットフォームでは、副業や個人事業レベルの情報発信としては技術的制約も少なく、(要はカンタンにつくれて保守にも手間がかからないので)おすすめできるマーケティング手法です。
しかしB2Bビジネスでは、どうしても自社のHP・オウンドメディアが欠かせません。ところがHP・オウンドメディアにユーザーを集めてくるためには、どうしてもGoogleのポリシーに則る必要があります。
Googleのポリシーは正しいが、すべてのマーケターがそれに応えられるわけじゃない
誤解ないようにお伝えしたいのですが、「Googleのポリシーは間違っている!だから情報発信がしづらいんだ!」とは1ミリも考えていません。
Googleの特にSEOに関連するポリシーとは、14年前にデジタルマーケの世界に足を踏み入れた頃から共に歩んできており、僕のマーケターとしてのポリシーにも大きく影響しています。特にE-A-Tの原則は、SEOとは関係ないホワイペーパーの制作や雑誌への執筆においても常に意識しています。
ただ、Googleのポリシーを十分に理解して、正しいお作法(ルール)でオウンドメディアを制作し運用できるマーケターがどれほどいるでしょうか?
またビジネス扱う情報では、即時性と網羅性が強く求められます。
SNSには即時性はあるかもしれませんが網羅性に欠けますし、オウンドメディアは即時性に難があるんですよね。
・・・以上、B2Bビジネスにおいて情報発信しようとした時に都合の良いメディアというのはなかなかないということを解説してきました。
長々と状況説明を続けてきたのでバックリとまとめておきますと、
外部環境の変化によって情報発信できないリスクが高いよ、メルマガ以外は。
ということなんです。
「パーソナライズされたマーケティング活動こそがビジネス成長に直結する!」と信じて疑ってこなかったデジタルマーケターたちが、Cookie規制の流れに戦々恐々としています。
なぜCookie規制、その先のプライバシー強化に怯えているかっていうと、B2Bビジネスの広告依存体質が原因ではあります。つまり、Google・Yahoo!・Facebookといった巨大広告プラットフォーマーに頼らざるをえないマーケティングになってしまっている。
しかし、機械学習による自動化が進む広告プラットフォームが実はB2Bビジネス、特に直接競合の少ないスタートアップでは、最適化がうまく働かないから結局人の手による運用から離れられないんですね。
そこで次なる情報発信メディアとして、SNSやオウンドメディアを使った手法がここ数年流行しているんですね。ユーザーが欲しい情報を欲しいタイミングで得られるメディアとしてあらゆるビジネスが使っている必須メディアです。
でも、残念ながらビジネスで売上をあげるための情報発信には、サービス提供者側からプッシュ型で発信するメディアは絶対に欠かせません。つまり、即時性と網羅性を兼ね備えた(できれば費用がかからない)情報発信メディアが必要になってくるのです。
それがメールマガジンというわけです。
iCARE社では、メルマガがどれくらいビジネス成長に影響しているの?
ここまでで、B2Bビジネスに与えるメルマガの影響力は十分に伝わったかなぁと思います。
「今さらメルマガなんて時代遅れ」どころではなく今のプラットフォーマー全盛の時代だからこそ、自社で発行できる情報発信メディアとしてのメールマガジンは事業を継続する上で欠かせないんです。
と、いつも通りここで終わっても良いんですが、今日はiCARE Advent Calendar 2021でもあるので、iCARE社のマーケティングにおいてメールマガジンがどれくらいインパクトがあったのかも紹介しておきましょう。
過去1年間で獲得したCVの35%がメルマガ経由
メルマガクリック後の後追いTELでアポ獲得33%以上
商談後のメルマガ開封/未開封企業では、受注率が2倍以上差が開く
過去1年間で獲得したCVの35%がメルマガ経由
iCARE社のメイン事業である「健康管理システムCarely」は、コンテンツマーケティングによって市場の開拓を進めてきました。
「Carelyってどんな事業だっけ?どんなマーケティングしてるの?」
というのはCRO中野が語ってくれているので、こちらご覧ください。
コンテンツマーケティングを取り組み始めたのは、↑の動画で話している100社契約の後のフェーズです。
ホワイトペーパーは、最初の半年で20冊を制作し、現在は50冊超。
リモートワーク対策で、自社セミナーを月2本のペースで公開。
オウンドメディアには、12万UU/月が訪問。
保有リードの約15%は、毎月1件以上のCVが発生。
健康管理領域では圧倒的No.1の情報発信をしています。でも、コンテンツってどれだけ数を用意しても、見られなければ意味がない。
オウンドメディア⇔ホワイトペーパー・セミナー⇔サービス資料
この⇔部分を支えているのがCarelyのメルマガなのですが、成果として、2020年12月〜2021年11月の1年間で発生したCVの約35%がメルマガ経由で発生しています。
具体的にどういった戦略でメルマガを展開しているかについては改めてnoteを書く予定ですのでお楽しみに!
メルマガクリック後の後追いTELでアポ獲得33%以上
「メルマガはどこの部署の仕事?」といえばマーケティング部署の管轄となることが多いですが、Carelyでは営業部署もメルマガ配信をしています。
そうです、インサイドセールスも、フィールドセールスもメルマガ発行しています!
