ひとついいこと
1日にひとついいことあるといいね。コロナでなんとなく閉鎖的だし塞ぎがちだから、ちっちゃいことでもいいからひとついいことあるといいなと思って。
82歳一人暮らしの実チチが言ってる。
母に先立たれ、独り身になった途端にこのコロナ禍で、新しい活動もできず、出かけるのも制限され、顔を合わす人といえば、娘の私か介護ヘルパーさん数人とケアマネージャーさんだけだ。
介護認定1でデイサービスに行ったりもしないから、週2回ヘルパーさんが来て洗濯や食事、お風呂の補助をしてくれる。娘の私は月に3回くらいの訪問。
もともと趣味などがあったわけでもないし、家事は苦手だし、で、ちっともいいことがないらしい。
ケアマネージャーさんは、コロナじゃなければ、趣味の集まりやサークルを紹介したんですけどね、本当にこのままじゃ、と、気にかけてくれていて、こんな状況下でもそんな風に気にしてくれる人がいるのはありがたい。
毎日、生存確認コールをするのだけど、先日、電話に出るなり「今日はひとついいことあったよ」と報告が来た。
『とろけるスライスチーズが見つかった!』
先日、私が訪問した際、一緒に買い物をしたのだけど、その時に買ったはずのとろけるスライスチーズが見当たらない事件があった。
買い物カートには父が入れたし、支払いもちゃんとレシートで残っていた。
買い物カートからエコバックに入れたのも、冷蔵庫に買ってきたものを入れたのも私だったので「エコバックに入れた覚えはある?」とか「冷蔵庫のどこに入れた?」と後日、ないことが発覚した。
恥ずかしながら、覚えていなかった。
エコバッグにはポンポン投げ入れちゃうし、冷蔵庫には他のものは入れた覚えがあったのだけど、入れた記憶がなかった。
買い物かごにおいてきてしまったカモと、自分のアホさにガックリした。先日、父が買った大福をエコバッグに入れるの忘れて帰ってきてしまったことを「ボケてますなぁー」なんて言ったばかりだったし。
そのチーズが出てきた!それはいいことだ!
買った冷凍食品に挟まっていて、そのまま冷凍庫にいたそうだ。
「いいことあったね」
「いいことあったよ」
「私もボケてなくてよかった」
「損もしてなくてよかった」
それじゃあ、ひとつじゃないかもね、いいこと。なんか気分がいいからね。
ご機嫌になれること、昔の父ならこんな小さなことではご機嫌になれなかったと思う。セコくなったのじゃなく、小さな幸せに気がつくようになったんじゃないかなって感じた。
私にとっては大きないいことになった。
『とろけるスライスチーズが見つかった!』『小さな幸せに気が付いた!』
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