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Instagramのこと 2.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

宮野さんが経営されているお店の一つ、knot caféさんはNYからコーヒー豆やチョコレートを輸入されていて、そのコーヒー豆を使用されているのは日本でこちらだけというこだわりのお店だけれど、今や knot caféさんといえば、だし巻きサンド というほどだし巻きサンドが有名になった。

これに使われている小さなバンズは僭越ながらうちのものだけれど、最初は1週間で30個だった注文がたった1年ほどで1週間に300~450個にまで増えることになった。knot caféさんが15席しかない小さなお店だと思うと、やはりこの増え方には驚かされる。
なぜ短期間でこれほどまでに売れるようになったのかを考えると、やはり真っ先に思いつくのは多くの方々にインスタで取り上げていただいたことがある。
最近では ELLE à tableさんの表紙にしていただいたり、いろんな雑誌で取り上げられるようになったけれど、そのきっかけもインスタだと考えて間違いないと思う。

Instagram、恐るべし。という話だけれど、実は多くの方が “インスタに写真をアップしたい” と思われるよう意図的に仕掛けたのが宮野さんだったとも言える。
彼が初めからインスタでバズらせようと狙ったのかまでは不明だけれど(おそらく狙っていたと思う)、だし巻きサンドをつくるにあたり、その入口がデザインだったのは間違いない。

宮野さんは本業がデザイナーで、それもかなり優れたお仕事をされてきた方だ。
ぼくは門外漢なのでデザインのことはわからないけれど、以前彼がこれまでに手がけてこられたお仕事(デザイン)を見せてもらったことがあった。
そのクライアントの多くは、大企業から芸能関係に至るまで誰もが知っているような企業や商品ばかりでぼくはただただ驚いていたけれど、そんな彼だからこそ食であってもデザインから組み立てられたのは必然だった。

完成しただし巻きサンドを見ても何てことのないものに見えるし、実際に真似ようと思えば誰にでもできるシンプルな構成だけれど、そこにはデザイナーとしての彼の計算が入っていてサイズや厚み、見え方、提供方法に至るまで考え抜いて作られたものになっている。
もちろんほとんどのお客さんはそんな認識はないし、その必要もない。
それでも多くの方が写真を撮られ、インスタに載せられるという結果になった。

説明を要せず消費者の無意識に働きかけ結果へと誘導させる技術は、iPhoneがそうであるように、これがデザインの力なのだとぼくは素人ながら感銘を受けた。
デザインをお仕事にされている方でもない限り、説明されないとその意図や計算されたものだとなかなか気づかないけれど、それこそがきっとデザインの力であり凄さなんだとぼくは思うようになった。
まるで先日、作家の万城目さんに目前で披露されてもさっぱりタネがわからなかったメンタルマジック(あらかじめ決められた結果へ誘導させられる手品)みたいだ。

 インスタの話を書いていたのに、デザインの話になっちゃった。

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