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自分のためだけに泣く、ということ。
この1年、本当によく泣いたけれど、自分のためだけに泣いたことはなかった気がする。
たいていは息子について考え、胸を痛め泣いた。
それから夫のことでもよく泣いた。
それからそれから、同じ子を持つお母さんたちの苦しみに共感して泣いたり、テレビの向こうで戦火に倒れゆくひとびとを想い、泣いた。
そのたくさんの涙の中に、自分のためだけの涙はひとつもなかったように思う。
それが美しいとかえらいとかじゃなく、自分のためだけに泣く、ということをすっかり忘れてしまっていたのだ。
![自分と向き合う](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/90843420/picture_pc_6a7ac7087cefe9936f467e464981e478.png?width=1200)
ところが先日、とある曲を聴いて、わたしは本当にひさびさに、自分のためだけに泣くことができた。
時間にすれば、ものの1分くらいだろう。
別に泣こうとしてたわけじゃないのに、涙がばああっと溢れ出してきて、気づいたら嗚咽していた。
そのあいだ、胸の中にはたくさんの気持ちが存在していた。
去っていったものを美しく思う気持ち、過去の自分を悼むような気持ち、その中に、今の自分を誇る気持ちもたしかにあった。
生きていくなかでほんとうに色々なことを乗り越えてきたなぁ、ということをしみじみと感じ、道が分かれていった仲間への、強い愛のようなものを感じた。
短い間だったけど、たしかにその時、わたしはわたしのためだけに泣いていた。
決して誰も立ち入ることのできない、わたしとわたしだけの時間だった。
![デトックス](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/90843445/picture_pc_87aff025581a078c667ef41f9d1d7ca6.png?width=1200)
涙を流したあとには、心地よい疲労感と、迷子になってしまったようなぼうっとした心地が一気に襲ってくる。
その痺れるような、ゆらゆらするような中で、わたしは確かに、自分がまたひとつ殻を破って、透明な新しい自分が産まれたのを感じていた。
自分のためだけに泣くということは、こんなに素晴らしいものだったんだ。
以前、いつでも自分のためだけに泣いていた頃とは、まったく違った心持ちだった。
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