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リスクシナリオを考えてみた

食べもの屋さんをされている人たちにとって、いま問屋さんから一番持ってきてほしくないものは、「価格改定のお知らせ」というペライチの紙だと思う。

昔から何かといえば「エルニーニョ現象が」とか「干ばつが」と理由はいろいろだけれど、営業の方が申し訳なさそうな表情でこれを持ってこられた。
ぼくが店をやっていた頃も「またかよ」と何度も思ったけれど、現在はもっと多いに違いない。そして、価格が上がることはあっても下がるお知らせは、ほぼない。
次は秋ごろかな、お店の人たちにとっては今から戦々恐々といったところだろう。

食べもの屋さんはもともと利益率が低いため、材料費だけでなく人件費や光熱費、包材費など販管費がこれほど上がると考え得る対策はおそらく値上げしかない。

結果、そのしわ寄せはお客さんへ行くことになる。

この時点で消費者の可処分所得が上がっていれば何ら問題がない、というよりも理想的なインフレ状態だと思うけれど、現実には大企業を除き大半は実質賃金が下がったままである。

値上げは真っ当な理由だけれど、例えばパン屋さんならこれまで5個買ってもらっていたパンが3個に減るといったことが起こる可能性も高く、これだと場合によっては売上が下がることも考えられる。これはケーキ屋さんも同様だろうし、レストランやカフェであれば、週に一度行っていたものが2週間、3週間に一度と利用頻度が下がるかもしれない。
お店にとっては八方塞がりな状況だけれど、お客さんも無い袖を振ることはできない。
これでは消費が落ち込み、政府や日銀はインフレを目指していたはずなのに一周回ってまたデフレになるという本末転倒にもなりかねない。


この物価高の原因には、過度な円安があるのは周知の通り。
では、なぜこれほどまで円安が進んでいるのかといえば、日米の金利差が要因とされている。長期に渡り超低金利である日本に対し米国は5%前後を推移している高金利であり、これは相対的な需給の話なので当然、日本円よりもドルや米国債にお金は流れる。

そこで先日のFRB(日本でいうところの日銀)によるFOMC(米国の金融政策会合)と、昨日(14日)の日銀による金融政策会合の発表に多くの注目が集まった。

それぞれ焦点だったのは、前者は年内に予想通り利下げを2回行うのか、後者は利上げをするのか。つまり、米国が利下げをし日本が利上げをすれば金利差が縮小するため、ドル高・円安が少しは是正されるであろう、というのが多くの思惑だった。

FRBだの日銀だの、ぼくらの日常生活とは無縁なものに感じるけれど、こういった金融政策会合によって円安や円高に振れることになる。だから商売をしている人なら仕入れや、家計の場合は日常品はもちろんのこと、住宅ローンを組んでいる人たちにも影響が及ぶ。
ちなみに今、金利を上げるのか、という話題になっているのは長期金利なので、住宅ローンですぐに影響が出るのは固定金利を組んでいる人。約70%の人は変動金利を選んでいるのでこの人たちが影響を受けるとすれば、短期金利が上がったときになる。

FRBの発表は、まだはっきりとしないけれど年内の利下げは1回になりそうな印象だった。もしかしたら0という可能性もあり、その場合は円安要因になる。
一方、日銀は利上げには触れず、以前から問題となっている日銀による長期国債の買い入れを減額する、という発表に留まった(いくら減額するかは未発表)。
ちなみに、日銀が国債の買い入れを減額すると金利は上昇するので、円高要因ではあると思う。

しかし現実には、これら大きな経済がまわり回ってぼくらの身近な生活を圧迫していくことになる。
(中略)
個人的には今のインフレ(物価高)はまだ入口に過ぎないと思っている。
そして、その要因の一つである円安もぼくはまだ続くと推測している。

ゴールドラッシュ

ぼくは金融の素人で、決して経済に明るい方ではないので、ここからはフィクションだと思って読んでいただきたい。

現在の物価高騰による日常生活の困窮を鑑みれば気持ち的にはわかるけれど、日銀会見の際、自分が国民の代表であり、まるで正義を背負っているかの如く糾弾するように総裁へ質問をするマスゴミの記者がいる。
そんな記者や投資家の中には、日米の金利差が縮小されれば円高に向かう、という見方をされている人が多い印象を受けるけれど、どうなんだろ。

コロナ禍以降この2年ほど、ドル円と金利差の推移は相関すると言われてきた。
だから金利差が開けば(上がれば)同じようにドル円も上がる(ドル高・円安)と思っている人がいるし実際その通りだったけれど、最近ではそうでもなくなった気がする。
それに、3月には日銀がついにマイナス金利の解除を決定し長期金利は一時、1%を超えたけれど、それでもドル高・円安は止まっていない。

また、通貨は対ドルだけでなくユーロやポンドなど複数あるので、それらに対し高いか安いかを判断する実質実効為替レートという指数がある。その通貨の実力を総合的に表すものだけれど、円はこの指数も過去最低を記録した。
つまり、円安なのは対ドルに限った話でもない。

今後、金利は上がるのにそれでも円安が是正されなかった場合、そのときには物価が上がるだけでなく、金利上昇によって住宅ローンが支払えなくなる人が増えたり、借入の多い中小零細企業の倒産が増加すると推測する。

これが、ぼくの考えるリスクシナリオになる。

きっと、日銀的にはジレンマなんだろうなぁ。

長くなちゃった、申し訳ない。

つづく



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