見出し画像

パラボラアンテナと82歳(つづき)

マンションの外装・ベランダ工事のため、ベランダに設置しているアンテナを撤去しなければならなくなった82歳独居老人の実チチ。前回の話では電気屋さんを呼んで、外してもらうことになり、撤去したアンテナは粗大ごみに出すこととした。あれこれ細かく気になるタチの彼は、アンテナを室内に引き込んでいるケーブルを取ったら大きな穴が出るという心配をはじめた。

撤去してくれる電気屋さんに電話をしたそうだ。ケーブルの穴を埋めてくれるパテを用意して欲しいと。そうしたら、電気屋さんは、ケーブルを外側内側からチョン切るそうで、引っこ抜かないから穴もあかない、とのことだった。

昨日の生存確認電話で、電気屋さんとのやり取りを満足気に話す父。「やっぱり聞いてみるものだと」

気になることはすぐに聞く。すぐに電話する人なので、出たでたと娘の私はうんざりしていたのだけど、確かに聞けば簡単な話だった。

しかしこれだけでは満足せず、アンテナ撤去に関してまだまだ考察が止まらない様子で、外したアンテナはベランダの左側じゃなく右側に置くのがいいと思うのだが、どうだろうかと聞いてくる。そちらの方が雨の吹き込みが少なく、以前、母が植物などを置いていたのも、右側だった。

「そうだね。いいんじゃないの」

「それから、入れてもらうビニール袋だけど(大きめのゴミ袋に入れてもらうことにしていて袋もすでに用意済)、ひとつじゃ、切れそうだからどうかな?」

「二重にしてもらえばいいでしょ」

「やってくれるかなぁ」

「くれるんじゃないの」

そのあとも、その袋をとめるのに紐がないから、ガムテープにしようと思うとか、そのガムテープが大してないんだが大丈夫だろうかとか、重いけど粗大ごみに出せるのだろうか・・・などなど。考察が長く、そして多い!!

外してもらいさえすれば置き場所も、ガムテープも袋もあとでどうにでもなるし。粗大ゴミに出すのに持っていくのは私だ。重さなんぞ心配するのは私じゃないのか!?そんな話のオンパレードで、この人は一日中アンテナのことを考えていたのかと思ってしまうほどだった。

「他に聞きたいことがあったけど、忘れちゃった」で、やっと話は終わった。

アンテナ撤去は先日、雨風で順延になってしまった。次こそははずしてもられるといいのだけど。そうじゃないと延々とアンテナの話がつづくし。

これだけいろいろと気がつくというのは、ボケていない証拠だし、悪いことではないはず。集中力もあるだろうし、電話するという実行力もある。しかし、なんかひとつのことにずっとこだわりすぎな姿を見ると、やはりちょっと以前とは違うのかなとも感じた。

高齢者と、しかも今まで疎遠にしていた実の父親と関わるのは、なかなかしんどい。だけど、またアンテナの話かよ!アンテナ好きか!と突っ込んで笑ってつきあっていこうと思う。だって、まだ先はきっと長いはずだから。

(アンテナはずすまできっとこの話にはまだつづきがあるかもです)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?