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3日間、釣った魚だけで過ごしてみた

最近、空腹を感じたことがない

「3日間、釣った魚だけで過ごしてみよう」

6月のある週末、そう思って車に飛び乗り、3日間車中泊をしながらいろいろな海を回ってみました。
なぜそんなことをしようと思ったのか?というと、最近、というかこの数年間、心の底から腹が減ったと実感したことがない気がしたからです。

つまり、腹が減った「ような気がする」時点で、すぐにコンビニに入り、からあげくんを買って食べたりして、心の底から腹が減って、それでもすぐに食べ物が手に入らなくて、なんとか耐え忍びながら食材をゲットせねば!というようなことは、現代ではまずない。

空腹を肉体で実感する機会がない。なんだか、これでは生き物ととしてダメな気がする。

そんなこんなで、週末+1日の3日間、釣った魚や、魚が釣れなければ野草でも摘んで、スーパーやコンビニで食材を買わずに過ごしてみようと思い立って、それをやった。その顛末記になります。

飽食の時代も行きつくところまで行った感があるなあと思いつつ、こうでもしないと、本当の空腹や、食べ物の味というのが分からなくなっているというのは恐ろしいことです。

ルールと持って行ったもの

▼持って行ったもの
水:10Ⅼ
米:4合
調味料:塩、しょうゆ、味噌、油(万が一のためにふりかけ←卑怯)
調理器具(ガスバーナー1個、鍋大小&ミニフライパンセット)

釣り道具一式と着替え(Tシャツ4枚、下着4枚、ズボン2本)

▼ルール
・3日間、スーパーやコンビニで食物を買わない
・釣った魚と米だけを食す
・水分は水だけ
・魚が釣れなければその日の食事はなし

事前に米や水をたんまり用意している時点でルール違反な気もするけれど、いきなりそんなにストイックなことをすると嫌になるかもしれないし…。「別に遊びだからいいじゃないか!」と誰に向かってなのか切れ気味に言い訳をして、夜中に車を走らせる。向かうは三重の南の方!

1日目:焼き魚と刺身

なんだかんだと準備がかかり、出発したのが夜。明日から3日間の宿となる愛車アトレーに乗り込む。

ロッド4本、ベッド、クーラーボックス、寝袋など。
必要十分なものがあるのでその気になれば何日でも暮らせる

まず目指したのは愛する熊野の海です。水は清らかで景観は素晴らしく、人は少なくて魚種は豊富。僕のホームグラウンド。

広大な玉砂利のサーフが続く熊野の海

とはいえ、釣りは水物。必ず釣れるとは限りません。

いつもの釣りなら「釣れんかったわ、ハハ残念~」で済むけれど、今回は食事がかかっています。

もし釣れなかった時のために、ルアーに加えて餌(きびなご)も持参。これもなんだかルール違反の気もしますが(本当は現地で捕まえた虫やカニを餌にすべき)、遊びなので気にせず続けます。

このルアーが頼みの綱

初日。さっそく釣れない。朝~夕方まで竿を振るも、全く釣れない。朝・昼と食べておらず、すでにしっかりと空腹を感じている。

初日の夕方に釣れたワカシ(ブリの幼魚)とミニサイズのカマス

その確かな空腹感にうれしさを感じつつ、このまま釣れなかったらいきなり飯なしか...と焦り始めた頃、夕方にようやくアタリが。釣れたのはワカシ(ブリの幼魚)と、えんぴつサイズのカマスたち。

いつもなら、そのまま釣れるだけ釣るところだけど、今回はすでに腹が減りすぎているのと、調理の支度~後片付けもあるので、明るいうちにご飯の支度に取り掛かります。

小さすぎてぐちゃぐちゃになったカマス

といっても、凝った料理をする余裕も時間もなく、カマスは内臓を頭ごと引きずり出し、水気をとって油で焼いただけ。ワカシは一応刺身にしたけれど、小さすぎて食べるところはスズメの涙。しかもさばいている途中に、トンビが急降下してきて、カマスと刺身一切れをかっさらっていった。心底恨めしかった。

1日目の食事:カマス塩焼きとワカシの刺身と米

ともあれ、一応米を炊き、焼き魚と刺身の定食ができました。暗くなる前に本日初めての食事です。むさぼるように喰った。うまかった。飯抜きは回避できた。

2日目:根魚の味噌汁とカマス

前日に磯の岩場にカメノテがびっしりついていたので、潮が引いた時に採っておいて、茹でて朝食にしようと目星をつけていたのですが、足場が濡れていて危険そうだったので断念。

根魚系の魚を求めて、違う海に移動してみる。煮魚か味噌汁を食べたかったのです。

食糧難の心強い味方カサゴ

テトラやシモリが多そうな場所を見つけて、足元に仕掛けを落としてチョンチョンやると、どんな海でも必ずいるアイドル・カサゴちゃんがすぐに釣れた。いつもならリリースするミニサイズでも、今回は貴重な食材として確保しておく。

