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納税する君と僕のために 1.

※ こちらの内容は、ウェブサイト(現在は閉鎖)にて2016年~2019年に掲載したものを再投稿しています。内容等、現在とは異なる部分があります。ご了承ください。

開業が決まり、お世話になる税理士先生へ初めてご挨拶をしたとき、「ぼくは税金は取られるものでなく、納めるものだと思っています」と言ったことを憶えている。
そんなぼくの会社が税務調査を受けたのは、20年近く経営をしていて2回のみ。
そこで今回は、ぼくが経験した税務調査のときの話を書いてみる。

初めて税務調査を受けたのは、法人成りして3年目2003年のこと。
ご商売をされている多くの方から「法人成りして3年くらいすると税務調査が来る」とは聞いていたので、これはごく一般的なタイミングだと思う。
税理士先生からは「個人時代のものは関係ないので、用意する必要ないですよ」と言われたけれど、ぼくは創業から直近までの膨大な書類全てを用意した。
それも普段パンを並べている大きな平台とイートインのテーブルすべてを使い、創業日から日付順に並べ、税務調査官の方から「○年○月の○○を出してください」と言われたときに即対応できるよう準備万端にし、立ち合っていただいた税理士先生と一緒に税務調査官が来られるのを待った。

自転車に乗って約束の時間ピッタリに来られた(さすが国家公務員)その方は年配の男性1名。
今日、明日と2日間調査することを伝えられ雑談から始まった。
何ら後ろめたいことは一切ないけれど、初めての税務調査ということで身構えていたぼくは拍子抜けするほどの雰囲気だった。
質問に答え、ぼくではわからないことは税理士先生が答えてくださる。
17時になり、特に何事もなく初日の調査が終了した。

翌日も前日同様、ピッタリの時間に来られた男性は、前日とは打って変わりピリついた雰囲気ですぐに帳簿などを徹底的に調べ始められた。
この日は雑談も一切なし。
いま思えば「そんなことあるもんか、何か出てくる筈だ」くらいのことを思われていたのかも知れないけれど、何も出てこないことはぼくと税理士先生が一番わかっている。
この日も17時まで調査をされたけれど結局何も出る筈もなく、「これからもこのまま真面目に頑張ってください」と言葉を残し、税務調査官の方は帰路につかれた。
追徴課税は、もちろん1円たりともなかった。

ぼくが料理修業を始めたころから税務調査の話題には、必ずというほど “お土産” という言葉が付いてまわった。
真偽のほどは定かではないけれど、これは「税務調査があると、彼らは決して手ぶらでは帰らない」といった定説のようなものが昔からあって、「調査があると追徴課税がゼロということはまずない」のがご商売をされている方々に広く知られた認識だった。

だからその後、同じ立場の同業者や飲食業の方たちと税務調査の話題が出たときには、このときの話をすると一様に驚かれたし、中には「そりゃ(お金が)残らない筈ですよ」と笑う人もいた。

もちろんぼくは笑わそうと思って話したわけでなく、誇れることだと思って話したのだけれど。

つづく


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