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カメノテで朝食を


磯の非常食といえば

カメノテです。磯が干潮になった時に、岩場に目をやれば彼らがいます。

たま〜に居酒屋なんかで目にすることもある珍味。名前の通り亀の手にそっくりで、岩場にびっしりと生えている様子はなかなかにゾワゾワするものです。人によってはヒィ〜ッとなりそうなビジュアルなので、この先閲覧ご注意です。

岩場についている時はそれほど亀の手感はない

岩場にコロニーのようにひと塊になっているカメノテを見つけたら、嬉々としてナイフでこれをこそげ取ります。根元に刃を入れてグリグリとするとポロポロ取れます。

こそげとって1個ずつバラしたカメノテ。根元の黒い手首みたいな部分が見えると途端に亀の手そっくりに

このカメノテを茹でて食します。

ばらしたカメノテは、まず水で何度かこすり洗いをします。結構洗わないとガリっと砂を噛むことが多くて悲しい気持ちになるので、ここは念入りに。

洗ったカメノテを、塩を放り込んだ湯で茹でます。綺麗な海ならそのまま海水で茹でても良さそう。

グツグツ茹でる。茹で汁はほんのり茶色くなる。良い出汁でも出てるのだろうか

カメノテの適正な茹で加減がわかりませんが、どなたかご存知でしょうか。茹ですぎても硬くもならないし、半生は怖いので、僕は気の済むまで茹でています。だいたい10分ぐらい。

茹で上がった様は、もはや亀の手そのもの。亀の手首?にあたる黒い部分をペリっと剥がすと…

こんな感じで可食部分が出てきます。なんとなくモザイクかけたほうがいいような気がする見た目です……。分かんないけど。

これを前歯でくわえて引っ張りつつ食すわけです。とんだエロい食い方があったもんです。

個体差なのか雄雌的な違いなのか、細長いタイプとぷっくりしたタイプがある

海老だ!海老の味だ!

見た目のグロテクスさとは裏腹に、その味は旨味の強い海老にそっくり。シャコなんかにも似ています。「海老がなければカメノテを食べればいいじゃない」と言って差し支えない味です。

それもそのはずで、一見フジツボのような貝かと思われがちなカメノテは、蟹や海老などの甲殻類に近いそう。甲殻類、ではなく、甲殻類に近い、というあたりが意味深かつ正体不明で不気味です。とまれ、蟹や海老を捕まえるのは一苦労ですが、カメノテなら楽勝です。

ペリッと剥いてちまちま食べるのも、なんだか夢中になってしまうものがあり、多分蟹を食べてる時と同じ顔になるはずです。

昼の干潮時に採っておいて、夜に茹でて焼酎でも飲めば、楽しいテント泊や車中泊ができそうなものです。

干物と一緒に磯の朝定食

朝マヅメに釣っておいたクロムツとカマスを日が昇る前から吊るして干しておきました。乾くまでの干潮時にカメノテを採取して茹でておくという段取りです。結構忙しいっす。

干した魚はフライパンで焼くだけ
肩身が狭そう

そんなこんなで、カメノテの塩茹でと小魚たちの塩焼きで磯の朝定食の完成です。ちょっとした労働です。

朝の4時から釣りをして、食べ終わる頃には日もすっかり昇り、寝不足と暑さによる疲労でウトウト……。とその時、「何が釣れるんですかあー?」と若い女性が話しかけてきてビックリ!釣りガール、という言い回しももはや古い気がする昨今ですが、本当にこんな磯場に若い女性がいるんだと驚きです。しかも1人で。

暗いうちはアレが釣れて、明るくなるとコレが釣れて、たまにこんなのも釣れたりしますよ、とドヤ顔にならないように気を配りつつ控えめに受け答えをしていると、

「えー!すごーい!私始めたばかりでまだよく分からなくって、良かったら今度一緒に連れてってください!ちなみに昨日彼氏と別れたばかりです!」

と、目をうるうるさせながら前のめりにぐいぐい迫られて、いや、でも、それは……!でも、まあ、うーん、そう?なら、良いポイントをご案内しますよ、といい感じになったところで汗だくで目が覚める……というような幻覚を見せそうな食べ物。それがカメノテです。

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