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使ってみた。 『分割機』

パン屋さん時代に考えたこと、やってみたこと、使ったもの 22.

クロワッサンやデニッシュを作っているパン屋さんであれば、使用されている製パン機器の一つにラミノアと呼ばれるものがある。
職人さんによってはパイローラーやシーターとも呼ばれ、生地を伸ばすためのもので、個人店で使用されるのは大抵、幅2mくらいのものになる。

クロワッサンなどはこれで生地を伸ばし、真ん中にシートバター(以下バターと省略)を置いて包み伸ばしていくけれど、メーカーさんによってはバター1枚の重量が生地1玉に対して大きいので事前に包丁でカットをして重さを揃えておく必要がある。
これを × 何玉と作っていくのがクロワッサンの仕事になる。

ル・プチメックOMAKEをつくったときは京都の生地製造拠点と考えたため、スパイラルミキサーをはじめ製パン機器は大きなもの、これまで使用したことのなかったものも揃えた。
バゲットモルダー、分割機、ハード系用パンスライサー、スチコン、ブラストチラー(急速冷却、凍結機)、クロワッサン成形機、ベーグル成形機、カスタードクッカー・・・

ラミノアも幅3.5m以上のとても大きなものになり、クロワッサン生地は同じ1玉でもそれまでの1.2kgから7.8kgと6.5倍の大きさになった。
必然的にそこへ折り込むバターも大きな1枚になるけれど既製品にはないため、それまで重量を合わせるためにカットしていたバターを今度は何枚も繋いで大きくすることになる。

たまに見かける表面がツルツルとしているクロワッサンは、恐らく折り込みのときに生地の中でバターが割れたことが原因だと思うけれど、大きな生地にバターを並べて包んだだけでは伸ばしたときに生地の中でバター同士が離れ、割れたときと同様のことが起こると思われる。だから大きなバターもちゃんと繋いで1枚ものにしておく必要があった。

OMAKEの稼働当初は、バターの辺を少しずつ重ね合わせ大きな綿棒で叩いて1枚ものを作っていたけれど、これも1枚作れば終わりでなく何玉分も必要になるため、これだけでも時間もかかれば力の要る作業になる。
仕事も終わりかける夕方になって、この大変な作業をしていたのが小柄な女子スタッフだったのを見たとき、これは他に何か良い方法を考えないとダメだと思った。 パンは上手くないけれど手抜きを考えるのはかなり上手いぼくの出番だった。

すぐにバターを叩くのを止めてもらい、しばらく考え思いついたのが分割機だった。
分割機はパン生地を入れてフタを閉じ、ボタンを押すと油圧によって生地を均等にしてくれ、その後もう一度ボタンを押せば下から刃が出て生地を切る仕組みになっている。
この油圧だけを使えばできるのでは、と思ったぼくは分割機の中でバターの辺を少しずつ重ねてフタをし、ボタンを押してみた。
もう笑みがこぼれるほど見事な1枚ものの大きなバターができた。

それも一瞬にして。

つづく


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