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心に刻まれている絵本(モチモチの木)

デパートの子どもコーナーに置いてある絵本に目がいく。

ひさしぶりに手に取った絵本は「モチモチの木」

子どもの頃に何度も繰り返し読んだ本だ。


この版画の持つ脈動感に吸い込まれるように感じた感覚を覚えている。
そして、すこし怖かった。まっくらな山をみるような、人間の入れない領域みたいものをかんじていた。

ここでモチモチの木のあらすじをすこし。
こわがりな男の子豆太と勇敢でやさしいじいちゃんがふたりで暮らしている姿が描かれている。一緒に暮らすにまでの紆余曲折は描かれていないが、ともに踏み締めながら生活してきた。
そんなある晩、じいちゃんが倒れてしまう。夜中トイレもひとりでいけない豆太が、まっくらな山道をひとり走って山を降りて医者をつれてくる。
その時、勇敢な子どもだけに映るという、モチモチの木があらわれる。

モチモチの木(作:斎藤隆介  絵:滝平 二郎)  

短いストーリーだけど、版画がそこにうつる闇と光を全てあらわすように描かれている。
この話には両親がいない理由は描かれていない。けれど、豆太は大事に育てられてきたことは分かる。
じいちゃんがいなかったら生きることができないという切実な子どもの気持ち。
じいちゃんもしかり、自分がこの子を見守っていくという覚悟を感じるのだ。

切なさをも超える何かが人間にあること。
山や木、自然の持つ大きな力。
不思議。
畏怖。
すべてをあらわす版画の絵。



このお話の魂みたいなものが今の私の心にも残っている。繰り返し読み感じていたことがわたしのなかに深く刻まれていることに震えるように気づく。

地方都市のマンション生まれマンション育ちわたしが、今、山に囲まれたくらしを選択している。
この絵をみると、どこか懐かしい。
その懐かしさがわたしを山へと導いていったのではかなと感じる今日。

いのちの懐かしさが響くこの本は、わたしのはじまりの絵本なのかもしれない。