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キャリートレード 後編

世界中のヘッジファンドや機関投資家などが低金利で日本円を調達し、それをドルなどに換えて高金利の債権や株などで運用していた。そして当然、これはドル高・円安を助長することになる。と、円キャリーについて述べた。

そこへこの発言だから、いわば日銀が「円安は無視できる」「円安は放置します」と市場に宣言、お墨付きを与えたに等しかった。

安心してください、利上げしませんよ、と(いや、そうは言ってない)。

案の定、この発言を受けキャリートレードも加速し、さらに市場は円安が一気に進行した。

迂闊だった 「はい」

4月の日銀総裁会見をこう書いたけれど、ここからも ”金利差” が重要だったことがわかると思う。もちろん、ここで述べていることは短期的な目線の話になる。
また、この「利上げしません」に等しい発言直後から一気に円安が進んだことからも、円キャリートレードの規模がかなり大きなものだったことが想像つく。

ところが、7月の総裁会見ではまさかの利上げ決定に加え、なんなら今後も利上げしていくし5%超えだってやっちゃうかもよーと、突然のタカ派宣言をされたものだから世界中の投資家が驚いた。それに米雇用統計まで悪かったものだから、円キャリーをしていた人たちの投げ売りが一斉に始まった。

昨日述べたように ”金利差”  ”為替差益”  ”株のキャピタルゲイン(売却益)” で儲けていたのに、日本の利上げによって文字通り「巻き戻し」になり、すべてが逆回転を始める。
借りていた日本円を返すために、株などを売却するから株価が下落する。それをドルから日本円に換えるのでドル安・円高が急速に進み、株価がまた下落する。
信用取引でレバレッジをかけている人も多かったので、追証(追加保証金)が発生したことでロスカット(強制的決済)が続出し、それを巻き込んだ下落がさらに加速する。これに動揺した個人投資家や新NISA勢が投げ売りを始め、売りが売りを呼ぶことになった。
中には、初心者なのに知識不足から信用取引をやってしまい、ロスカットになった人も多かったようだし。

普段なら、例えば何か有事があった際などは、ドルが下落すると金(ゴールド)などの安全資産とされるものが上昇することが多い。ところが今回の暴落では、ありとあらゆるものが一斉に暴落し、ビットコインなど暗号資産までがそうだった。
これをどう解釈するかは人それぞれだろうけれど、ぼくはそれだけ急いで現金化する必要のある人(追証の発生などで)が多かったんだろうなぁ、と思っている。
まぁ、それほど激しい大相場だった。

大方の見解としてはこれが大暴落の経緯だろうとされているし、ぼくもそうだと思う。けれど経済はとにかく複雑で、こればかりは実際のところ本当の原因はわからない。
いずれにしても、こうして金利差があることで成立していた円キャリートレードは、それ(金利差)が縮小することで崩壊する。

仮に暴落が円キャリーの巻き戻しだったとすれば、かなりのレバレッジを効かせていただろうし、その規模は相当大きかったに違いない。
まさにちょっとしたバブルになっていたわけだけれど、それを作っていたのは、なにもヘッジファンドや機関投資家はだけではない。
こういう話になると、すぐにヘッジファンドや機関投資家を悪者にする風潮があるけれど、そのバブルを膨らませていたのは、かなり広範囲の人たちになる。個人投資家もそうだし、おそらく自覚はないだろうけれど、新NISAでS&P500やオルカンに投資していた人たちも同じ。それに政府・日銀も外貨や外国債券を買っているのだから。

そういえば、岸田首相は「インベスト・イン・キシダ」とか、滑稽でしかないことを言ってたな。
安倍元首相のパクリ・フレーズなんだろうけれど、こういうのは、もうええから。そもそも、ご自身は株すら保有していないみたいだしね。

それにしても国民にあれだけ新NISAを推し勧めておきながら、人気取りのため(総裁選を見据え)だろうけれど、そんな人たち(政府)が日銀にバブルの引き金を引かせたというのは、なんとも感慨深いものがあるなぁ。

ぼくは、「政治が株式市場を犠牲にしてでも円高を取った」と解釈したよ。

つづく



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