見出し画像

イベントを初めてやった日のこと

※こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

うちの店は、これまで本当にたくさんのイベントをやってきた。そのほとんどがパンとはまったく関係のないイベントばかりだけれど。
自分たちが主催となったもの、ぼくがゲストとしてお招きいただいたものなどいろいろ。

ぼくら規模のイベントをするにはこれ以上ないほどの立地と広さを持つ渋谷の店をはじめてからは、更に音楽ライブをはじめ、イラスト展、写真展、ポスター展、映画のタイアップ企画展、マトリョーシカ展、チャリティー、ビール祭、講演会、文化祭、落語までと、数え切れないほどやってきた。
今回は、その中でも最小だけれど思い入れある初めてイベントをやったときのことを。

最初のイベントは、赤(京都・今出川)の18席しかない狭い店内で2011年に開催した今日までやってこれたのは、みなさまのお陰です。冬の大感謝祭
これは当時、twitterでお客様とやり取りをしていた際に「イベントをやって欲しい」といった声が複数あがり「そんなに需要があるならやってみますか」ということで、小さな店内で18名限定のイベントをすることになった。

当時は、いまのようにミュージシャンや色んなジャンルの作家さん、アーティストさんといった知人がいるわけでもなければこれといった人脈もなく、ぼくにできることがあるとすればパンや料理、デザートを少し作れることくらいだったので、とりあえずは「パンのイベント」をすることにした。
「バゲットといってもいろんな製法があり、その違いによってこれほど変わるんですよ」という、いまのぼくなら絶対にやらないパン屋さんらしいパンのイベント。

こんなに小さな規模だったけれど現在のようにスタッフが多いわけでもなく、営業後のイベントということで通常の仕事に加えイベントの準備もあり、当然のようにぼくは徹夜仕事となった。
初めての経験ということもあって「とにかくお客様に損をさせないどころか、絶対に得になるように」という一心で行った。
もちろん収支は赤字だし、「イベントをするって、こんなにも大変なのか、もうやっちゃダメだな」と思った初めての経験だった。

ところがイベント終了後、ぼくは正反対の考えに変わる。

イベントって、こんなに楽しいものなのか

その理由は、このイベントに参加してくださったお客様の反応だった。
驚いたのは、他人同士であるはずのお客様が帰られるころにはみんなが友達のようになり、このイベントのために遠方よりお越しになった方を京都駅まで車で送る方や後日、感謝のメッセージまでくださった方が何人もおられた。
これほどまでに喜んでいただけるとは。

イベントを主催された経験のある方ならおわかりになると思うけれど、それを本業にでもしていない限り、かなりの労力を要することになる。
規模が大きくなればなるほど関わる人数も増えるし、そうなるとことが思うように進まなくなることも多々ある。アーティストさんなど個性の強い方々に集まっていただくイベントになると尚更そう。
おまけにうちの場合、イベントをする際のぼくの最優先課題が “お越しになった方を絶対に後悔させてはいけない” なので、これまでにやってきたイベントのほとんどが持ち出し(赤字)になった。それでもうちはイベントそのものを生業としているわけではないので、これも特に問題にしない。

それほど大変なイベントをするのはなぜかといえば、一つにはイベントそのもので利益を出さなくてもそこで本当に楽しかった、良かったと感じていただけた何割かの方は必ずというほど普段営業のお客様として戻ってきてくださるという経験則があるから。
そして何よりもこれほど喜んでいただけるお客様の表情や反応というのは他には代え難いものであり、普段の営業では見ることのできないものだから。
またそれは普段以上の労力を相殺して余りある楽しさを、ぼく自身にも与えてくれるものであることに尽きる。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?