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いちにち

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おもったときに
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2019年1月の記事一覧

190126

190126

 どうしてもかなしくなる夜はある。
 食べるものがあって、話すひとがいて、いてもいい家があって、ちゃんと布団でねむれるような、生活ができる環境にいられるのに。どうしてもさみしくて、かなしくなる夜はある。
 わたしはひとりでも平気でいられるとおもっているけれど、それはけっしてわたしがつよいからではなく、だれかといてつかれるくらいならひとりでいるほうがいいという消去法的選択であって、本質はさみしがりの

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190115

190115

 きっとわたしはだれの血にも肉にも骨にもなれない。わたしはわたしだけで消費されてやがて消える。それは自由で、穏やかで、しずかで、あまりにもさみしい。宇宙がどれだけ広くとも、そこに無数の星が生きてざわめいていようとも、たったひとりきりで游ぐにはしずかすぎる。
 だれかの血になりたい。肉に、骨に、細胞に、遺伝子に、なりたい。
 何者にもなれないじぶんに価値なんてどこにもない。

190106

190106

 自宅マンションの前には広い道路があり、その上には高速道路が走っている。夜が深く沈んでいくにつれ、車のタイヤの音はそのひとつひとつがくっきりとしてくる。ひとつ通りすぎるごとの間隔が昼間よりもずっと少なくなるのと、静まった空気のせいで。そのくっきりとした走行音がすきだ。深夜の走行音。
 さあ、と通りすぎていくひとつひとつにだれかの気配がある。おおきなトラックの音を聞くと、あれは長距離トラックだろうか

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190105

190105

 初詣に行った。ここ数年は住吉大社へお参りに行くことにしている。とくにこだわりがあるわけではないのだけれど、神社にお参りといえば足が向くのは住吉さんだった。
 ほんとうは去年のうちにしておかなければいけなかった、とてもたいせつな友人の安産祈願に対するお礼参りを先にした。遅くなってしまってごめんなさいを添えて。
 おみくじは大吉だった。引いたおみくじは一年間お財布のなかに入れておくようにしている。こ

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190102

190102

 爪の色を新しく塗り直す。新年さいしょの爪はおめでたい感じにしようと決めていたから、赤と白と金のラメをちょこっと乗せた。白にもじつはよく見ると中にラメを挟み込んでいる。角度によってはいろんな色を、白の膜のなかから見せてくれるようになっていて気に入っている。手先がすごく不器用だから凝ったデザインのものはできない。加えて面倒くさがり。さいきんはネイルシールも安くてかわいいものがたくさんあるけれど、あれ

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190101

190101

 片手に収まる四角い液晶を手放せないでいる。だれかの営みや呼吸、言葉、感情、その存在をたしかめては安心する。ここにだれもいなくたって生きていけるだけのしなやかさは持っている。持っているけれど。
 テレビはずっと沈黙したままだった。いつかだれかが弾いたピアノジャズの音楽と、ときおり窓を鳴らす風の音と、四角い液晶のなかで息づくだれかの生活の気配だけで、あとどれくらい生きていけるだろう。