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空想ブーランジュリー 2.

※こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

新宿マルイ本館3周年の記念イベント空想ブーランジュリーをパンラボさんと一緒にすることになったぼくは、映画の中に登場する食事、食べものを再現するため心当たりのあるフランス映画を観直すことにした。
この作業を始め早々に嫌な予感はしたけれど、一通り観終わったぼくは愕然とした。

ない・・・これといった料理らしい料理が、食べものらしい食べものがほとんど登場しない

このとき、ぼくは池田さんに「何か食事シーンのあるフランス映画は知りませんか?」と連絡をしている。
それでもこれといった作品を見つけることができず、ヌーヴェルヴァーグという枠から拡大して探してもみたけれど結果は同じだった。
確信を持って観直したイヴ・モンタン扮するギャルソン(給仕)が主人公で、パリのブラッスリーが舞台である「Garçon!」でさえ、料理らしい料理は映っていなかった。

このフランス映画「Garçon!」は、ぼくが高校2年か3年のときに初めて観たフランス映画であり、ぼくがフランス、パリ、お店といったものに興味を持つきっかけになった映画であっただけにこれはショックだった。
いま思えば、ぼくが料理に興味を持ったのはもっと後になってからだし、「Garçon!」を観てぼくが惹かれたのは、確かに映し出されるお店の喧騒やギャルソンの衣装だったような気もする。

舞台がブラッスリーでギャルソンが主人公の映画というだけで「料理がたくさん登場していたはず」と思い込んでいたことに呆れながらも、このままというわけにもいかない。
いろんなフランス映画を観直すと正確にはいくつかの食事や食べものは映っていた。ただ、その映っていたものは「これじゃなぁ」「これでは地味すぎる」「これを展示しても何の面白味もない」と思わせるようなものばかりだった。
しかしそんなことも言ってられないぼくは、もう一度持っているすべての映画を観直し一瞬でも料理、食べものの映るシーンがあれば、地味であろうが面白味がなかろうが停止ボタンを押し、それが何かを記録していった。

ムール貝とポテトフライ、シュークルート(地下鉄のザジ)、黒く焦げたローストビーフ(女は女である)、バゲット(大人はわかってくれない)、シュークルート(ギャルソン!)、ガレット・デ・ロワ(シェルブールの雨傘)、クロワッサン(死刑台のエレベーター)、ブリオッシュ(カルメンという名の女)、クレーム・ブリュレ(アメリ)・・・

もう絶望的な気持ちになった。
華やかさもなければ、これといって特徴も珍しさもない地味なものばかり。
おまけに食べていただくならともかく、今回はこれらの展示のみ。
トークイベントがあるとはいえ、「これらが並んでいるだけで楽しいはずがない」と考えたぼくは、地味で面白味もないこれらの料理、食べものを展示として成立させるためのある方法を思いつく。
これが自分の首を絞めることになる話は、次回。

つづく


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