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納税する君と僕のために 2.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

2度目の税務調査は2013年、初めての調査から10年を経てのことだった。
その間にも京都御池店(2007年)、東京新宿店(2009年)、レフェクトワール(2012年)とオープンをしていたし、会社も3つに増えていた。
店を出すたびにそろそろかなと思っていたし、もちろんやましいことは何もないので、いつ来られても構わない。だからその連絡を税理士先生から伝え聞いたときには、「お待ちしておりました」くらいの気持ちだった。

今回は3社分を3日間調査するとのことで、来られた税務調査官も3名に増えた。
10年前同様、雑談から始まり何を訊かれてもぼくは正直に答えるだけだし、わからないことは税理士先生が答えてくださるのも前回と同じ。
「これはなんですか?」「これはどう処理されていますか?」といった質問はあった憶えがあるけれど、特にこれといって問題になるようなものは何も出てこない。

2日目に入り「これだけは個人の支出でお願いできませんか」と、遠慮を含んだ話し方で指摘をされたのは、お世話になっているタケオ・キクチの中神店長に選んでもらったスーツ代だった。
京都の老舗、進々堂さんの100周年パーティーにご招待していただいたものの、普段まったくスーツを着ることのないぼくは丁度良い機会だと思い購入し、これは経費として認めてもらえるだろうと処理していたものが指摘された。
税務調査官からの指摘となれば抗うわけにもいかない。
「仕方ないですね、わかりました」と返事をし、後日わずかな追徴課税を支払うことになった。

このときには会社も店舗も増え、売上も利益も10年前とは桁も変わりそれなりの規模になっていたけれど、指摘を受けたのはこのスーツ1着代のみだった。
こんな書き方をしたら税務調査官の方から叱られそうだけれど、「これだけは個人の支出でお願いできませんか」とお願いをされるのは、噂に聞くお土産を連想させたものだった。

そして当初「3日間調査をします」と言われていたけれど、2日目には「何もないので(出てこないので)これで終了にします」と、10年振りの税務調査は3日目を迎えることなく終了となった。
税務調査官の方々が帰られる際、出口まで見送ろうとドアのところまで行くと、一番年配とおぼしき方が振り返られ、ぼくにこう話された。

「私は長年この世界にいますが、真面目に納税をせずに大きくなった会社を1つも知りません。だから西山さんは、このまま真面目に頑張ってください」

つづく


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