どういうことか説明すると、見込み客のカスタマージャーニーに合わせて送信するメールの頻度を増やしているんですね。Carelyでは現在4種類のメルマガを配信しています。
① 教育メルマガ
対象:全リード
頻度:週1回
内容:健康管理の実務に役立つ話全般
目的:エンゲージメントを広げる・深める
② 案内メルマガ
対象:有効リード( = 商談化見込みがあるリード)
頻度:週1-2回
内容:セミナーやホワイトペーパーの開催案内
目的:MQLを作る
③ ISメルマガ
対象:WARM / HOTリード( = 商談への温度感が高まっている)
頻度:週1回
内容:導入に向けたヒアリングやデモ紹介の日程調整依頼
目的:商談のセッティング
④ FSメルマガ
対象:商談中リード
頻度:週1回
内容:最新機能・導入事例の紹介
目的:商談のフェーズ促進
このうちIS(インサイドセールス)メルマガをピックアップしてみましょう。
ISといえば、電話によって商談獲得していく業務イメージが強いかと思います。でもね、ISだからといってリードとのコミュニケーション手段を電話に限定する必要はありません。
「メールで商談の日時がセッティングできるなら最高じゃない?」
という発想ではじめてみたISメルマガでは、メール本文中にある日程調整リンクをクリックしたリードに対して後追いコールすると33%以上の確率で商談設定ができるようになりました。
「でもそれって、電話かけてたら獲得できていたアポでは?」
と思うかもしれませんね。
ところが興味深いことに、前日に電話したときには商談設定できなかったのに、メールを経由したら商談設定できた案件がポロポロと発生しています。メール x 電話 を組み合わせたISのマルチチャネル化によって商談獲得の幅を広げることに成功しています。
この事例についても詳しくは後日、ISマネージャーがnoteをつづってくれるんじゃないかなと思います。
商談後のメルマガ開封/未開封企業では、受注率が2倍以上差が開く
さいごに、FS(フィールドセール)メルマガについてご紹介しておきましょう。ISがメルマガを送ることはあっても、FSが自らメルマガを作成していることは珍しいんじゃないでしょうか。
「FSならば1to1のメールや電話でコミュニケーションとるべきだろう!」
はい、その意見はごもっともです。そうなんですよね、メルマガを盛んに配信しているB2B企業であっても”商談中リードにはメルマガ配信を停止する”ことがしばしば見られます。
おそらく1to1のコミュニケーションの中に余計なメッセージを入れたくないんでしょうか。しかし、それが原因で商談中リードへのコミュニケーション回数が減り、先方担当者を不安にさせていることに気付いていますか?
B2CとB2Bでは顧客の行動心理は大きく異なってきます。特に気にかけるべきは、B2Bの商談における先方担当者は営業担当と決裁権者の板挟みになっているという事実です。
営業「いつ申し込みますか?」⇒ 先方担当者 ⇐ 決裁権者「本当にその会社でいいのか?」
こんな状況でもし営業担当者からの連絡がなければ、先方担当者はどんな心境に陥るでしょう…
3日、連絡がなければ…「聞きたいことがあるけど、次はいつ連絡くれるかな?」
1週間、連絡がなければ…「もしかして商談したこと忘れられてる?」
2週間、連絡がなければ…「別の会社からも説明を聞いてみようかな」
3週間、連絡がなければ…「◯◯さんってどこの会社だっけ?」
「いやいや、さすがに3週間も放置することはないよ!」
と思うマーケティング担当者は、今スグに営業がどれくらいの頻度で電話やメールを送っているか確かめてみてください。
3週間はめったにないにしても、1週間以上放置している案件なんてザラにありますよ。
こうしたコミュニケーションロストを生まないためにも、CarelyのFSは自らメルマガを作り毎週配信しています。実はこのメルマガの内容を分析したことで興味深いデータがとれたんですね。
商談同席した人のうち、半数以上がメルマガを開封している案件と開封していない案件では、2ヶ月後の受注率に倍以上の差が開く。
例えば商談をしたFS当人は「良い商談ができた。ここは受注する確率が高いぞ」と見込みとしていた案件であっても、メルマガの開封履歴を追いかけることで”実は先方の社内ではそれほど話が進んでいなかった”ということも見えるんですね。
メルマガの開封履歴によって、FSは自分が抱えている案件のうちどれに時間を多く割けばいいのかをデータドリブンで判断できる、ということです。
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さぁメルマガの奥深さの一例をご覧いただきました。
今日ここには書ききれないほどに、Carelyではメールマガジンによって売上をつくっています。具体的な試行錯誤の結果や、戦略構築の方法論については後日のnoteに譲って、今日は筆を置きますね。
iCAREでは広報リーダーを募集しています!
実は私、メルマガが一番好きながらも現在はブランディングマネージャーを仰せつかっております。
で、ブランディングの中心機能ともいえる広報・メディアリレーションを率いてくれるリーダーを絶賛募集中でございます。
「そんなマニアックな市場での広報、なんてチャレンジングなんだ!」と意欲が湧く方は下記リンクよりエントリーください!カジュアルに話が聞きたい方も歓迎です。
明日のiCARE Advent Calendar 2021は、CFOコージさん(twitter)の出番ですね。それではまた!
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