ロンドン南部の生活から人間の無関心について考える
新年早々、オーストラリア火災、イラクとアメリカの関係悪化などヒリヒリするようなニュースが飛び込んでますね。自分に何かできることはないのか、そんな風に考えている人も多いのではないでしょうか?それでもやっぱり目を背けたくなるような事柄はなくならない訳です。今回はそんなちょっとシリアスな話について書いてみようと思います。
私は現在、留学のためにロンドンに住んでいる訳ですが、私の住んでいる南部は北西部の上品なイメージとはまるで違います。どちらかと言えば日本人の方などが出来れば行きたくないなと思うような地域だったりします。2011年くらいまでお店の窓ガラスが割られたり、車が燃やされたりとかなり暴力的な事件が目立つ地域でした。その後、Gentrification(地域の高級化)と呼ばれる施策によって、オシャレなお店が増え、家賃も上がり、暴力的な行為は<表立って>見えなくなってきました。それでもやはりまだ貧困に苦しんできる人たちが多くいる地域です。一部の若者にはギャングカルチャーが蔓延し、麻薬の売買に手を染めたり、数は少ないものの喧嘩の発展から殺し合いをするみたいな事件も未だに起きています。
そんなご近所を歩いていると、不思議な現象に出会います。Gentrification後に出来た少し高めのオシャレなお店には白人が多くいて、それ以外のローカルで安いお店には白人以外の人種ばかりがいるのです。これらの現象はご近所に限らず起こっていることですが、Middle Classには白人の人が多く、白人以外の移民がUnder Classとして働いているというのが視覚的に分かりやすく見える。そんな特徴もまたロンドンの生活圏であるあるだったりします。
ある日、私はご近所さんの家でギャング活動をしている若者たちと会いました。とても人懐っこい若者で一見その辺に歩いている子と変わりません。それでもやっぱり話題は麻薬・セックス・縄張り争い・音楽ばかりで、何度も財布を抜かれそうになりましたw モラルの基準が著しく違うその子たちを目の前にして何も出来ず、小一時間ほどで家に帰って来てしまいました。その子たちも同じエリアに住む若者でした。そう、かくいう私も貧困に苦しむ人がいるエリアにあるMiddle Classが通う学校の学生なのです。近所の問題に関心を持ちつつも、実際に彼らを目の前にして、彼らのことを良く理解できていないのが露呈してしまった訳です。同じ通りを使って生活しながらも、自分は同じ目線とは程遠い、別の世界で生きている人間なんだと実感した出来事でした。
そしてこの出来事は、今起きている社会問題についても言えることなのではないのかな?と思うのです。人は自分が思っているほど他人の生活を理解していないのかもしれません。社会問題に関心を寄せつつも、やっぱり自分の目の前にある問題が一番の関心ごとであり、自分の生活を下げてまで誰かを助けたいとは思わないのという本音が見え隠れするのです。気候変動の問題があるからといって、暑い真夏、寒い冬に冷暖房を一切使わない生活に変えることは中々できない訳です。難民の人がいるからといって、自分の生活が著しく下げるまで税金を使って欲しくない。政治的な話よりもラブストーリーが流行り、自分の人生を投げ打って難民をサポートした人をまるで夢の中の世界のヒーローのように扱う。私自身も、ロンドンという地に残っていたならば2年以内にはMiddle Classが通う学校を卒業し、移民としてどの階級の仕事に従事するのか、生き残りレースをやる訳です。自分の今の生活の質を落としたくないからと、必死で勉強しているのが本音として隠れています。山火事の現場を、川を隔てた向こう岸から眺めているというのが、今の社会問題を眺める人々の様子なのではないでしょうか?人間、自分の足元まで火の粉が及ばないと本気で動けないものだったりします。
ではどうすれば良いのか。自分の置かれた状況に感謝しながら、少しでも問題に目線を近づけてみる。そして自分が出来ることを探すこと。それが必要なのではないでしょうか?
1)自分の置かれた状況に感謝する
自分が今戦争が起きていない場所で生まれ育っているのは何故なのでしょうーそれはたまたまです。今の状況があるのは自分の努力もあるけれども、努力が実る環境に入れたのはやはり偶然です。生まれる場所が違っていたならば状況は違ったはずです。まず自分が毎日安全な場所で頑張れることに感謝してみる。
2)少しでも問題に目線を近づけてみる。
移民は大変だとちょっと上から意見するよりも、その国のカルチャーに触れてみて、その国をちょっと好きになってみてはどうでしょうか。その国の歴史や食べ物を知ってみる、歌や絵画を見てみる。自分の中に相手の「好き」という部分が生まれたら、自然と関心が深まるものです。
3)自分が出来ることを探してみる
関心が高まったならば、自分の能力を自分のためだけではなく誰かのために使ってみる。例えば、私ならば学んだクリエイティブ産業の知識を日の目の当たっていないカルチャーに焦点を当てることに使ってみようと思っています。そうすればそのカルチャーをきっかけにその地域に関心を持つ人が増えるかもしれない。会社単位ならば、サステナブルな材料を選択したりと個人よりも社会に影響があることが直接的に出来るかもしれません。個人でも募金をしてみたりと今すぐ出来るアクションは案外あるものです。対岸から火事場に飛び込むことは中々できないけれど、火事場をよく観察して対岸から水を放射することは誰でもやろうと思ったら出来る。大きな漠然としたものからブレイクダウンするだけで出来ることが増えると思うのです。
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