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連載小説 センチメンタルジャック(43)


何日経ってもジャックについて康二から何の音沙汰も無かった。美紀は居ても立っても居られなかったが、便りの無いのは良い便りと自身に思い聞かせながら連絡を待った。

ジャックのいない家の中はとても静かで
、美紀は心にポッカリと穴が空いた様に思えた。ジャックの存在が自分の中でこれほど大きな物だったのかと美紀は改めて感じていた。

久々に会った康二は、美紀の周りに群がる外面だけで中身空っぽの脛齧り野郎共とは全く違った。康二がジャックを診ている時の真剣な眼差しは、美紀の心に強烈に焼き付いた。康二は芯の通った素敵な大人に成長していた。

それに比べて自分はどうだろう、とりあえず合格した大学に入学し、享楽に溺れ、ただ漫然と日々を過ごして来た、美紀は毎日自問自答を繰り返していた。

ジャックが行ってから二週間程過ぎた日、ようやく電話が鳴った。

「美紀、ジャックの手術が終わったよ」

電話の向こうの康二は暗い声で言った。


つづく

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