ぶりっ子を食べる
出世して銭をかせぎ、人からすごいと言われたい。課長部長はあたりまえ、できれば専務常務あたりまで出世して、九分九厘できあがっていたプロジェクトを鶴の一声で白紙に戻したりしてみたい。
そう思うのは人だけではありません。スシローなんかでおなじみのブリ、ハマチも、そうした野望を持って出世街道をひた走る魚です。秋の青物シーズンに、出世魚「ブリ」について考えつつ釣って食べて喜びます。
ブリ族の出世ランク
ブリ族には、ブリを頂点とするサイズ別の名前がいくつかあります。80cm以上がブリ社長、60cm~80cmがメジロ専務、35cm~60cmがハマチ部長、35㎝以下がツバス課長もしくはヤズ主任、というように魚体の大きさによって役職(呼び名)が決まっていて、釣り人もブリ社長には敬意を表するけれと、ヤズ主任は軽く見るというような苛烈な現実があります。
ただし上記は関西での呼び方。関東では関東独自の呼び方があり複雑です。
上記以外にも、地域によって「コズクラ」「フクラギ」などの呼び名も存在し、さらに、同じ呼び方でも魚体の大きさの定義が地域によって異なったりするもんだから、その肩書は混迷を極め「コンシューマーディベロプメント事業部エグゼクティブマネージャー」みたいな、名刺交換だけでは何をしているのかわからない人ぐらい、ブリ族の呼び名は無法地帯と化しているのです。
ぶりっ子でいいじゃないか
秋は堤防近くにも青物が接岸して釣れる季節で、自分も先日堤防から関西でいうところのハマチ(40㎝ほどのブリの子ども)を釣りあげました。
釣り仲間に写真を送ったところ「メジロ??ハマチ?ブリ?」と興奮気味に質問責めに合い困惑。もはやブリサイズ以外はブリの子どもなんだから全部「ぶりっ子」でいいやんか!!と、ひとり海で大きな声を出しそうになったものです。
脂の少ないぶりっ子のおすすめ食べ方
堤防から80㎝以上のブリサイズを釣るには大きく生長する11月〜12月ぐらいまで待たなければなりませんし、それほどの大物は岸からめったに釣れるものではありません。数が釣れるのはやはり10月頃、40~60㎝ぐらいのぶりっ子です。
ぶりっ子はまだ脂が乗りきっておらず、そこがあっさりしていて良いという人もいますが(つまりブリよりハマチの刺身が好きな人)、やはり脂が少なく少々物足りなさを感じます。
そこでおすすめなのが「漬け(づけ)」です。
ぶつ切りにした刺身をしょう油・みりん・ごま油等と一緒にジプロックに放り入れて、30分程度冷蔵庫で放置すれば完成です。しょう油やみりんで旨味がプラスされ、ごま油が脂乗りの少なさをカバーしてくれるので、小さなぶりっ子でもおどろくほど美味くなります。好みでわさびや生姜を加えてもいいですし、コチュジャンを入れれば韓国風です。
漬けをつまみながら一人酒を呑んで酔っ払うのも楽しいですが、漬け丼にすると家族が喜びます。ご飯に刻み海苔でもぱらつかせて漬けを乗せ、大葉の刻んだのや、すりごまなんかをぱらつかせれば風情も良く、店で食べたら1000円ぐらいしそうないっぱしの海鮮丼になります。
もし貴方のお手元のぶりっ子が60㎝以上ある大物ぶりっ子なら刺身で十分美味しいですし、50cmぐらいの中堅ぶりっ子なら刺身・漬けどちらもおすすめです。40㎝以下の小物ぶりっ子なら脂が少ないので漬けの一択です。
・・・と書いていて思うのは、「大物ぶりっ子」とか「中堅ぶりっ子」とかめちゃくちゃ説明がめんどいので、やはりこれまで通り、ブリ、メジロ、ハマチ、ツバス等と呼び分けたほうが分かりやすそうです。とにかく秋~冬は青物が堤防から釣れる季節。がんばってルアーを投げ続けてブリを釣りたいものです。