見出し画像

第6の味覚 「脂肪味」(仮)

第5の味覚である「旨味」の中でも一番知られているのは、「昆布と鰹ぶし」の組み合わせだと思う。これはグルタミン酸(昆布)とイノシン酸(鰹節)の組み合わせで、単体で使用するよりも7倍から8倍も相乗効果があるらしい。
それにしても、それを体感や経験則として知っていた昔の日本人はすごいな。

「旨味」の成分は主にグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸の3つがあり、昆布や野菜にはグルタミン酸が、魚や肉にはイノシン酸、干し椎茸などきのこ類にはグアニル酸が含まれる。またこれらは「アミノ酸系のグルタミン酸」と「核酸系のイノシン酸とグアニル酸」の2つに分類される。
旨味成分を組み合わせることで相乗効果が得られるとはいえ、何でも合わせれば良いわけでもないらしく、イノシン酸とグアニル酸だと同じ核酸系のため相乗効果はないとのこと。だから「昆布と鰹ぶし」のような旨味を作り出したいのであれば、「グルタミン酸とイノシン酸」あるいは「グルタミン酸とグアニル酸」のいずれかの組み合わせということになる。
「旨味」について、ぼく自身にもわかるように要約すると、こういうことになる。
なるほど、とてもおもしろい。

ここでぼくが思い浮かべたのはラーメンだった。
テレビなどでよく目にする仕込み風景や材料を思い出すと、ラーメンのスープは旨味成分であるグルタミン酸とイノシン酸が、これでもかというほど含んでいることがわかる(例えば鶏ガラと鰹ぶし)。また麺の原量である小麦粉もグルタミン酸を多く含んでいるので鰹ぶし(イノシン酸)を使用したスープとはとても相性が良い。

それに加えラーメンを構成するのは、「スープ=タンパク質(旨味成分)」「麺=炭水化物(糖質)」「背脂=油脂(脂質)」であり、つまりこれは3大栄養素である。そう考えるとラーメンが昆布と鰹ぶしの国である日本で発展、進化を遂げたことや日本人のみならず、これだけ多くの人に支持されることにもうなずける。
パンもほぼ当てはまる気がするけれど、あと欲しいとすればイノシン酸なのかな。それならやはり「それを使う理由」で書いたようにラードの使用は、理に適っていた気もしてくる。

さて、今回の主題である「油脂」のこと。
油脂に味や香りなどを添加でもしない限り、基本的にはそれ単体で食べて美味しいと思う人はほぼいないと思う。ところが旨味を持った食材と合わせることで明らかに美味しくなることをぼくらは経験則として知っている。これを科学的に証明しようと九州大学の先生が研究をされていて、その論文を拝見もできる(本当に良い時代になった)。
まだ可能性だけれど、もしかしたら第6の味覚として「脂肪味」なるものが認められる日がくるかもしれない、といった話もある。

無論、先生たちによる研究は、将来を見据え肥満や生活習慣病予防に役立たせるといった高尚な志や理念によるもので、ぼくのように「わー!やっぱり脂肪味って、あるんだ」などといった薄っぺらいペラペラの好奇心とは次元が違う。だから「脂肪味」の感じ方には個人差があり継続摂取することで脂の味に鈍感になるため、そういった人ほど肥満や生活習慣病のリスクが高くなると警鐘も鳴らされている。

油脂の効果で美味しく食べることができているのはおそらく間違いがない。けれど、他の栄養素や油脂であれ必要なのは適切な量であり、やはり何であっても過度な摂取は毒になる。特にぼくら世代のみなさん、気をつけましょう。

ぼくは現役のとき、栄養素から商品を考えるといったことがなかったけれど、こういった側面からの開発もおもしろいと思った。
何をするにも、まずは知ることからはじめないと何もはじまらない。
好奇心と学ぶこと、考えることは、やめない方がいいとぼくは思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?