そして、美しくて美味しいアカハタも釣れて滑り出しは好調。えんぴつカマスもちょろちょろと釣れた。2日目の食材は昼前に早々に確保。

今回は家に魚を持ち帰らずその日の内に食すので、必要以上には釣りません。そして必然的に、一か八かの大物を狙うのではなく、確実に釣れる小魚を狙います。

綺麗な海で釣れるカサゴは真っ赤

ところで、カサゴは近所の海でも釣れますが、体色は棲んでいる海の水質や、食べている餌によってずいぶん違います。三重の南の方の海は水がきれいで、岩礁帯で甲殻類が多いからか、とても赤い美しい色をしています。

近所の工場地帯の漁港で釣れるカサゴ

一方で、地元の工場地帯の港湾で釣れるカサゴは黒い色をしています。味は変わらないけれど、個人的には赤いカサゴのが可愛いいし、安心して食せます。工場地帯の魚は化学汚染が少し心配。

アカハタとカサゴを弱火でくつくつ。出汁を煮だす

アカハタとカサゴの根魚組は味噌汁にします。弱火で煮て少しでも出汁をとれるように。カマスはまたも丸焼きに。ご飯も炊きます。

2日目の食事:カマス丸干し焼き、アカハタとカサゴの味噌汁、米

2日目にして気づきましたが、海でガスバーナーひとつで何品か調理するのはとても大変です。まず米を炊いて、それを蒸らしている間に汁物をつくり、最後に焼き物をさっとやる、というように火の段取りにも気を遣う。

そしてゴミが出ないようにすべて食べきり、食器を拭き、ナイフを研ぎ直し…と、片付けにも時間がかかる。あっという間に時間が過ぎるので、1日1食で十分という感じになる。

漁港の雰囲気が好き。小さい船がいじましくて可愛らしい

昔(といっても自分の祖父母ぐらいのほん数十年前)は、薪に火をつけて釡で米を炊き、五右衛門風呂を沸かしていた。洗濯は家の前の小川だったそうだ。そうなるともはや「食べる」等に関連する一連の作業が、イコール「生きる」に直結してて、余計なことを考える暇もない。

採って・火を起こして・食べて・寝るの繰り返しだけで毎日が流れていくのなら、それはそれで幸せな気がする。

漁港には猫がつきもの。なかなか良い面構えの子。
赤い大きな鈴をつけていたので、漁師さんたちが世話をしているのかもしれない

快適な車で寝て、ガスバーナーで簡単に調理している自分が言うようなことでもないけれど。

3日目:一夜干しと、魚炊き込み&まぜご飯

惚れぼれする美しさのアカハタ。女王様と呼びたくなる

3日目は、それぞれ車で小一時間ずつ離れている海を3ヵ所まわってみた。同じエリアの海では魚種に変化がないからです。すでにカマスには飽き飽きしていた。

カンパチの幼魚は、釣りをしている間に干しておく。
海水がちょうどいい塩分となってあとは焼くだけの干物に。地元のおばちゃんに教えてもらった。
初めての海で変わったことをやるとときは、地元の常連さんにお伺いを立ててからが鉄則(これは昨年夏の様子)

アカハタは煮ても身が固くならないので、鯛めし風に米と一緒に炊いてみた
醤油をたらしただけで、ふっくらと上品な白身の炊き込みご飯が完成
小さいカマスは、焼いてから中骨だけするすると抜き取って、身をご飯に盛り醤油をかけて混ぜ込む。
それをスプーンでかきこむのが、最も簡単にたくさん身が食べれる方法だと思う

結局1日1食。でも空腹に慣れた

3日間釣った魚だけで過ごしてみて、結局釣れる確率と、調理の面倒くささのバランスで、1日1食をがっつり食べるというのが基本になった。

3日間で食べたのは計4食。飲み物は水だけ。コンビニ・スーパーには寄らなかった。

1日1食、米と魚を食べるだけで全然満足だし、今まで何をあんなに四六時中食べていたのかと不思議になった。間食というのはクセだなと改めて。いまのところ、普段の生活でも無駄食いが減った気がしている。

風呂は最初の1日~2日が一番頭がかゆく、それ以降は何も気にならない。多分1週間入らなくても大丈夫だ(まわりが大丈夫じゃないと思いますが)。

地形図を見ながら海をまわっていると、思わぬ景色に出会うことも
天然の観葉植物。岩に着生しててかっこいい

今回、最終日は渓流釣りにもチャレンジして、川魚と山菜で過ごすプランもあったけれど、天候の関係もあり海だけで終わってしまった。

今後も週末を利用して、できるだけ自分で採った食材だけで過ごすことを試してみたいと思います。

ゆくゆくは週末だけでなく、日常的に自分で調達する食材の割合を増やしていければ楽しそうだな。

ある釣具屋さんの放送で流れていた名言。
「永遠に幸せになりたかったら、釣りを覚えなさい」

身近で獲れる高級魚
近所の夜釣りで極上刺身を調達
息子と夏のキス釣りに


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