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焼き菓子のスゝメ 4.

「これだけ焼き菓子を作れる条件が揃っていて、どうして作らないの?とさえ思ってしまう」

こう書いておいて何だけれど、恐らく答えはこれだと思う。

「そんなことまでやっている時間がない」

こればかりは、お店の環境やスタッフの人数、パンの製造量といったそれぞれの都合があるので仕方ないけれど、もったいないなぁと思うし、早朝から閉店近くまで窯が詰まっているような超繁盛店でもなければ段取り次第だと思うのだけれど。

ぼくがやっていたときも常時何種類もの焼き菓子を並べることは困難だったため、不定期で色んなものを差し替え並べていたけれど、とても勉強になったし作るのも楽しかった。

マドレーヌ、フィナンシェ、サブレ、ガレット・ブルトンヌ、ポンポネット、テュイル・オ・ザマンド、ガトーショコラ、タルト、ウィークエンド・シトロン、ケーク、ショソン・オ・ポム、ピティビエ、コンヴェルサシオン、ミルリトン、ファーブルトン、クイニーアマン、カヌレ、クグロフ・・・
焼き菓子に分類されないと思うけれど、アマンドショコラを作っていた時期もある。これもホールアーモンド、砂糖、チョコレート、ココアと必要な材料が常備しているものだったから。

中でもコンヴェルサシオンは、作るのも食べるのも大好きな焼き菓子だった。
他のものに比べ多少手間は掛かるけれど、その繊細さと本当によく考えられた完成度、そして美味しさに感激した。
カヌレは、せっかく型を買って蜜蝋も仕入れ作っていたけれど、天候や湿度の影響を受けやすく良い状態が余りにも短かったため早々に作るのを止めた。

焼き菓子作りの奥深さ、楽しさは沼だった。
そして、いつかは作れる焼き菓子を全種類並べたいと思うようにもなった。

徐々に優秀な製パンスタッフが集まりはじめ、厨房が手狭になったころのこと。
ぼくがいなくても任せればパンは作れるけれど、まだ店は1軒だから経営に専念するというほどでもない。そこでぼくは厨房スタッフが帰る夕方ごろから店へ行き、翌朝スタッフが出勤してくるまでの間、独りで焼き菓子を作ることにした。

自分のペースでミキサーや窯を気兼ねなく使えるし、深夜の仕事は静かで快適だった。
製造スタッフが出勤してくるころには厨房を空け、全種類というわけにはいかなかったけれど棚にはかなりの種類と数の焼き菓子が並んだ。
これにスタッフが焼いてくれたパンが所狭しと並んだその光景は、見ているだけで気持ちが高揚するほど楽しいものだった。

つづく

画像のピティビエは、ぼくが夜中に作っていたときのもの。

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