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甲の読書感想文

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【甲】星がひとつほしいとの祈り/原田マハ

【甲】星がひとつほしいとの祈り/原田マハ

何を書こうにも、書き出しが一切思いつかない。
どうやっても陳腐な表現にしかならなくて困り果てている。ただの感想文なので別にかっこつける必要はないんだけど。
本を読んだ、というよりも映画を見たような感覚だからかもしれない。
ひとつひとつの情景や人物像がありありと思い浮かぶような文章だった。これは作者である原田マハさん自身の豊富な経験と、解説の言葉を借りるなら、「すべてをいちどに身体に取り込み自分の言

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【甲】スタンフォードの自分を変える教室/ケリー・マクゴニガル

“自分を変える”

劇的で魅力的なフレーズだと思う。ただ、私はこの手の自己啓発本に対してはかなり懐疑的な態度をとっていて、自己改革の方法は自分で模索し実行しないと意味がないようにも考えていた。が、結論から言ってめちゃくちゃためになった。
この本では一貫して“意志力”について様々な実例や科学的見解をもとに、講義をそのまま文章にしたようなかたちで書かれている。実際にスタンフォードでこの講義を受けて、意

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【甲】僕のなかの壊れていない部分/白石一文

【甲】僕のなかの壊れていない部分/白石一文

長かったような短かったような。半分くらいを夜中に一気読みしたこともあって、釈然としない奇妙な読後感が残った。

昔の男が住む京都で、美しい恋人はどんな反応をするのだろうか。悪意のサプライズ旅行を企画した29歳出版社勤務の「僕」は、関係を持つ三人の女性の誰とも深く繋がろうとはしない。理屈っぽく嫌味な言動、驚異の記憶力の奥にあるのは、絶望か渇望か。切実な言葉たちが読者の胸を貫いてロングセラーとなった傑

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【甲】i(アイ)/西加奈子

【甲】i(アイ)/西加奈子

「この世界にアイは存在しません。」

この言葉を否定するためにこの小説はある。

人に「i」という小説を読んでいる、と話したらそれってどのアイ?と聞かれた。
表記上はアルファベットのアイだけど、、、とかいってはっきり答えられなかった。
多義的なようにも、本質的には一つに意味を絞れるような気もする。

主人公の名前はワイルド曽田アイ。
シリアに生まれ、アメリカ人と日本人の裕福な夫婦に養子として

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【甲】月の満ち欠け/佐藤正午

あたしは,月のように死んで,生まれ変わる――この七歳の娘が、いまは亡き我が子? いまは亡き妻? いまは亡き恋人? そうでないなら、果たしてこの子は何者なのか?三人の男と一人の女の三十余年に及ぶ人生, その過ぎし日々が交錯し, 幾重にも織り込まれてゆく, この数奇なる愛の軌跡。第157回直木賞受賞作。<表紙より>

「いいなあ。」

この作品を読んで、最初に頭に浮かんだ感想だ。これは良さをかみしめて

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【甲】むかしのはなし/三浦しをん

この本は、今「昔話」が生まれるとしたら、をコンセプトに7つの短編が収録されたもので、その名の通り、7編には「かぐや姫」や「桃太郎」といった昔話がそれぞれ割り当てられている。(以下参照)

「ラブレス」……かぐや姫
「ロケットの思い出」……花咲か爺
「ディスタンス」……天女の羽衣
「入江は緑」……浦島太郎
「たどりつくまで」……鉢かづき
「花」……猿婿入り
「懐かしき川べりの町の物語せよ」……桃太

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