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初めてウナギをさばいて食べた顛末記 前編


テナガエビを釣りに行って、ウナギを持ち帰った日

前回、週末に息子くんと勇んでテナガエビを釣りに行くも、パッとしない釣果に終わりそうだったところ、我々に声かける者あり。

「親子でのべ竿釣りか。最近珍しな。ウナギもっていくか?」

川の漁師さんが船上から声をかけてくれたのです。忘れていましたが、その日は土用の丑の日。ありがたい話があったものです。

もらったばかりのうな太郎

地元では割とウナギ釣りをする人も多いけれど、夜中のぶっこみ釣りが基本。釣れてもその後の工程が大変そうで、今まで自分で釣って持ち帰ったことはありませんでした。

ウナギの釣り方と持ち帰るまでの流れ
①夜中にミミズや青イソメを餌にぶっこみ釣り
②竿先にケミホタルと鈴をつけて、ひたすらアタリを待つ
③釣れたら針を無理に外さない(無理に外すと弱って死んでしまう)
④針が外れない時はハリスから切ってブクブクで酸素供給した水に入れて生かして持ち帰る
⑤3日ほど真水で生かして泥を吐かせる

・・・と、調理するまでにかなりのハードルの高さ。でも、せっかく土用の丑にいただいたウナギ、この機会に自分でさばいて食してみることに。いざ!

愛着の壁

うな太郎とハゼ太郎たち

頂きましたうな太郎は、死なないようにブクブクで酸素を送り、蝶のように花のように丁重に扱って持ち帰りました。家についてからもブクブクの電池を変えたり、日陰に移動させたり、水を入れ替えたりしながら、かいがいしくお世話をします。ちゃっかりバケツから一緒に流れ込んだハゼ太郎2匹も一緒です。

ところで、先ほどから自分は、うな太郎、ハゼ太郎と呼んでいますが、いつからそのように呼んでいるかというと、帰りの車の中ではすでに呼んでいたように思う。ラーメン屋に入っても、銭湯に寄っても「うな太郎たちが心配だから」とそそくさと出てきて、弱らないように気を配って連れ帰ってきた。そうしてお世話をするうちに、自分の心にある思いが芽生えたのです。

「・・・かわいい」

愛着です。これから〆て喰らおうという相手に愛着が芽生えたのです。いっそこのまま飼い続けようかしら。とさえ思ったものです。しかし・・・

ハゼ太郎の独白
ええ、ワタシらハゼはそんなに大事に扱われたことなんてありゃしません。川辺の底にへばりついてるド平民。すぐに釣れる愚図太郎。珍しくもない雑魚。そんな風に思われるのが当たり前だと身に沁みついて生きてきました。「あぁ、釣られたな」と思ったときも、どうせ誰が捜索願いを出す身でもない、これから唐揚げにでもされるのかな、甘露煮はいやだな、なんか見た目がべっとりして惨めだし。どうせならカラっと陽気に揚げてもらって、後腐れなくサクサクっといってほしいナっ!ぐらいに思ってたんです。ところがこの御仁、見かけによらず心優しきお方で、ワタシらを死なないように丁寧にご自宅に招いてくれて、こまめにきれいな水に入れ替え、ご子息や奥様、一緒に暮らす猫さんに「な、かわいいだろハゼ太郎」などと言って自慢げにワタシらのことを紹介してくれるのです。そんな扱いを受けたのは生まれて初めてですし、もしかしたらこのまま一緒に暮らせるのかしら、、、と、身の丈に合わない夢にひたりながら眠った夜もありました。ええ、生まれてこのかた、あんなにちやほやされた日々はございやせんでした。しかし・・・

しかし、当然食べるために持ち帰ったのです。家族に「な、かわいいだろこれ、ハゼ太郎」などと見せつつも、「う~ん、さて、そろそろ殺るか」と重い腰をあげてむんずと掴み、まな板の上でササっとさばいて冷蔵庫に入れたのでした。何の表情も浮かべずに。

さばいたハゼたち。もはやどれがハゼ太郎だったかも分からない

ハゼ太郎の最後の意識
しかし、猫さんにワタシらを見せて「かわいいだろ?食べちゃダメだよ」と言ったご主人は、笑いながらワタシらをむんずとつかみ、特になんの感情も浮かべない顔であっさりワタシらの頭を落としました。意識が途切れる瞬間「何故・・・?」と問いかけると「食べるから」と目で答えてきました。「オメーさっき猫に食べちゃダメだよって言ってたじゃねーか。頭イカれてんのか。サイコ野郎なのか?マジでやべーなお前、地獄に堕ちろ。一生呪う。てか俺の一生いま終わる」と感情が爆発したところでワタシの意識は途絶え、最後に覚えているのはたくさんの蝉の鳴き声……。

ハゼをさばくのは、さばく、に入らないぐらい簡単です。問題はうな太郎です。うなぎをさばく、という初体験に47歳にして初めて挑みます。

在りし日のうな太郎とハゼ太郎を見るヒメちゃん

うなぎをさばく

まず、用意いたしまするものはこちら。

・木の板(家にあった)
・カッターナイフ
・釘と金槌
・手袋

さばく前に、うなぎが動かないように氷水に入れて仮死状態にします。氷が足りなかったので冷凍庫に30分ほど入れて動きを止めました。頬の辺りに釘を打って、木の板に固定します。

全長44㎝。小ぶり

背開きにするため背中側を手前にしてセッティング。包丁の代わりにカッターナイフでさばきます。うなぎ包丁に形が似ていて、刃も薄いので切りやすいのだそう。

ちなみに今回、いろいろなサイトでうなぎのさばき方を調べましたが、釣り旅YouTubeのたくわんのフィッシングライフさんの動画が大変参考になりました。

案外上手くさばけた、ように見えるが・・・

首のあたりからまっすぐ刃を入れ、背骨に当たったところで刃を横に寝かして背骨に沿って切っていく。なんだ、他の魚と同じじゃん、やってみたら結構簡単、案ずるよりは生むが易し、ハハ、人生楽勝、これなら来年あたり激安うなぎチェーンを開店できるかもな、と慢心した途端に地獄に堕ちるのがヒトの常。案の定この後に悲劇が・・・

後編につづく


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