190106
自宅マンションの前には広い道路があり、その上には高速道路が走っている。夜が深く沈んでいくにつれ、車のタイヤの音はそのひとつひとつがくっきりとしてくる。ひとつ通りすぎるごとの間隔が昼間よりもずっと少なくなるのと、静まった空気のせいで。そのくっきりとした走行音がすきだ。深夜の走行音。
さあ、と通りすぎていくひとつひとつにだれかの気配がある。おおきなトラックの音を聞くと、あれは長距離トラックだろうかとふと思ったりする。
トラックは父のことをすこしだけ思い出す。いまはもうだれかの父になった、わたしの父のことを。むかしはどうやらパパっ子だったそうだけれど、あまりその記憶がない。そのことにほんのすこしだけ罪悪感のようなものを持っている。
タイヤの音のひとつひとつ。彼らにも家族はいるだろうか。どこからどこへいくのだろうか。なにを考えているのか。どんな音楽を流しているのか(あるいはラジオかもしれない)。
あしたは仕事始め。日常に戻る。