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空想ブーランジュリー 1.

※こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

前回、初めてイベントをしたときのことを書いたので、今回も個人的に忘れることのできないイベントの話をもう一つ。

新宿のマルイさんに出店させていただいてから3周年を迎えるタイミングで「3周年記念イベントとして8階のイベントスペースで何かやってもらえないか」という依頼をマルイさんから受けた。
何かおもしろいことを一緒にできそうな人は、と考え真っ先に浮かんだのがパンラボの池田さんだった。
すぐに池田さんに連絡をして「何かおもしろそうなことを一緒にしませんか」と声をかけると、こんなザックリなお誘いにもかかわらず池田さんは即快諾してくれた。

そんな池田さんとの雑談の中から生まれたのが『空想ブーランジュリー “アンナ・カリーナの食べたパン”』というイベント企画。
この秀逸なタイトルを考えたのは、池田さん(さすが)。
アンナ・カリーナの名前が付いているのは、単純にぼくの好きな女優さんという安易な理由とヌーヴェルヴァーグの象徴、アイコンとしてという仕掛けの意味もある。

当初、池田さんから「ヌーヴェルヴァーグなどのフランス映画に登場する料理を再現し、それをお客様に出しましょう」という言うは易くな案が出たときには、ぼくもうっかり「おもしろい!」と賛同したけれど、まず会場では火を使えないという制約がある。それに別フロアにあるうちの厨房を使うにしてもスタッフはパン職人であって料理人ではないし、彼女らには普段の仕事だってある。
そう考えると営業をしているパン屋さんの厨房を使い、大勢のお客様にぼく一人で料理を提供するというのは、どう考えても現実的に難しい。

そこで「食べることはできないけれど、ヌーヴェルヴァーグを中心としたフランス映画に登場する食事、食べものを再現して展示しましょう。それくらいならできると思う。でもそれだけではイベントとしておもしろくないから、フランス映画オタクの池田さんと誰かにヌーヴェルヴァーグ、フランス映画を語ってもらうトークイベントにしましょう」というぼくの案に落ち着いた。
ところが、ぼく自身の言った「それくらいならできると思う」 ことが想像以上に大変だと数日後に思い知ることになる。

ぼくは展示物の製作班として裏方にまわることにしたので、次に池田さんの対談相手を誰にするかだけれど、これは迷うことなく「この方しかいない」と池田さんと意見が一致した。
その方はぼくらの共通の知人であり、オタクどころでないほどのオタク、ヌーヴェルヴァーグ、フランス映画のギーク、タムラ堂の田村恵子さん。
彼女は映画「アメリ」が大ヒットした際、来日した主演女優 オドレイ・トトゥさんの通訳を務められいまでも親交があるほどの方で、ザジは知っていてもさすがにこの映画を知っている人はほとんどいないだろうと、ぼくが店に貼っていたとても古いフランス映画のポスターに「大好きな映画です!」と一番反応されたのも彼女だった。これほどの適任者はいない。
こうして約3ヶ月後のイベントへ向け、ぼくらの準備が はじまった。

つづく

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